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黒猫の王と最強従者【マキシサーヴァント】  作者: あもんよん
第二章 冒険者ギルドと神々の遺産(アーティファクト)
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第七話「ダンジョン~予兆~」

 結果から言うと、調査隊は特に大きな被害も出さずに魔物を殲滅することに成功した。


 あまり減らなったとエルミアは言ったが、先に打ち込んだ魔法で魔物の数は2/3程度までに減っており、元とは言えAランク冒険者を有するパーティーに敵する魔物はいなかった。戦いが終わったところで、エルミアが声をかける。


「みんな、無事?けがはない?」


 調査隊の面々はそれぞれに無事であることを告げ、その場にしばし腰を下ろすのだった。


「アリスちゃんもお疲れ!なんか、すごかったね~。どうやったら、あんな動きが出来んの?今度、あたしにも教えてよ」


 レイシャは戦いの合間に見たアリスの身のこなしに衝撃を受けているようだった。


 アリスのまるで踊るかのような身のこなしと、すれ違った時には既に相手を仕留めているその手腕に


「やっぱさ~、アリスちゃん冒険者になった方が良いんじゃないの?すっげぇー儲かると思うけど?」

 等と勧めてくるのだが、


「いえ、私は美少女占い師として生きていくと決めているので、ご遠慮します」

 と深々と頭を下げた。


「はぁ~、アリスちゃんも頑なだねぇ」

 そう苦笑するレイシャに


「アリスにも色々事情があるんでしょうから、無理強いはダメよ、レイシャ」

 とエルミアが横から助け舟を出した。


「とはいえ、やっぱり私たちのにらんだ通り、アリスは強いのね」


「女の一人旅は何かと危険ですから……ね?」

そう言って、ラルフ達の方を見やると


「「ホントにスミマセンでした!あの時アリスさんが言ってた意味がよく分かったので、もう勘弁してください!」」


 土下座せんばかりの勢いで頭を下げるラルフとクラークであった。


「でも、やっぱりこの様子だとスタンピードが起こり始めていると考えるべきなのかな。でも、報告に上がっていた変異種は見当たらないようだけど、どうなってるのかしら?」


 そうエルミアが考えを巡らせていると、しばらく魔物の死体の近くをうろついていた黒猫がアリスに近づき、そっとある事を告げた。


『アリス、どうも様子がおかしい』


「どうしましたか、ご主人様?」


 皆には聞こえない程度の小声で主人に問いかけたアリスに、


『この魔物たちを見てくれ。特にトロールなんだが、背中に大きな傷がある』


 そう言って、魔物のそばへアリスを誘う。


「アリス?」


 アリスとタロが近くの魔物の体を調べ始めた事に気づいたエルミアは、アリスの近くに移動すると問いかけた。


「アリス、どうしたの?」


「エルミアさん、これを見てもらっていいですか?」


 そう言って、トロールの背中を見せた。


「この傷がどうしたの?」


 アリスが何を言おうとしているのか今一つ読み取れなかったエルミアは、アリスに聞いた。


 調査隊の他のメンバーもいつの間にか近くにやって来ていたので、皆にも聞こえるようにアリスは話を切り出した。


「この傷、私たちの持ってる武器でつけられた傷では無いです。こんな傷がつく武器は誰も所持していないですから」


「そう言えば、何かえぐり取られたような傷に見えるねぇ~」

 レイシャも横から傷を見てそう告げる。

「実は、他にも背中や足に似たような傷を持っている魔物の死体があるんですよ」

そう言ったアリスの言葉を受けて、調査隊の面々はアリスが何を言おうとしているのか察した。


「つまり、こいつらは何かから逃げてここまで来た、そう言いたいのね?」


「はい。だとすると、今回のこれはスタンピードで上層階層に魔物が押し寄せているのではなく、魔物が他の何かから逃げての結果では無いかと」


 アリスの推論を聞いた調査隊の面々は複雑な顔で考え込んだ。


 実は、魔物は魔物を襲わない、と言われていた。多くの魔物が徘徊するダンジョンで、異種族の魔物が出くわしても争いは起こらず、もし冒険者が2つの異なる魔物の集団と同時に遭遇した場合、魔物たちは共闘して(連携はしないまでも)冒険者と戦うことがこれまでの経験で分かっていた。しかし、今のアリスの話が事実なら、この定説が覆ることになるかもしれなかった。


「どちらにしろ、情報が少なすぎるわね。もう少し先に進んでみましょうか」


 そうエルミアが決めて進もうとすると、ラルフが

「エルミアさん、この素材はどうしますか?」と聞いてきた。


確かに100体近い魔物の素材がゴロゴロ転がっているような状態で、通常であれば歓喜を上げながら素材の採収に努めるのだが、


「もったいないけど、今回は調査が最優先だからあきらめましょうか。私たちが帰る頃には消えているんでしょうけど」


 そう告げたラルフも分かっていたようで素直にうなずくが、

「高い素材ばかりじゃないとはいえ、これだけ数があれば金貨50枚程度にはなったでしょうけどね」

と零し、足を進めた。


 他のメンバーが先に進んだのを確認すると、メンバーの最後尾についていたアリスは意味深にタロと視線を合わせ、何気ないしぐさで一瞬手を地面に向けたのち、すぐにメンバーの後を追った。


 先ほどまであった魔物の死体や多くの素材は、アリスの魔力に呼応するかの様にいつの間にか消え失せていた。

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