遺言状の書き方
A子 「ねぇねぇ。もしもの時のために遺言状を書いてみたんだけど」
B男 「また唐突だな!?」
A子 「何があるか分かんないじゃない」
B男 「万が一に備えてか」
A子 「マンガ市。様々なお店が一ヶ所に集まり漫画を販売する市場。つまりコミケ」
B男 「違うわ! なんでコミケに備えて遺言状書くんだよ!?」
A子 「ほら、燃えつきる人続出だし」
B男 「魂燃やし過ぎだ! 万が一に備えるの!」
A子 「万が一って?」
B男 「事故とか」
A子 「私4トントラックまでならぶつかっても耐えられるよ」
B男 「鉄人かお前は!? じゃあ万が一なんてないから遺言状書く必要なかったな!」
A子 「分かんないでしょ!? ご贔屓のサークルの新刊読んで萌え死に」
B男 「そんな最後嫌だろう!?」
A子 「ノーマークの本のジャケットを見てキュン死に」
B男 「内側からの刺激に弱いな、お前の心臓は!? 4トントラック大丈夫なのに!」
A子 「マンガ市に備えてね」
B男 「万が一ね!」
A子 「おかしいところがないか、ちょっと聞いてくれる?」
B男 「まず動機がおかしいんだが、まぁ、聞いてやろう」
A子 「まず初めに、お年玉付きじゃなくてごめんなさい」
B男 「普通付かないんだ、お年玉! 遺言状、切手シートと交換されても嫌だろう!?」
A子 「でも、ちょっとしたガッカリ感がない?」
B男 「ねぇわ! お年玉の付いてない普通のに書くの!」
A子 「じゃあ、お年玉の付いてないハガキを……」
B男 「便箋に書け!」
A子 「でも、今年の年賀ハガキが余ってるから」
B男 「遺言状は、ちゃんとした紙に書くんだよ!」
A子 「軽いジョークを交えつつ?」
B男 「交えんな! 普通に書け!」
A子 「いつも楽しく聞いています」
B男 「ラジオか!?」
A子 「BタイプのTシャツの黒を……」
B男 「プレゼントの応募もするな! 残された人達に対するメッセージだけを書くんだよ!」
A子 「や~い、補修受けてやんの」
B男 「何に残された人達だ!? 学校とかじゃなくて、お前がこれだけは言っておきたいってことを伝えたい人に伝えるんだよ!」
A子 「いつも楽しく聞いています」
B男 「ラジオのパーソナリティに遺言送るの禁止! 身近な人にあてて書こうか!」
A子 「じゃあまず、お父さんお母さん」
B男 「そう、そこは外せないよな」
A子 「私はあなたの本当の子供ではありません」
B男 「それ親から言われることだからね! 仮に真実でも親は知ってるから!」
A子 「私の残した財産は家族で仲良く分けてください」
B男 「財産なんかあるのかよ?」
A子 「机の上に5百円玉貯金が」
B男 「ってことは10万くらいか?」
A子 「たしか4枚ほど入れたはず」
B男 「2千円じゃん!?」
A子 「71円だった」
B男 「5百円玉入ってねぇ!?」
A子 「家族で分けてください」
B男 「分けるほどの額か!」
A子 「家族35人で平等に」
B男 「大家族!? 一人あたま2円ちょいじゃん!」
A子 「もう他に言うことはありません」
B男 「じゃあ別に書かなくてもよかったな!」
A子 「また言いたいことが出来たら改めて書きます」
B男 「どっかで生き返る予定か!?」
A子 「追伸。悲しいお葬式は嫌なので、半笑いのお坊さんを呼んでください」
B男 「なんで半笑いなんだよ!? 気持ち悪いわ!」
A子 「最後にひとつお願いを聞いてください」
B男 「おう、最後なんだから言っておけ」
A子 「正しい遺言状の書き方を教えてください」
B男 「このタイミングで聞くのおかしいだろ!? もういいよ」