好きなお魚
A子 「ねぇねぇ。魚の中で何が好き?」
B男 「そうだなぁ。淡白な白身の方が好きかなぁ」
A子 「え、玄白な杉田が好き?」
B男 「誰が杉田玄白好きか!?」
A子 「他人の趣味をとやかく言うつもりはないけれど、とりあえずキモッ!」
B男 「キモイ言うな!」
A子 「この世で一番好きな人が杉田玄白!?」
B男 「話がデカクなってる! 魚の中で一番好きなものって話だったろうが!」
A子 「杉田玄白のどこが魚だ!?」
B男 「どこも魚じゃねぇよ!」
A子 「彼は人魚だ!」
B男 「違うよね!?」
A子 「猟師たちはその美しさに魅了され……」
B男 「俺の知る限りシワシワのお爺ちゃんだったけど!?」
A子 「それは年を取ってからの玄白でしょ!? 若いころはものすごい美少女だったんだから」
B男 「女だったのか、杉田玄白!?」
A子 「子供のころはね。で、40過ぎたあたりでおじちゃんに、そしておじいちゃんに」
B男 「何で途中から変わってんだよ!?」
A子 「出世魚なの!」
B男 「魚じゃねぇよ! そしてさしもの出世魚も性別は変わらん!」
A子 「じゃあ、人魚版杉田玄白も男だった」
B男 「まず杉田玄白人魚じゃないから!」
A子 「じゃあなぜ魚ランキングに杉田玄白をランクインさせた!?」
B男 「させてねぇ!」
A子 「さっき言ってたじゃない、杉田玄白萌だって!」
B男 「そんなことは言ってねぇ! 淡白な白身が好きだって言ったんだよ!」
A子 「え、玄白、白身なの?」
B男 「玄白の話じゃねぇ!」
A子 「あ、玄白のパクは白身って意味!?」
B男 「知らねぇけど、たぶん違ぇ!」
A子 「杉田玄白の第一人者と見込んで質問するけどさ」
B男 「勝手に見込まないでくれ。そもそも杉田玄白の第一人者ってなんだ!?」
A子 「杉田玄白が何をしでかした人か知ってる?」
B男 「しでかしてはいねぇよ! 物凄いことをやってのけた偉人だよ!」
A子 「かまぼこを発明した!」
B男 「魚から離れようか!?」
A子 「今日は魚の話をしようと思ってたのに!?」
B男 「じゃあ玄白のことを忘れようか!?」
A子 「あのさわやかな笑顔が頭から離れない!」
B男 「どのさわやかな笑顔だ!? 教科書に載ってた顔しか覚えてねぇわ!」
A子 「『俺の作ったかまぼこ、食ってくれよな』」
B男 「そんなセリフ絶対言ってないから! まずかまぼこ作ってないだろうし!」
A子 「かまぼこも作らずに何やってたのよ!?」
B男 「医学の研究だよ!」
A子 「かまぼこのおいしさを医学的に証明してみせようと?」
B男 「違う! 人間の体の中がどうなってるかを調べてたの!」
A子 「CTスキャンすればいいのに」
B男 「なかったんだよ!」
A子 「MRIは?」
B男 「ない!」
A子 「ちくわは?」
B男 「あったかもしれないけれど、それをどうする気だ!?」
A子 「あの穴から覗けば全てが見えるのよ」
B男 「見えるか!」
A子 「『む、このかまぼこの8割はスケトウダラだな!?』」
B男 「どこまでもかまぼこに執着する気か、お前は!?」
A子 「かまぼこってどうやって作ってるのかな?」
B男 「白身魚のすり身に塩を振って、あとは蒸しあげるんだよ」
A子 「それだけで出来るの!?」
B男 「とは言っても、白身の魚はたくさんあるから何を使うかで味はずいぶん変わるんだ。タラ、タイ、ハモ、それからイシモチ」
A子 「そして、玄白!」
B男 「だから玄白はそこに分類されないから! もういいよ」




