はげまして
A子 「ねぇねぇ。親友が失恋しちゃって、なんとか励ましてあげたいんだけど」
B男 「それは気の毒にな。話を聞いてあげるといいよ」
A子 「いや~、それは面倒くさいからパス」
B男 「聞けよ! それが一番ポピュラーな励まし方だろう!?」
A子 「金銭的に解決出来れば楽でいいのに」
B男 「家事とか全部プロに任せちゃう感じの人か!? 親友の悩みくらい親身になって聞いてやれよ!」
A子 「まぁ、その親友も、お金で作った親友だからねぇ」
B男 「親友じゃねぇよ、それ!」
A子 「友情の形は人それぞれだよ」
B男 「それはそうだけど! お金で買えるヤツは親友じゃないだろう!?」
A子 「いやだってね、愚痴を聞かされるのはつらくない?」
B男 「全部吐き出せばすっきりして、前向きになれるかもしれないだろう?」
A子 「臀部をむき出しにすればビックリして前後が逆になる?」
B男 「どんな耳してんだ、お前は!?」
A子 「そりゃ臀部がむき出しになればビックリもするよぉ」
B男 「全部を吐き出すの! そしたらすっきりして前向きになるの!」
A子 「そのために、私が愚痴を聞けばいいの?」
B男 「そうそう。言いたいことを言うと気分もスッキリするだろう」
A子 「よし分かった。その子には全部を溜め込んで後ろ向きに生きてもらおう!」
B男 「協力してやれよ!?」
A子 「え~……そしたら、なんか励ましの言葉とかかけなきゃいけないじゃない?」
B男 「かけてやれよ」
A子 「そういうの苦手なんだよね」
B男 「お決まりの文句でも、そういう時は嬉しいもんなんだよ」
A子 「『あっ、そ~れっ』とか、『ど~したどした』とか?」
B男 「合いの手だな、それ!?」
A子 「違うの!?」
B男 「話を聞いて、で、そこで励ましの言葉をかけるんだよ」
A子 「『は~ぁっ、それからそれから?』」
B男 「合いの手入れんな!」
A子 「元気出るかと思って」
B男 「イライラする! 普通に励ましてやれよ!」
A子 「どんなこと言えばいいの?」
B男 「『男はあの人だけじゃないよ』とか」
A子 「『あの人は男じゃないよ』」
B男 「男だよ!? 彼氏だったんだよね!?」
A子 「嘘は感心しないなぁ」
B男 「俺は吐いてねぇよ、嘘! お前がおかしくしたんだよ!」
A子 「そうやってすぐ人のせいにする。だから『合いの手名人』なんて言われるのよ!?」
B男 「言われてねぇよ! むしろその称号はお前にくれてやるよ!」
A子 「そういえば、星の数がどうとか言うのは聞いたことあるな」
B男 「それも定番だな」
A子 「『あなたは星の数ほどいるのよ』」
B男 「いないよね!? その人一人しかいないよね!?」
A子 「何が星の数? 私の親友がフラれた理由?」
B男 「欠点だらけか!? 男が星の数ほどいるの!」
A子 「そんなにはいないよ」
B男 「分かってるよ!? けど、それくらいいるっていう例え!」
A子 「夜空に見える星がみんな男だとすると、織姫と彦星は男同士になっちゃうけど、平気?」
B男 「平気じゃないね!? 数の話だから! たくさんいるってこと! そうやって励ますの!」
A子 「『男なんて、彦星の数ほどいるんだから』」
B男 「一人じゃん!? 逃しちゃったらおしまいじゃん!?」
A子 「なんだよもう! 使えないな、常套句!」
B男 「使い方が間違ってるんだよ! 『男なんか星の数ほどいるんだから元気出せ』でいいだろう!?」
A子 「『そのうち、どっかの惑星の男と出会えるさ』」
B男 「出会えても嬉しくないよね!? なんかウネウネした感じの人だったらどうすんの!?」
A子 「人間とは、環境に適応しながら生き残ってきた種族なんだよ」
B男 「宇宙人に適応するくらいなら他の男見つける方が楽だわ!」
A子 「励ますのって難しいね」
B男 「心が弱ってる時は物凄くデリケートになってるからな。とにかくじっくり話を聞いてやるのがいいんじゃないか」
A子 「いや~、それは面倒くさいからパス」
B男 「だから聞いてやれってのに! もういいよ」




