本当のプロローグ 久政覚醒?
この転生者は、作者の影ではありません。
結構、俗物かも?(羨ましい!)
『長政?はつらいよっ!弱小浅井はハードすぎ!!』の熱烈なファンの様です。
いろいろと気取って、マネしていたりします。
つらい現実から離れるために、高台に腰を下ろし、視界に広がる町を眼下に見下ろす。
現代人なら、歩くのすら往生する粗末な田舎道。
秋の夕暮れ、収穫の終わった田んぼは、何故だか、とてももの悲しいものがある。
まばらに草が生え、整備を忘れ去られたデコボコな道が、蛇のごとく妙に曲がりくねりながらも遙か地平の向こうまで続いている。
そんな荒れた田舎道を、荷物を大事そうに背負う行商人達が、せわしなく歩いていく。
行き交う者は皆、どこか気ぜわしい雰囲気がある。日没を怖れて、足早に歩いて行く……。
それは、寛正5年に始まった。
将軍足利義政が、弟の義尋を還俗させ、義視としたことから端を発した。
現実から目を背け、弟に丸投げしようと『後継者指名』したにもかかわらず、子供を授かった。
お馬鹿な話である。
自分の言動に責任を持てない奴が一番始末が悪い。
「幕府よ、お前はもう死んでいる!!」である。
皆がそれぞれの思惑を持ち、己の主張を正当とした。
唯一裁定出来たはずの義政は、無責任にも現実から目を背けた。
そして日の本は割れた。
細川率いる東軍十六万、かたや山名の西軍十一万は、平安の都を戦場にしてしまった。
そして、世に言う、『応仁の乱』は、日の本全土に戦火の炎を拡げていった。
都は荒れ果て、建物は焼け落ちて灰塵と化し、洛中はまるで地獄のようである。
将軍すら敵として戦う事が、まかり通るのだ。
乱世の英雄達が時を得て、勝利を掴み、各地に産声を上げた。
解き放たれた英雄は、その才覚と力をもって日の本を切り取りはじめる。
今や、日本全国は血で血を洗う下剋上の炎に包まれていた。
法も治も理もなく、ただ己の力のみをもって他者の力を制する混沌とした時代。
後世に言う「戦国時代」の幕開けである。
……ふう、琵琶湖はいいのう~。
夕暮れの城下町を見下ろしながら、ひとり感慨にふける。
身なりはそれなりに良いが、和服(かなりに豪華)である。しかも、雪駄履きだ。
ついでに言えば、紅顔の美少年である。
儂の名前は「猿夜叉」じゃ。
変な名前じゃろう?儂も流石に猿はイヤじゃった。虎なら良いのにのう。
やはり、『たいがーす』じゃ。
物心がついた頃より猿、猿と言われ続けて、もう、うんざりよ。
世話係まで「猿夜叉さま」と、鼻先でせせら笑っておる気がする。
「丁寧にサル呼ばわりなど、いいかげんせい」と、言いたいわ。
親父殿も少しは考えてくだされよ。
『猿』と呼ばれた、太閤秀吉公は、『郷土の誇り』、とっても好きなんじゃが……。
「「さるやしゃさま~ぁ」」
ああ、誰かが儂を探しているようじゃ。
儂は、眺望の良い開けた場所から、城下を見下ろすのが好きじゃ。
お気に入りの東屋に腰を下ろしていた儂は、ゆっくりと立ち上がり、供の者達に手を振った。
「ここじゃ~」
まあ、生まれた時代が悪かったわいな、そう時代じゃ!!
時代は今、戦国時代なんだわ。
てな訳で、少しばかり回想しようかのう。
いやあ、まあ参ったわい。聞いてくれ!
気がついたら儂は赤ん坊で、何もできずオッパイ飲んでたわけよ。
実は儂は、ただの会社員だったんじゃが…、変な法被姿の娘に(Kami)に……、ううっあたまが痛い。
やはり無理に思い出そうとすると頭が痛むわ。
まあ、『生まれ変わった』とはいえ赤ん坊では、頭が働かなくって当然かのう?
皆が何を言っているのか、半分も理解出来ないしのう。
おとなしく普通に赤子を満喫したんじゃよ。
恐ろしく若い母親だった。
お乳をねだってもなかなかオッパイを出してはくれなんだ、乳の出が悪いのか、高貴ゆえか?
いつもは、数人の乳母に世話をしてもらっておった。
自分ではまったく自由に動けないし、唯一手に入った情報は、儂の名前とか・・・猿(苦笑、まさかのう?)。
父上や義母上の名前すら、『殿』、『お嬢様』としか判らずじまいじゃ。
乳母が「おせん、加羅、うめ、たけ」、と言うことくらいで。
爺が『彦左衛門』と、また時代がかった名前だわい。
視覚情報で皆が和服である事、儂のおしめが布、ぽんぱ~すでは無かったぞ。
部屋には畳も無く床バリで、布団がえらく硬い事くらいじゃ。
(うちはどんなけ貧乏なのじゃ!!)
あと、刀を差したお侍さんに囲まれた時は、正直ちびったぞ、ホント怖かったわ、何あの集団。
じぶんの情報が判ったのは、随分と後になってからじゃが、お楽しみといったところじゃ。
『まあいわゆる、戦国時代に転生というヤツ』かのう?
『そうですね、どうなる事やら…』…じゃないわ。
いきなりな運命を悲観して、泣きながらおちちを飲んで、泣きながら出すだけの毎日を(屈辱をかみしめ)過ごしておったわ。
夢の『赤子プレイ』も毎日ではつらいわっ。
極極たまにあるから良いのじゃ!
しかも、『チート』なぞ貰っとらん!!これはゆゆしき問題ぞ!
とりあえず、戦国の世を生き抜く為にも己を知らねばのう。
というわけで現状確認じゃ。
儂の前世知識と、聞き取り調査を統合したので、報告しようかのう。
やっぱり、やめようかの?
嘘じゃ嘘じゃ、教えてやるわ。
父や祖父の姿は、とんと見たことが無かったのう。
儂は、てっきり「戦死したのか?」そう思っていくらいだ。
(「父さん死んだの?」)そんな恐ろしいこと、とても聞けはせなんだが…。
まあ、戦であちこち走り回っているらしい。
そして、まつりごとも忙しいようだ。
「江北を守る為に、六角と戦い奔走している」らしく、「小谷のお城も留守がち」だとか。
戦況は芳しくはないようだ。
それに『殿』と呼ばれ、政治にも携わっているらしい。
むふふふ。
「殿、小谷、江北、六角、戦、そして、猿夜叉」というわけで、親父は北近江の戦国大名、浅井さんで確定ですな。
まあ、浅井の若君で小谷城に住んでいる。
という事は、儂って、もしかして『浅井長政?』
やった~死亡ふらぐ確定(喜)!!
義務教育を受けていれば、み~んな、その名を知っているが、実はよく知らないという。
何気に有名なのにマイナー(空気)な人物じゃ。
普通は信長とその妹のお市、姪を介したエピソードしか知られていない。
何故、あんなにも、『あさくらちゃん』と大の仲良しなのか?は大いなる謎じゃ。
敗者の歴史は、静かに消え去るのみなのだろうの。
でも大丈夫じゃ。
儂も近江の人間じゃ、長政の事ならばひと通り、一応は知っているぞい。
「ねっと」で、『長政?はつらいよっ!』を、毎回愛読しておったしの。
知識は完璧じゃ、我が、バイブルじゃ。 (←バイブではないぞ)
浅井さんは、平成の大合併により新たに長浜となった旧浅井町?の人じゃな。
一応、地元密着の人なのだが、儂的にはあまり馴染みが無かったわい。
前世の儂が住んでいた長浜市は、『太閤秀吉の出世の町』としてわりと有名な街でのう。
詳しくは語らん、お前さんも『長政?はつらいよっ!』でも読んで調べてくれたまえよ。
土地柄ゆえか、歴史が大好きで資料とかもそれなりに読んでおったのじゃ。
儂も、ゲームには、さほど興味がなかった方じゃが、『太閤談志伝』『信秀の坊や』シリーズだけは、超大好きだったのう、作者と一緒じゃ。
『信秀の坊や』をクリアした後、浅井プレイも楽しんでいたので多少の知識はあるが、戦力は薄かったぞ。
『太閤談志伝』に至っては、『長政』が死んでくれん事には、『秀吉』の出世がはじまらなんだわ。
「風呂上がりにビール片手にパンツ一丁のままで…、気がついたら朝」などはザラじゃったかのう?
ヘビ~ユーザーとしては、まあ正しい状態であったと云えよう。
戦国に思いをはせ、どちらかと云えば、夢見がちだった儂。
もし、『信長に、いきなり出会ったらどうするか?シカトしよう』とか、
『秀吉の家来になったら、どう取り入ろう?』とか『友達なら、お金を隠そう!絶対取られそうだ』とか、
『死んでも家康の家臣だけはごめんだ!いやおこぼれ狙いは魅力だな』
『三英傑に生まれ変わるのは、流石に忙しすぎて、身が持たない。過労死する気がするのでごめんこうむる。』
『三成を助けるのは無理なのか?大坂城西の丸自爆ルートで行こうかいのう』
なんて夢想を無双2しておったが……。
いやあ、浅井家転生は、実に面白い。望むところじゃわい。
亮政、久政、長政以外は、さすがによくは覚えておらんが、遠藤君、磯野君がいたのは強烈に覚えている。
ああ、あと友松君が不憫じゃった。
とりあえず、『信長』だけは怒らすまい。これで、楽勝だ!!
『あさくらちゃん』スマンのう、ミゴロシでいくわ。
「……何と、俺が浅井長政か?余裕だな。
でもまあ、朝倉攻めの『金ヶ崎』反逆イベントさえ回避すれば、後は楽勝だ。
第六天魔王信長を裏切らなければ、とりあえずOKじゃないか。
お市がいれば何も怖くないぞ~。
お市は美人らしいし、勝ち組だ!!
生き残るために歴史をじゃんじゃん改変してやる~。
いや、やり過ぎは禁物だったかな?
あの小説、縛りが多すぎて歯がゆかったな。
もう少し、チート全開で、はっちゃけても好いのに、作者が真面目すぎるんだろうな?
遠藤君と磯野君を早めにゲットしよう!!ついでに、直虎とムフフ…いやあ、転生最高!!」
なんと、これでよいのか?
さすがに、長政?のハードな縛りがきつくて、作者は夢の世界へ逃げ出したようじゃ。
ようやく、ワシの時代ぞい。