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ココロ奪われしセカイ  作者: 鹿煎餅
第一章 新たな出会い
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第二話 前兆

溜め書きしてたから連日更新です。

 マンションの屋上で双眼鏡を片手にセカイの住む部屋を覗く人物がいた。


「クハハ。良い感じに育ってきたなぁ」


 その人物はそう呟くとそこから姿を消した。



「――ッ!? ……ハァ……ハァ。……またか」


 セカイは時々嫌な夢に襲われ目が覚めることがある。

 特に過去に嫌な体験をしているというわけでも無いため内容もバラバラだ。

 ある時は銃で撃たれ、またある時は「感情」を持った人に殴り殺されると言うものだ。


 しかし、妙な事に最近は同じような夢を見るのだ。

 自分が殺戮(さつりく)を楽しんでいる夢を。


 セカイはこんなの自分では無いと否定する気持ちと同時に目が覚めるのだ。

 だが、この事を誰かに相談することも出来ずにいる。

 相談しても意味が無いと知っているから。


 この憂鬱な気持ちをシャワーで汗と共に洗い流してからいつも通りの時間にいつも通りの質素な食事を摂り、着替えてから職場へと向かう。

 そしてまた決められたノルマの分だけ働く。

 ただそれだけだ。

 ノルマと言っても慣れれば正直大した量では無い為にペースを考えないでやるととても早く終わってしまうのだ。

 早く終わったからと言って他の人を手伝ってはいけない決まりにもなっているし、暇を潰せるような施設も物も無い。


 だから、買い物をして帰ると丁度良い時間になるようにペースを合わせているのだった。

 だが、この日は嫌な夢に関しての考え事をしていた為に気付かぬうちにペースがいつもより早くなっていたようで、今日のノルマを達成してしまった。

 時刻は一五時二五分。

 いつもよりも約一時間半は早く終わってしまっている。


「どうしようか……」


 取りあえずノルマを達成した事を報告し、帰路に着く。


(このまま帰っても良いけど特に何もする事無いしな。そう言えば、昨日で生まれて一六年が経過したから図書館の閲覧できる本が増えたんだっけ)


 それから少しでも暇つぶしを出来るものが無いかと図書館へと向かう。

 途中すれ違う人もいたがもう当たり前だが皆虚ろな目をしている。


 この風景だけは何度見ても慣れることが出来ない。

 誰も周りの人に興味を持たない異様な風景。

 だが、これが当たり前。

 誰とぶつかろうが当たったことにすら気付いてないような世界。



 それから十分とちょっと歩いてるとこの街に唯一存在する時間潰しの施設、図書館へと着いた。


「久しぶりに来たな」


 図書館の中へ入るとパソコンで何か仕事をしている警備員の人がいたが、それ以外の人は誰一人いなかった。


(分かってはいたけど誰もいないのに何を警備するんだろう?)


 この時代に図書館があるだけでも珍しいのに誰も来ないと分かっている場所に警備員という役割を与えられた人物がいることはとても珍しい事だった。


 だが、やはり何を考えているか分からない顔でこちらを見てまたパソコンへと向き直す。


 セカイはそのまま奥に進み、腰のカードホルダーから自分のIDカードを取り出す。

 このIDカードはいわゆる身分証明書の様なものだ。

 このカードに自分の全財産の登録情報が入っており、このカードがあれば通帳からの引き落としという形で買い物をする事も出来る。


 だが、この様に良いことばかりでは無い。

 このカードを無くすとどうなるのかと言うと、存在が無くなる。

 いや、正確にはそこには居るのだが居ないのだ。

 存在を認められない。

 体が本体であり本体ではない。

 この世の人にとって一番大事なのは自分の体よりもこのIDカードの方なのである。

 この様な人形のように生きている人達が何か物を失くすという事が自体が起こりえない事なのだが。


 自動扉の前に立ち止まると、


「IDカードが登録されていません。読み取り機に置き、登録を行ってください」


 と、上のカメラから音声が流れる。

 カードを読み取り機の上に置くとピッっと機械音が鳴る。


 これはセカイのIDにこの図書館の一六歳以上閲覧可能スペースへの入退室許可が下りたということである。


 セカイはカードの認証が確認されたのを確認し、扉の奥へと進む。

 これからは今の様にカード登録する必要は無く、扉の前に立つだけで自動扉が開くようになる。


 この仕組みの詳しい事はセカイが先日までの年齢で調べられたのはわずかだったために余り知らない――ネットでもIDによる閲覧可能サイトが決まっている――が、自動扉の上に設置されているカメラが自動扉の前に立った人の全身を赤外線で読み取り、携帯しているIDカードを見つけ、読み取り開くという事だ。


(もしかするとこのカメラの仕組みも今なら見る事が出来るかな?)


 そして、そのままセカイは取りあえず、入り口から見て右側の棚から見ていく事にした。


(最後の解放エリアは二十歳以上だけど、四年間でこの量を読めるかな)


 セカイは唯一時間の潰せる本を良くここで借りて行くのだが、今までは何かと簡単な本が多かったために約一年前くらいに前のエリアは全て読み終わっていた。

 だが、このエリアはパッと見るだけでも難しそうな本が沢山並んでいる。

 それに量も前エリアよりも少し多い。

 図書館やネットの閲覧の制限解除は生まれてから四年毎に更新されるために、今回も四年のはずだが、もっと時間が掛かりそうな量があった。


(まあ、十五歳までのが少なかったのかな?)


 セカイはそう思いつつ一通り本のタイトルを眺めて行った。

 その中で一冊だけとても気になった本があった。

 『昔の銃と今の銃の違い』と言う本だ。


(何だこれ? 昔の銃との違い? 今も昔も実弾なんかは使って無いはずだし、大事な時に銃を落とさないようにとリストバンドも付いていたとは聞いてるけど)

 セカイは中身が気になり近くの椅子に腰かけ読み始める。


「――っ!? これは!?」


 彼は最初のページから驚きが隠せなかった。

 最初のページには銃の形状の違いが載っていた。

 例に挙げられていたのは現在でも生産、使用が多いAK-47であったが、昔のものは見た事がないような形状をしていた。


 まず、マガジンが今のよりも大きいのだ。

 確かに今の銃はある程度の大きさのマガジンが付いているが、それはほぼ飾りだ。

 何故なら、使われる弾は一発だ。

 いや、この場合一発と呼んでいいのかは分からない。

 マガジンに入っているのはただの空薬莢(からやっきょう)なのだから。

 ただ、昔銃の説明の時に詳しくは聞けなかったが、話していたのを覚えている。

 今の銃はある特殊なエネルギーをマガジンに入っている薬莢、弾が創り出し、撃ち出すらしい。

 弾がエネルギーを自動的に創り出す。


 最早人間の技術ではないのであろうが、詳しい事をセカイが知るはずも無かった。

 そして、その昔のマガジンがとても大きい理由が一発撃てば鉛が目標に向かい、薬莢だけが残る実弾だからである。

 今の時代にそのような事をしている銃など無い。

 鉛の弾など最初から無いとさえ思っていた。

 それが、今の常識なのだから。


 次にセカイが驚いたのがリストバンドの本当の効果である。

 この鉄製のリストバンドが昔の銃に付いていないのは無駄だからである。

 むしろ邪魔になるもの。

 なぜなら、現在の銃と違って――。


 パリンッ


 突然図書館の窓が人の突入と供に割れる。

「一体何が!?」


 窓の破片が落ちた方向を見るとそこには人影がいくつか見えていた。

どこで区切ろうか迷った結果めっちゃ長くなっちゃいました…

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