鏡像迷宮 10
第9部分に引き続きまして、舵を切りなおさせて頂いた箇所です。
…それから。そう。それから、なんて姑息にフィクション的な操作を加えてしまう僕は、やっぱりメンタルに瑕疵がある。記憶のキズに向き合えないのだろう。
ともあれ、それから。時はくだり、宵。
ひといきに、宵。時間は一気にトビます。
月を眺めたのは、川辺からでした。酔いは醒めています。柳沢との時間を反芻しました。
なにを言われたのかはあまり覚えていません。覚えていないのだから、本当は通り一遍な御説教だったのかもしれない。
とまれ、月は静かだった。夜が静かだった。川も静かだった。水はまるで女性さながらの柔らかい表面を流動させていました。僕はコイトスのことを考えました。僕の脳が紡ぎ出せることは、唯一、それだけなのかもしれません。
でも川を流れる銀の水は、いくつも、いくつも、乳房をそなえている女体のようでした。それはキラキラと暗く光るが、まがまがしくもありました。
だから、女とは、そのように怪物なのかもしれない。そう、ひとり言ちました。
そうして、僕は柳沢の話をまた思い出しました。
説教のほうではなくて、神社のあたりに現れる、女の足の話をでした。
神社に行ってやろう、と思いました。
夜をトボトボと歩いてゆきます。
…慎んで、続けさせて頂きます。