『 猿夜叉、ざんくろう に なる 』
帰ってきました。
あ~、ずいぶんリフレッシュ出来た。
旅はいい!
出会いもあったし、手応えも良さそうだ。
意気揚々と、敦賀に帰ると……深雪にとっても怒られた。
「普通、戦の最中に、妻と生まれたばかりの赤児を置いて、のんきに出掛けますか?」
なるほどそうでした、ゴメン。
いや、ある意味12歳で子持ちという現実から逃げたかったのかも知れない。
”謙信と仲良くなれば何かと助けてくれそうじゃん”
スゴイぞ~俺と思うのだが、誰もこの偉業を判ってはくれない。
誰にも理解されないというのは、つらいなあ~。
猿夜叉もつらいよっ! (←決めゼリフを言ってみたかっただけだ。)
ほとぼりが冷める頃、オレたち一行は、戦災でボロボロの小谷城に帰還した。
「やれやれ、ようやく帰ってきたか。」
「こうも負けてばかりでは、こまっちゃうね。」
「ずいぶんボロになったね」
「おなかすいた!」
俺の方は、配下の者に敦賀で商売をさせておいたので、かなり稼げたと思う。
戦で価格も高騰したらしい。
戦争ではボロ負けだが、六角さんが2万人以上の兵士を動員してくれているので、俺自身は結構儲かっている。
「敵に物資供与をしているのか?」なんて怒るな!
モノがなければ、足軽が『現地調達』という名目で暴徒と化して江北が荒れるわ。
俺が、『こまったちゃんの、足利義昭』を評価しないのは、飢えた狼みたいな奴を呼び寄せようとしたからだ。
迷惑この上ない。
守護の看板を背負う、『六角さん』、『あさくらちゃん』でとは、行儀がちがうのだよ!
それなら、足元を見て高い金額で売った方がマシだ。
これも一種の経済戦争である。
とはいえ、やはり負けは負け、酷いもんである。
「やれやれ、なんだかな~」
救荒作物として備蓄しておいた分を放出して、戦火を受けた領民に分け与えた。
そして、これを機にひとつのプランを発動した。
俺は「ひさまさ氏」がネタ募集をしていたのを知っている。
本当は、感想の方が欲しかったんだろうな、と俺はふんでいるが……。
その中のひとつのネタだ。
以下これが全文だ。
「アスリート育成でござる、その辺の孤児を使って5才~12才ぐらいまで、肉~限界運動を繰り返すとあら不思議、現代人並の体格の兵士のできあがり!
例として、加藤清正、福島正則などは両親もそこそこだったらしいが、秀吉の小姓として、育成された結果、虎を倒すまでになるらしいしね。
豚は山林原野での開墾育成ができるし、皮は鎧に使えるし、牛よりも成長、繁殖のスピードが段違いですから。ただこの時代、豚は不浄の動物で食べないんですよね、城や屋敷のトイレで飼ってたでゴザル。
100人位の量産型前田慶次が戦場を暴れまわる、悪夢でござるな。
忍者育成して劣化風魔小太郎を量産、マジでやばいったら...
バランスブレイカーですがほどほどに薄めてつかえるかな? 」 by 『たかさん』
これに対しての返事はこうだった……
― おはようでござる。
チートだ、チートすぎる。
ただのおっさんの『探偵さん』
お話し好きの、『甲賀の手練れ』が、霞んでしまいそうじゃ。
豚の話は、『貧乏くさくて、とても魅力的』じゃ。
味噌漬け肉に群がる国人衆が目に浮かぶようじゃわい。
使わせて貰って良いかのう?
もちろん、「たかさん」のアイデアとあとがきに書いて進ぜよう。
まあ、名前出しNGだと悪いので、ご一報くだされ。
ふふふ、創作意欲が湧いたところじゃが出勤せねばのう。
頭の中の「久政」が抜けきらんのう。
ひさまさでした~ ―
(注:ほぼ原文ですが、一部改稿してあります)
……とても出勤前の朝の会話とは思えんが……。
実にナイスなアイデアだ!
確かに、良いアイデアだが、あの縛りがキツイ『長政?』の方で、このネタを使うのはなかなか大変そうだと思った。
ひさまさ氏も豚肉について乗り気であったが、なかなかタイミングが難しいであろう。
さりげなく、国人衆の宴会の会話に紛れ込ますのだろう?
豚肉のことを説明するために、わざわざ宴会のシーンを書かねばならぬとは難儀な性格だ。
気の毒なことだ。
だが、俺(猿夜叉)は自重しないぞ。
さっそく、実践してやろう。
やれる手は、すべて打つべきだ、ここは現実世界なのだ。
戦災孤児の対策として、親父殿に進言してみよう。
甲賀者を凌ぐ、恐るべき手練れが誕生するかもな?
自分の家臣団にもドンドン試していきたいな。
でも慌てるな、俺の方が先だ『前田慶次に俺はなる~!』
下っ端連中は、そのあとだ。
廻りが凄くて、俺が貧相では目も当てられん!
「肉だ肉、う~タンパク質がたりない、じゃんじゃん持ってこい!」
仏蘭西狼三世ごっこをしながら、これからの事を考える。
(英語版だと、”ウオルフ”でちっとも感情移入ができんかった!)
廻りが付いてこないのが寂しい。
とくに『豚は山林原野での開墾育成ができる」という情報はありがたかったぞ。
まさに『俺の山を制する』プランに適合している。
残留組には山奥に避難しているあいだに、豚の方の繁殖もするように言いつけておいたし。
成果が楽しみだ。
やっほ~、豚肉食べ放題だ!
各地を廻って、せっせと子豚を仕入れたかいがあるというモノだ。
まあ、政策のことばかり話してもツマランから、身近な話題をしよう。
子供も産まれたし、いつまでも『猿夜叉』なのも不都合なので、名前を変えようと思う。
元服にはまだ早いが、名乗りを変えるのには、良い機会だろう
浅井家の跡取り関連の名前は、『新三郎』か『新九郎』だ!
なんとつまらない凡百な名前だ!! と、心に思いつつ名乗りを考えた。
発表しよう、……『三九郎だ』(斬九郞)
ふふふっ、かっちょええだろう?
伝統を踏まえつつ、新しいモノを創造する、これだよ!
『斬苦の若君』と、呼んでくれたまえ。
余談だが……、
剣術の師匠の渡辺某だが、名を『 渡辺 剣 』というのだ。
さすが、渡辺! 名前が一文字だ!! と感動する以前に、あの方によく似ていたので驚いた。
まあいい、俺は若様だし、かぶらんだろう。(大牛の末平でもないし。)
『新さん』の方が、聞こえ的にヤバイだろうし。
それこそ、さぶ郎に怒られそうだ。
― トピックス ―
京極高清が没した。
京極高延が家督を継いだ。
ど~でも良い。
(高延は家督相続直後に挙兵した定頼と弟高吉の軍勢と戦ってたが、天文10年(1541年)浅井にも牙を向けた糞野郎だ)。
作者は、徳川方が苦手です。
別に他意はありません、ナメクジが嫌いなのと変わりません。
カタツムリは梅雨の風情があって、種類によって美味しいので大好きです。
人間って勝手なモノですね。
でも、惨九郞はイイですよね~。
夢も希望も救いもないのが泣けます。
井伊さんは、教習所で出会いましたが、イイ人でした。
昔の彦根の市長さんも、イイ市長でした。