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鏡像迷宮 14

僕にしてはややライトノベル感がある文章かもしれません。憧れるのですが、ドロドロにしか書けない僕には高嶺の領域です。これが継続されれば嬉しいのですが。

 意外かもしれませんが、場末クラスの精神科単科の病院なんかは、ときどきバッサリ建物まるごと停電するのです。だから医療機関のクセになかば機能停止し(くさ)るんですよね。


 まあ、と言ったって、それは人為的に電気系統をストップさせるんですけれどね。整備の都合上、そのような日が設けられるんですね。半期だか、年に一回くらいでしょうか。

 勤務がその日にあたると、ザンネンながら真っ暗な中で病棟業務をこなさなくてはなりません。


 夢野さんも僕も、運悪く、この停電日にあたったワケでした。


「ね、ツイてないねー、葉山クン。夢野お母さん、ガッカリだなー。ほんと、溜息。しょぼーん、だね」


 はからずも、カブリを振る聖母の髪色は、あのクグツ・恵のそれと酷似しました。うつくしくカラーが入っていて、亜麻色です。

 亜麻色の髪なんて今どき聞かない歌謡みたいな表現ですが、敢えて彼女の奥ゆかしさに捧げて、こう表しておきましょう。


 …そうして、です。ガッカリ、というポーズを作るためにキサクに俯いてくれたので、制服(スクラブ)の襟元がたわみ、その谷底には真珠状の皮膚が観察された次第でした。全く。いちミリも年齢を感じさせない白さ。梔子(くちなし)ほど若々しい。


「…がふっ、」

 途端、僕の脳髄に花ひらく鮮紅の煩悩・懊悩。それに病犬じみた(しわぶ)き。自分でも血を吐いたかと思いました。


「だ、大丈夫? 風邪?」

「…イヤ、大丈夫、飲みすぎです、たんに」

「それ、余計、心配なんだけど。自愛しなね」


 ほんとうに心配そうなのでドギマギします。善なる瞳がくろく濡れている。なんと麗しい瞳でしょうか。僕はそれを直視できない。


 停電の予定はわりかしに遅く、十三時から。昼休憩のあとから、ということでした。




 …コマ切れに続きます。

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