ケータイ小説
A子 「ねぇねぇ。ケータイ小説ってあるよね」
B男 「一時期物凄いブームになったよな」
A子 「主人公がケータイ」
B男 「その展開、前にどっかで聞いたよ!?」
A子 「『ごめん、ケータイ君。実は私……ピッチなの』」
B男 「ヒロインPHSなんだ!? スマホにくるかと思いきや、遡っちゃったね、時代を!」
A子 「『もうすぐ、私には電波が届かなくなる。そうなる前に、笑ってお別れしましょ』」
B男 「おぉ、なんか切ないぞ!? ピッチのくせに!」
A子 「『私たちがポケベルだったころは、楽しかったよね』」
B男 「あ、そっから進化してきたんだ、この二人!?」
A子 「『あの頃は二人とも、会話がぎこちなかったよね』」
B男 「ポケベルって文字がそんなに打てないからね!? 」
A子 「『3341、さ、み、し、い』」
B男 「文字が出る前のヤツだね!? 物凄い初期の、数字しか表示出来ないヤツだ! 02510でありがとうとか、超無理矢理読ませてた時代のヤツだ! 」
A子 「『それから何年かして、ケータイ君はカメラを手に入れたよね』」
B男 「写メールの登場は衝撃的だったよね!? 使い捨てカメラとか見なくなったもんね!」
A子 「『写真撮ってすぐに動くと、画像がぶれたっけ』」
B男 「最初のころのカメラは本当に付いてるだけで性能低かったんだよね!?」
A子 「『ケータイ君が写真を送ってくれても、私は受け取れなくて』」
B男 「対応してない機種だったんだね!? 初期のころは「写メ見れるやつ?」とか聞いてから送ってたよ、俺!」
A子 「『あれから、もう10年』」
B男 「10年で本当に技術は進んだよな」
A子 「『……本当は15年』」
B男 「なんで嘘ついた!? そういや2000年ころだったっけねぇ、写メールが出始めたのって!?」
A子 「『そういえば、押入れを整理してたら着メロの本が出てきたよ』」
B男 「昔は自分で音符打ち込んでたんだよね、着メロ! 3和音とかでさ!」
A子 「『大切な思い出の品だから、一番高く買い取ってくれる所に売ります』」
B男 「売るんだ!? 大切に取っておいたりはしないんだね!?」
A子 「『残念ながら、売れませんでした』」
B男 「まぁそうだろうね!? 今買う人いないだろうし! 買っても、スマホに着メロ打ち込む機能付いてないしね!」
A子 「『でも、よく燃えました』」
B男 「燃やしたの!? 焼却処分なんだ!? せめてちり紙交換に出せばティッシュくらいは貰えたのに!」
A子 「『ちり紙交換に出すのすら恥ずかしい』」
B男 「確かに、「え、今更着メロの本!?」とか思われるかもしれないけども!」
A子 「『不便だけれど、とても楽しかったあの頃』」
B男 「確かに、今から比べれば不便なんてもんじゃなかったよな。性能が低かったもん」
A子 「『16文字しか打てないショートメール』」
B男 「半角カタカナでやり取りしてたわ」
A子 「『カラー液晶という名の4色』」
B男 「それでも頑張ってた方なんだよ!」
A子 「『電波が拾えると言われた胡散臭い別売りのアンテナ!』」
B男 「全然効果なかったみたいだね、後付けのアンテナ!」
A子 「『ケータイ君の、090が好きでした』」
B男 「070だもんね、PHS!」
A子 「『でももうピッチの時代は終わり、私たちの関係も終わりだね』」
B男 「まてまて。確かにPHSのサービスは終了したけど、二人の関係まで終わらせなくてもいいだろう。ケータイは、きっとそんなこと気にしないって」
A子 「『ケータイ君……』」
B男 「まだまだ一緒にいればいいじゃないか」
A子 「『あ、いや。これからスマホに乗り換えるんで。ガラケーとか、ぷ』」
B男 「急に見下してんじゃねぇよ!」
A子 「みたいなのが、ケータイ小説」
B男 「そういうんじゃねぇよ ケータイ小説って! もういいよ」