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黒猫の王と最強従者【マキシサーヴァント】  作者: あもんよん
第二章 冒険者ギルドと神々の遺産(アーティファクト)
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第十話「ダンジョン~死闘~」

 目の前には、タロ達の予想に違わぬ異形のものがいた。獅子の頭とグリフォンの鉤爪の前足、山羊の胴体と毒蛇のしっぽを持ち、グリフォンの翼を身につけた異形のもの、キマイラが。


「何なの!?あれは!?」


「……あんなの見たことないよ」


 ようやく意識を復活させたエルミアとレイシャが言葉を絞り出す。


 あんなの見たことない……それが当然の反応だった。キマイラは普通には生まれない。


 それは神々のほんの戯れから産まれた。


 寄せ集めの肉体に生命を与え、強力な力をも与えた。元を正せば、自分たちの遊興に二匹のキマイラを闘わせ、楽しむためのものだった。それが例の戦いでは大きな力となって働いた。キマイラを生み出した神がどの陣営に組みしていたか、今では定かではない。


 だが、かつてアストロトであった頃、タロは一度だけそれと対峙した。アストロトの強力な魔法を受けても、それほどのダメージを受けたように見えないキマイラに、内心アストロトは舌を巻いた事を覚えている。


「あれがここのフロアマスターを倒したって事かな……」


 レイシャが前後の事情を察してそう話す。


「つまり、あれを倒さないと先に進めないってことだね」


 視線を目の前のバケモノから外すことなく話すレイシャのその言葉を受けてエルミアが叫ぶ。


「ここでこうしててもラチが空かない。みんなで一気にかかるよ!」


「「おう!!」」


 ラルフとクラークがそれに答えて動き出そうとした時、


「待ってください」

 そうアリスがパーティーに告げた。


「何?アリス。何かあるの」

 そうエルミアに問われたアリスは、目線をその魔物から外さず、


「まずはこれを見てください」

 と告げ、いつの間にか手にしたナイフを下手のまま素早い動きでキマイラに向かって投げつけた。


 ナイフが魔物に突き刺さると見えた瞬間、その後ろから伸びてきた縄のようなものがそのナイフを弾き飛ばした。


「何だ、今の?」


「あれは、尻尾ですよ」


「えっ?あれが尻尾!?」


 見れば、魔物の頭上に赤い舌を口からチロチロと出しながら1匹の蛇がこちらを威嚇していた。


「アリスはあれが何か知ってるの?」


 そう問うエルミアに、黒猫とアイコンタクトを交わしたアリスが答える。


「私が知ってる事もそう多くはありません。昔、物知りの知り合いに聞いた事があるだけですから……」


「……で、アレは何なの?」


「名前はキマイラ、見ての通りのバケモノです」


 アリスは、今告げられる情報を可能な限り伝えようと思った。そうしなければ、生き残る術は無かった。


「確かにバケモノだねぇ」


 そう呟くレイシャに、アリスは言葉を続ける。


「能力は見た目以上にバケモノですよ。全属性の魔法に対して強力な耐性があるそうです。あと、物理攻撃もあまり通らないと聞いています。攻撃はあの前足を使ったアタックや牙での攻撃に加えて、炎のブレスを吐くほか、尻尾の蛇は猛毒を持っていて、通常のキュアなどでは解毒できないそうです」


 アリスの話を聞いた面々は苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべた。


「……これは、あたし達、死んじゃったかな?」


 思わず弱音を吐くレイシャに対して、自らも鼓舞するかのようにエルミアはレイシャに話しかけた。


「レイシャ、あきらめたらそれで終わりだよ。アリス、相手が強力だっていうのは分かったけど、対抗策は無いの?」


「あります。ただ、難しい賭けになりますが……」


 エルミアに答えるアリスも厳しい戦いになる事が分かっているだけに表情が曇る。


「何もないよりはマシでしょう?それが何なのか教えて」


「体の表面は魔法耐性がありますが、中まではどんな生き物でも鍛えることは出来ないですよね?」


 アリスの言葉を聞いたエルミアは、一瞬考え、結論を導き出した。


「つまり、奴がブレスを吐こうとしたところに被せて、魔法を体内にぶち込めって事ね?」


 エルミアの言葉にアリスはうなずく。


「相手も動いてますから、なかなかタイミングが難しい所ではありますが……」


「でも、やるしかない!私たちが生きて戻るためにはその手段しかないのなら、実行するしかないのよ、アリス!」


 そう言って一瞬アリスに目を向ける。アリスも呼応して、エルミアに視線を向け、言葉を返す。


「分かりました。固まっていては相手に蹂躙されます。分散して注意を逸らしながら、タイミングを計りましょう。」


「分かったわ。最後に魔法を打ち込むのは私かアリスのどちらかよ。持てる最大威力の魔法で片をつけるわよ!」


「皆さん!無理はしないでくださいね」


 こうして絶望からの生還をかけた過酷な戦いが幕を開けた。

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