面白博士
A子 「ねぇねぇ。町の面白博士~?」
B男 「誰が町の面白博士か!?」
A子 「面白い発明とかしてみて」
B男 「無茶ブリにもほどがあるわ! どんなのが面白い発明なんだよ?」
A子 「一回使うと日本が太平洋側にちょっとズレる扇風機とか」
B男 「風力物凄いな!?」
A子 「扇風機に向かって『あ~』ってやるのが超難しい!」
B男 「だろうね! 吹っ飛んでっちゃうよね!?」
A子 「布団、だけに!」
B男 「初登場だよ、布団! 『だけに』が言いたかったら最初に布団の話振っとけよ!」
A子 「ふりかけ、だけに!」
B男 「だから初登場! ふりかけも先に振っとけって!」
A子 「パンに!」
B男 「せめてご飯にふりかけろよ!?」
A子 「なんか、ご飯が一瞬で炊ける発明とかないの?」
B男 「そんなのがあったらいいよなぁ」
A子 「そう言うと思って発明しといた」
B男 「発明したの!? 凄いなお前!?」
A子 「世間的にはあなたが発明したことになってるけどね」
B男 「なんで!? 俺何もしてないのに!?」
A子 「一回ゴーストライターをやってみたかったんだよね」
B男 「発明に関しては使いどころがないだろう、ゴーストライター!?」
A子 「人前に出るのが苦手だから、代わりにあなたが発明したことにして、世間に発表して」
B男 「まぁ、別にいいけど」
A子 「じゃあまずは、このご飯が一瞬で炊ける電気ジャーを」
B男 「え~、これが、私の発明したご飯が一瞬で炊ける電気ジャーです」
A子 「その名も『タケルンジャー7』」
B男 「その名前発表するの、物凄く嫌なんだけど!? なんか俺がスベってるみたいになるからさぁ!」
A子 「『タケルンジャー7』!」
B男 「分かったよ! え~、名前は『タケルンジャー7』です」
A子 「悪ノリで名前を付けるな!」
B男 「俺に言うなよ! だから嫌だっつったんだよ!」
A子 「『タケルンジャー7』の『7』ってなんだ!?」
B男 「知らねぇよ! 語感がよかったんだろ、どうせ!」
A子 「いやいや。炊くのに7時間かかるから」
B男 「一瞬で炊けるんじゃないのかよ!?」
A子 「7時間なんて、地球の歴史から考えれば一瞬なんだよ」
B男 「そんなスケールのデカい話なんかどうでもいいんだよ! 普通のジャーでも小一時間で炊けるぞ!?」
A子 「じゃあ、普通のでいいじゃない」
B男 「だよね!?」
A子 「炊飯器、だけに!」
B男 「ジャーだけにでいいだろう! 折角『じゃあ』って言ったんだから!」
A子 「一旦木綿、だけに!」
B男 「初登場! 今年初だわ、耳にしたの!」
A子 「どれくらいだと、一瞬で炊けるって言えるかな?」
B男 「2分くらいで炊けるとそう言ってもいいんじゃないかな」
A子 「そう言うと思って、2分で炊けるように作り変えといた」
B男 「凄いなお前!? これで大々的に発表出来るよ」
A子 「ただ、一回ご飯を炊く度に、地球の温度が2度上がる」
B男 「なんでお前の作る物は地球規模の注釈がつくの!? 絶対なの!? ルール!?」
A子 「人間はちっぽけな生き物だけど、地球を破壊出来る力を持ってしまっていることを自覚しなきゃいけないんだよ」
B男 「だからそういうスケールのデカい話いらないから! 電気ジャーの話だから! お米が炊けるだけで、地球に影響及ぼさないの!」
A子 「人間は生きているだけで……」
B男 「そういうのもういいから!」
A子 「じゃあ、人偏は左に付くだけで漢字の意味を大きく変えるんだよ」
B男 「だからなんだ!? 本に人偏つけたら『体』になるとかいうことか!? 知ってるわ!」
A子 「一反木綿、だけに!」
B男 「ついにはどこにもかかってなくなったな!?」
A子 「じゃあ、2分でご飯が炊ける、地球に影響を及ぼさない電気ジャーを作ったよ」
B男 「おう! それでいいんだよ!」
A子 「で、これのどこが面白いんですか、面白博士?」
B男 「だから面白博士じゃねぇってのに! もういいよ」




