自殺志願者
舞台は現代も過去も高知県だけど、言葉、方言は標準語にしてます。
高知県高知市
桂浜
11月15日
「う~寒い!やっぱりこんな時期に海になんかくるもんじゃないな」
この男の子の名前は「山田龍也」高校3年生の18歳
彼が何故1人でこんな時期に海にいるのかと言うと、別に自殺するわけではなく、龍也はこの18年間の人生で今一番悩んでいた。
「でもこれくらいの時期じゃないと海に入ってもマジで死ねないもんな」
違った!コイツ死ぬ気だ!
「もう来年まで生きていたくない」
龍也は平凡なごく普通の家庭に生まれ、兄1人弟1人いて、龍也は次男として生まれた。
長男、初孫のように喜ばれるわけでもなく、三男、末っ子のように甘やかされるわけでもなかったが、両親、祖父母からはごく普通に分け隔てなく愛された。
勉強は頭が良いほどではないが悪いわけでもない、いつも平均点だった。
運動神経も良いほどではないが悪いわけでもない、3人ならば2位、5人ならば3位と真ん中だ。
友達も多いほどではないが少ないわけでもない。
彼女も15歳のときにできて、モテるわけでもないがモテないわけでもない、ちなみにこのとき童貞卒業。
顔が良いほどではないが悪いわけでもなく、身長も高いわけでもないが低いわけでもない、食欲も物欲も性欲も普通にある。
ちなみに現在は彼女とは別れた。
何かに熱中するほどひとつのことにハマったことはないが、それなりの知識、常識は知っている。
勉強、スポーツ、テレビ、ドラマ、お笑い、ファッション、音楽、漫画、アニメ、ゲーム、アイドル、食べ物、お菓子、車、バイク、おもちゃ、政治、犯罪、家電、パソコン、歴史、科学とどんな会話でも話せるが何かひとつのことを極めた人とはその話しについていけずなんか妙な敗北感を味わうが別に龍也はそれ以上知りたいとは思わなかったのでどうでも良かった。
龍也がなぜ死にたいとまで思い至ったと言うと受験に失敗したわけでもなく、彼女にフラれたからと言うわけでもない、ちなみに別れを切り出したのは龍也からだが、数時間の話し合いの末、別れた。
いままで龍也は何もしてこなかったわけではない、勉強も運動もいつも真面目に取り組んだ。
だがすべて平凡。
非凡な才能が目覚めることはなく、またこれを極めたいと熱中することができず平均点までいけばそれ以上続けることができなかった。
そんな自分が嫌いだった、きっとおれはこれからも平凡で何かに熱くなることもなく普通に働いて、結婚して、子供が2、3人できて、孫ができて、普通に老後をむかえて死んでいくんだと思ったら、この人生に何の意味があるんだ、なんでみんなは生きていけるんだ、おれは嫌だ!いつか体も動かなくなり脳も退化していくならおれはいま死にたい。
「父さん、母さん、いままでありがとう、そしてごめんなさい」
龍也はそう言って、海の中に入って行った。
「うわ!?さ、寒い!?これマジ死ぬって!?」
そう言いながらも龍也はどんどん前だけを見て進んで行く。
「ここで止まったらダメだ!お、おれはいくぞ!」
龍也はただひたすらに前だけを見て泳いだ、砂浜はすでにはるか遠い、龍也は不思議だった、寒い海の中、どんどん体は疲労していくのに、龍也ははじめて生を感じた。
「生きてるぞ!!おれはいま生きてる!!ハハッ!すげー!!生きてる!?死んでない!?おれは死なない!!」
龍也は死にたくないと思った、死を間近に感じて生きる意味を知った。
「帰りたい・・・家に帰ろう・・・」
そう思ったとき、もうすでに遅かった。
体は動かなくなり海の中へと沈んでいった。
ヤベーもうダメだ!?苦しい!?
そんなとき走馬灯なのか何なのかわからないが、周りが真っ白になり、龍也は真っ白な光の中に吸い込まれた。
結局死んでしまうのか・・・まぁいっかこれで・・・
たつやは気を失う。
桂浜
ん?なんだ?意識戻ってきた?おれ死ななかったのか?
「しっかりしろ!」 「あんた大丈夫か?」 「こんな季節に海に入ってたのか?」
なんか数人くらいおれに話しかけてる?もしかしておれのこと助けてくれた人達かな?
でもまだ意識がはっきりしないし目をあけることもできない
「しかしなんて服だこれ?」 「異国の服だろ?」 「髪の色も茶色だし」 「でも異国の人間にしては顔はおれ達に似てるな、鼻は高くないし、肌も白くない、眉毛は薄いけど」
え?何?おれに話しかけてるんじゃないのか?異国の人間?おれのこと外国人だと思ってる?
「あんたどっから来た?」 「言葉わかるか?」 「船はどこだい?」 「船から落ちてここまで流れ着いて来たのか?」
全然わからん!?何言ってんだコイツら!?と思ってる内に意識がはっきりしてきた、そこで目をあけてみるとおれはびっくりした、なんだコイツら!?
そこには時代劇でみるような服装と髪型をした男数人と女数人がいた。
「なんだよコレ・・・夢の中か・・・」
そこに寝っ転がって呆然としている龍也の上に子供が乗っかってきて龍也の頬を引っ張った。
「いてて!?」
「こら!やめなさい!なんてことするのこの子は!?」
1人の女の人が子供を抱きかかえ龍也から引き剥がす。
痛い!夢じゃない!
「すまないね~、この子さっきからあんたに興味津々で、あんたの履き物にもずっと触ってたし」
履き物?靴のことか?まぁここが時代劇の世界ならブーツなんてないもんな!
いや、ここは時代劇じゃない!おれはどうやら過去にタイムスリップしたみたいだ。




