辞書買った
A子 「ねぇねぇ。辞典買ったの」
B男 「なんでまた?」
A子 「いやね、普段何気なく使っている言葉も、ちゃんと意味を調べてみると、間違った使い方してるかもしれないし、なにより、正しい意味を理解して言葉を使いたいなって」
B男 「エライなぁ」
A子 「『偉い:行動や志が人より優れている様。偉大であること。偉人を指して言う言葉』 おぉ、私、偉人!」
B男 「偉人ではねぇよ! 辞書買ったくらいで何が偉人か!」
A子 「でも、言葉を正しく追求していくとそういうことになるのよ」
B男 「大袈裟なんだよ」
A子 「私、普通の人とはスケールが違うから」
B男 「買いかぶり過ぎだよ」
A子 「『買いかぶり:そのモノを実力以上に過大評価すること』『杉:杉科の常緑樹。春に大量の花粉を飛ばす』」
B男 「違う違う! 分けないで『買いかぶり過ぎ』でひとつの言葉。分けちゃうと、『買いかぶり杉』っていう杉の一種みたいになっちゃうから」
A子 「そんな名前の杉は載ってないなぁ」
B男 「だから『杉』じゃなくて、『過ぎている』『過剰である』って言う意味の『過ぎ』」
A子 「あぁ! 『貝、被り過ぎ』」
B男 「違ぇよ! どこの世界に貝ガラを好き好んで被るヤツがいるんだよ!? しかも、過剰に!」
A子 「ダメだ、載ってない」
B男 「載ってるか!」
A子 「仕方ない、載ってないものは書き足しておこう」
B男 「書かなくていいから!」
A子 「なんでよ? より完璧な辞書への第一歩なのに!」
B男 「間違った言葉載せてたら意味ないだろう!?」
A子 「『イミ ナイダ朗:人名』」
B男 「いねぇよそんなヤツ!」
A子 「いや、でも載ってるし」
B男 「なんで!? え、いるの? イミナイダ朗!? っていうか、そもそもなんで人名が載ってるの!? おかしくない!?」
A子 「だって、これ世界最高の辞書だもん。世界中の日本語が載ってるんだよ」
B男 「日本にしかないだろうが、日本語は!」
A子 「スシ・ゲイシャ・マウント阿蘇」
B男 「その流れでなぜ富士山にいかない!?」
A子 「好きなの、阿蘇山!」
B男 「何山でもいいけどさ、別に。で、それも載ってんのか?」
A子 「『スシ:日本で生まれた料理。和食の代表格。日本人の主食』」
B男 「主食じゃないだろう! じゃあ何か? ハンバーグをおかずに寿司を食うのか!?」
A子 「『ゲイシャ:日本で生まれた全ての女性」』
B男 「全員じゃねぇだろ!」
A子 「『マウント富士:銭湯の壁のこと』」
B男 「違ぇよ! 確かに銭湯の壁に富士山書いてあること多いけど! 富士山=銭湯の壁じゃないから!」
A子 「『じゃないから:ジャマイカの別名』」
B男 「嘘をつくな!」
A子 「『ジャマイカ:イカの一種』」
B男 「いねぇよ、そんなイカ! いるなら見せてみろ!」
A子 「『イカ:フライにして食べるのが一番おいしい』」
B男 「お前の好みじゃねぇかよ! 俺はイカ刺しが一番好きだよ!」
A子 「『イカ刺し:かんざしの一種。髪の毛に刺して使う』」
B男 「じゃあ刺してもらおうか! ここぞという大事な時に髪のオシャレに使用してもらおうじゃねぇか!」
A子 「『それは無理』」
B男 「収録語みたいな言い方すんじゃねぇよ! 載ってないだろ、それは!」
A子 「載ってるよぅ。『それはウニ』の次に」
B男 「なんだ、それはウニって!? どういう意味だって書いてあるんだよ!?」
A子 「相手にウニであることを伝えるための言葉。また、感謝の言葉」
B男 「使わねぇよ! 感謝してる時に『それはウニ』って言ったことねぇよ! どうやって使えってんだよ!?」
A子 「使用例1、『この度はお招きいただき、ありがとうございます』」
B男 「『それはウニ』使ってねぇじゃん!」
A子 「使用例2、『ねぇねぇ。辞書買ったの』『それはウニ!』」
B男 「間違い過ぎだろ! もういいよ」