ボイトレ
A子 「ねぇねぇ。ボイストレーニングってやってる?」
B男 「普段はやってないけど、喉の調子がおかしい時はちょっとやるかな」
A子 「喉立て伏せ百回!」
B男 「なんだ、喉立て伏せって!?」
A子 「喉のトレーニング」
B男 「酷使し過ぎだろう!? 『あー』とか言うんだよ」
A子 「あぁ~」
B男 「そういうんじゃなくて! 感心した感じじゃなくて、腹式呼吸で『あー』って声を出すの」
A子 「鼻から?」
B男 「口から! 喉のトレーニングですから!」
A子 「何のために?」
B男 「喉を温めるんだよ。いきなり大きな声とか出すと負担が大きいからな」
A子 「そんなの、熱湯を飲めば一発じゃない」
B男 「そういう温め方じゃなくて! あと熱湯は飲めないよ!」
A子 「なんか、『あめんぼ 青いな 未熟だな』みたいなのあるじゃない?」
B男 「『あめんぼ 赤いな あいうえお』な! あめんぼに成熟とか求めてないから!」
A子 「『浮き輪に 小えびが 詰まってる』」
B男 「ぎっしり!? 浮き輪の中、小エビでいっぱいなのか!?」
A子 「そういうのはしないの?」
B男 「滑舌をよくするためにはした方がいいんだろうけど、やってないなぁ」
A子 「ダメじゃない。ただでさえ腹話術の人形みたいな顔してるのに」
B男 「顔関係ないし! 腹話術の人形みたいな顔ってどんなんだ!?」
A子 「口角の下に線が」
B男 「口、パカッて開くところ!? ないよ、そんな線!」
A子 「たまに声が遅れて聞こえるし」
B男 「聞こえないから!」
A子 「後ろにいつもおじさんがついてるし」
B男 「腹話術師ついてない!」
A子 「あと、妙に声が高い」
B男 「自分と人形を演じ分けなきゃいけないから、ファルセットとか使う腹話術師多いよね!?」
A子 「やった方がいいよ、『赤ん坊 長いな あいうえお』」
B男 「赤ん坊が長いの!?」
A子 「6メートル」
B男 「長い! 思ってた以上に!」
A子 「『浮き雲に 小えびも 泳いでる』」
B男 「だからなんだだね! 赤ん坊が長過ぎてそれどころじゃないよ、もう!」
A子 「『家政婦 見ていた かきくけこ』」
B男 「見てねぇよ!」
A子 「『この謎 きっと 解き明かす』」
B男 「ミステリーになってるね!?」
A子 「『佐々木を 刺しましょ さしすせそ』」
B男 「犯人! 犯人いたよ!」
A子 「『私が この手で 刺しました』」
B男 「はい、自供いただきました!」
A子 「『ところが 警部が 取り逃がす』」
B男 「警部さん、しっかりして!」
A子 「『友達 みんなで 食事会』」
B男 「してる場合か!?」
A子 「『なるように なるさ なにぬねの』」
B男 「開き直るな!」
A子 「『納戸に ぬめって 何ねばる」」
B男 「なんで普通に戻るの、そこで!? 何が納戸でぬめってたのか凄い気になるわ!」
A子 「これだけボイストレーニングをしておけば、滑舌は完璧だね」
B男 「そう思ってても、『馬術』とかが出てくると言えなかったりするんだよな」
A子 「そんな言葉が言えないなんて言っているうちはまだまだだね」
B男 「お前は違うのか?」
A子 「私は、言わない」
B男 「言わないのかよ!?」
A子 「全力で誤魔化す!」
B男 「だったらボイストレーニングをする意味ないだろう!? もういいよ。




