ネスの力
A子 「ねぇねぇ。ネスの力って知ってる?」
B男 「何だよ、ネスの力って?」
A子 「形容詞にくっつけることでぼやっとした名詞に出来るヤツ」
B男 「あぁ、あれか。カインドネスとか、ロンリネスとかいうヤツ」
A子 「『親切な』っていう形容詞が『親切』って名詞になったり、『孤独な』っていう形容詞が『ボッチ』って名詞になったり」
B男 「ロンリネスの和訳はボッチじゃないぞ!?」
A子 「あなたを現す二人称?」
B男 「誰がぼっちだ!?」
A子 「ぼやっとした名詞にするんだから、『あなったっぽいもの』とかにしなきゃかな?」
B男 「しなくていいし、その『ぼやっとした』ってなんだよ!?」
A子 「抽象的な名詞なんだって」
B男 「犬とか、本とか、実態のはっきりした物じゃなくて、優しさとか温かさとか、抽象的な名詞のことだろ?」
A子 「そう、実体がないぼやっとした感じ」
B男 「ぼやっとはしてないけども!?」
A子 「なので、一般人にいるのがガールフレンドで、あなたの場合はガールフレンドネス」
B男 「ガールフレンドネスってなんだよ!?」
A子 「脳内彼女」
B男 「ぼやっとした存在だね!?」
A子 「決して実在はしないけれど、あなたはいると言い張る」
B男 「誰が言い張ってるか!?」
A子 「ガールフレンドネスに囲まれて、幸せそうだよね」
B男 「幸せかな、その状況!?」
A子 「この前、ガールフレンドネスと遊園地に行ったんでしょ?」
B男 「行くか!」
A子 「『大人、二人です』」
B男 「ガールフレンドネスの座席取ったら、そこ空席だからね!?」
A子 「『あ、詰めてもらっていいですか?』」
B男 「ほら、周りの人には見えてないじゃん!」
A子 「『あんまり近付きたくないので』」
B男 「あ、俺が避けられてるの!? だから『もっとあっちいけ』的な詰めろだったの!?」
A子 「『さっきからずっと一人で会話してるよ、あの人』」
B男 「そりゃ怖がられても仕方ないかもね!?」
A子 「『きっと、ガールフレンドネスと話してるんだよ』」
B男 「認知度は結構高いんだね、ガールフレンドネス!? 割と浸透してるんだ!?」
A子 「えぇ、だって、ここは遊園地ネスですから」
B男 「架空の遊園地なの!? 実在しないの!?」
A子 「遊園地があるつもり広場」
B男 「そんな、使ったつもり貯金みたいに!?」
A子 「ユーズドネス、貯金ネスだね!?」
B男 「ぼやっとした名詞にしてんじゃねぇよ! てか、使い方間違ってるからね、確実に!」
A子 「間違ってないですぅ~!」
B男 「うわ、ムカつく言い方!?」
A子 「間違ってないネスゥ~!」
B男 「ぼやっとさせんな!」
A子 「なんでネスか?」
B男 「『です』の部分にネスを入れ込むな! 使い方間違ってるから!」
A子 「シュガーネス」
B男 「シュガーレスだろ、それ!?」
A子 「人工甘味料」
B男 「シュガーじゃないっぽい物だけども! そんな使い方はしない!」
A子 「天然ものじゃない、まがい物にもネスが使えるということは……」
B男 「使えるということは、じゃなくて! 使えないからね!」
A子 「あなたのそれは、ヘアーネス?」
B男 「ヅラじゃないよ!? 地毛!」
A子 「地毛ーレス」
B男 「誰が地毛ーレスか!? 50%カット、とかしてねぇわ!」
A子 「まぁまぁ、男は髪の毛や顔じゃないから」
B男 「この流れでのその励ましは、全然励ませてないけどね!」
A子 「大事なのはお金」
B男 「根も葉もねぇわ!」
A子 「大丈夫。あなたにはガールフレンドネスがいるじゃない!」
B男 「だから脳内彼女はガールフレンドネスとか言わないから! もういいよ」