8話 過去
家に帰ると、そこにはナバロと、スランが椅子に座ってこっちを見ていた。じっと。動かずに。
まさか 俺は思った。村長はナバロに言ったのだろうか?きっとそうだ。だが、俺は怒られる理由が無い。何故なら、ほんのさっきまでライムのことについて何も知らなかったからだ。考えていても埒が明かない。話を聞くとしよう。
「どうしたのでしょうか?父様、母様」
「俺らは、お前に謝る。だからもう、ライムの元へ行くのは辞めてくれ。ハヤト。」
いつに無く、真面目な声、そして顔だ。
「村長にも言われました。師匠は裏切り者だと。教えてください。何があったのか。行くか行かないかはそれを聞いてからにさせて下さい。」
「分かった。説得の為だ。教えなかった俺らの責任だ。 本当は思い出したくもないけどな...
ーーーーー
俺らのこのキリアには、絶対に破ってはいけない決まりがある。
1.人 傷付けるべからず
2.村 捨てるべからず
3.物 粗末に扱うべからず
これかをキリア3原則と言うんだ。これは代々キリアの人々から、守り、受け継がれてきた。奴はそれを同時にみんな破りやがった。
勿論、このキリア3原則にも 例外はある。それは盗賊が来た時だ。盗賊が来た時、男は、盗賊を傷つけなければ奪われるだけだ。そして女、子供は村から逃げ出せず、皆殺しだ。そういう時にだけ、3原則を破ることを許される。
奴、ライムはこの村で生まれ、この村で育ってきた。村長の息子で12歳の頃には、確実に次期村長だと噂されていた程、真面目で、良い奴だった。そんなライムにも、16に成れば女が出来て、結婚した。18の時には、子供も出来た。この村で村長の受け渡しは、村長の息子が25歳以上になって、皆から認められた時、行われる。ライムも受け渡しまで後1年だった。
そんな時、盗賊が押し寄せて来た。ライムは強い。村一番の実力の持ち主だ。勿論前線に立って戦った。そしてライムの奥さんと子供は近くにある隠れ家の洞窟に逃げ込んだ。盗賊は強かった。負傷者が何人も出た。だが死傷者は出なかった。ひとえにライムのお陰だと思う。打てるんだ。ライムは【魔法剣】が。その魔法剣を皆に配り、戦った。中には治癒魔法の付いた魔法剣もあった。手数で盗賊との実力差を埋め、盗賊の数だけが減っていった。
俺らは知らなかった。強い魔法の付いたが、魂を削ると言う事を、女、子供の隠れ場所がバレていた事を。
盗賊「見逃して欲しけりゃ女と子供1人ずつ、出て来い 1人ずつちゃんと出てくれば、ちゃんと見逃してやるよ その2人は連れてくけどな ケケケッ」
ライムの妻「行こう。お父さんに会いに行こうよ。」
ライムの妻と子供は、そのまま盗賊に連れ去られた。
ライムは戦いが終わった後、酷く傷ついた。村の皆を責めた。そして閉じこもってしまった。毎日、声を掛けたが、聞こえるのは鉄を打つ音だけだった。
しばらくして、立ち直ったのか、ライムは顔を出した。そしてお詫びに村の男全員に剣を贈った。超強大な魔法の付いた、魔法剣だった。その剣が嬉しくて、強くて、男は毎日の様にモンスター狩りに出た。それがいけなかった。直ぐに異変は起きた。そう、その魔法剣は憎しみのこびり付いた魔剣だった。毎日朝から晩まで狩りに行っていた男が、呻きながらも、目を覚まさなくなった。魂を喰い尽くされたんだ。ライムは立ち直ってなんかいなかった。村人全員を殺す計画を立てていたんだ。
まず、危険な男の魂を魔剣で潰す。そうすれば後は、抵抗出来ない女を殺すだけ。そう。ライムもまた、魔剣に魂を乗っ取られていた。
その時は村人総出で調べた。魔剣に喰われた魂を取り戻す方法を。無かったんだ。否、あったが使えなかった。
魂を取り戻す方法。それは、喰われた者が人を殺すことだけだ。そんなの3原則に違反する。使えない。それを知っていたのはライムだった。この村で人殺しが出来ないのを利用して、復讐をした。それが5年前の事だ。
ーーーーー
奴は今でも魔剣を隠し持っている。危険なんだ。だから頼む。ライムの所に行くのは辞めてくれ。これはお前の為でもあるんだ。頼む。」
「.....」
「明日は、2人で村の外にでて狩りにでも行こう。な?」
黙るしか無かった。俺はナバロの話を聞いてこの村で暮らす気が一気に落ちた。ライムにお世話になっている事もあるから、考えが偏っているのかも知れない。だが、この村の人はおかしい。そう思う。だってそうだろう。悪いのは誰だ。盗賊か?ライムか?違うだろう。何もしか無かった「村人」じゃ無いのか?頭がこんがらがる。考えられなくなってきた。
取敢ず、手紙を書こう。ライムに向けて、直接は渡せないだろうから、黄魔法の中に入れてライムの所へ飛ばそう。緑魔法で。そう考えれば大丈夫だ。やる事はある。まずそれをしよう。
次の日。まず俺は、外に出て手紙を飛ばした。気づいてくれれば良いな。そんな思いを込めて。手紙には、こう書いた。
[しばらくはそっちに行けません。聞きました。ですが僕はあなたを嫌いになってません 出来の悪い弟子より]
これで伝わるだろうか?など、考えに考えこれだ。一旦忘れて、これから行く狩りに集中しよう。
「今日狩るのは、基本的にブルースライムと、マジックプラントだ お前確かジョブ魔術士だよな?魔法は使えるか?」
「いいえ。(詠唱覚えてないので)使えません。」
「そうか まぁ大丈夫だろ 見とけ」
ナバロがブルースライムに向けて走って行く。ナバロの装備は片手剣、盾、チェストだけだ。だが、ライムよりも遅い。きっとオーラが使えないんだろう。可哀想に。
「うりゃあ!ハアっ!」
スライムの核に当たらず、2つに分離してしまう。手際の悪い戦い方だ。2度目の攻撃でようやく当たる。3、4、5と攻撃を繰り返し、やっと倒し終わった。
「真ん中辺りにある核を狙うんだ 当たれば、ガチャンといった感触がある。核に当たらなきゃ分裂するから気を付けるんだぞ 因みにここら辺のモンスターはレアドロップだけだから、あんま美味しく無いぞ」
ナバロは、何を言っているのだろうか?核があるのは、全部人間で言う、尻の辺りじゃないか。はっ!まさかっ...そうだ。オーラを纏わなきゃ核が見えないんだ。ってことはやっぱりライムは無意識にオーラを使ってる訳か。納得の強さだ。そして通常ドロップがないのは悲しいな。
続いて、俺もブルースライムを倒す。楽勝だ。アイアンストーンよりも柔いし。
2体目のマジックプラントは、魔法を撃つわけではなく、魔法に弱いそうだ。核は見えない。核のある敵と、体力を全て削らないといけない敵。2種類いるようだ。ノートにメモだ。今の所メモは、18まで埋まっている。最近サボり気味だな。気を付けないと。
午後は、ナバロが帰ったので、初めての魔法戦闘だ。火は燃え移るから却下。水は濡れるし、土がぬかるむから却下。土は土が残るから却下。と言うように使うのは緑魔法の風だ。声でバレると困るので無詠唱で。
相手は、ブルースライム2体。直ぐに念じる。
[カラフルブースト ウィンドアーマー ウィンドレイン]
念じたら直ぐに走る。きっとウィンドレインじゃ倒し切れない。...アレ?敵は?
〔タラン、タンッ〕
レベルアップだ。
...倒した? そうか。魔法って結構強いのか。
それに気付いてからは色々試した。
ウィンドアロー ウィンドボール ウィンドハンマー ウィンドソード等だ。アローは約3本の先の尖った風を飛ばす。ボールはそのまま。ハンマーは、敵の近くにいきなり四角い魔法を作り、相手にダメージを与えながら吹き飛ばす。足止め魔法。ソードは、脇差を一旦置いて、刀を風で作り出す。全てワンパンだった。実験にならない。遊んでいる内にレベル8になった。
「そう言えば、ステータス振り分け試して無かったな。」
[ステータス振り分け] 残り 7
体力 + -
精神力 + -
攻撃力 + -
防御力 + -
魔力 + -
脚力 + -
「おおーやっぱり出来んじゃん。他の人は出来ないっぽいけど。何に振ろうかな〜やっぱり脚力と魔力かな〜脚力に4+ 魔力に3+っと。確か、体力と精神力以外のステータスは+の数道理で、体力と精神力は3ずつだったっけな。」
良かったゲーム道理のようだ。これはLv10になった時が楽しみだ!
その後、家に帰り、眠りについた。。。