やりたい部活
A子 「ねぇねぇ。やりたい部活があるんだけど」
B男 「いまさらか? 何部だよ?」
A子 「新聞部!」
B男 「校内新聞とか作るんだよな」
A子 「主な活動は学校内で起きた連続殺人事件の真犯人究明」
B男 「起こんないだろ、連続殺人事件!?」
A子 「起こる起こる。出かける度に遭遇するよ」
B男 「それは探偵もののドラマだけだよ!」
A子 「何気なく撮った一枚の写真がトリックを暴く重要な鍵になったりね」
B男 「ありがちだな」
A子 「見てこの写真。犯行現場がばっちり写ってる!」
B男 「トリック関係ないじゃん!? もうまんま決定的証拠じゃん!」
A子 「そしてこれが被害者が被害に遭う前の写真」
B男 「写真撮ってる暇があったら犯行を未然に防げよ!」
A子 「それは新聞部の活動の範囲外だから」
B男 「活動の範囲の前に人として犯罪を止めろよ!」
A子 「盛り上がらないじゃん!」
B男 「盛り上げる必要がないだろ!?」
A子 「気ぃ利かせて逆光で写真撮ったのに」
B男 「なんでだよ!?」
A子 「真犯人の顔がハッキリ写らないようによ!」
B男 「しっかり写しとけよ!」
A子 「しかも、意味深な腕の傷とか写しといて、まるっきり関係ない人間に疑いの目が向くように細工」
B男 「お前がトリックに加担してんじゃねぇかよ!」
A子 「でも、よ~く見たら右利きと左利きで真犯人が分かるようになってるから」
B男 「そこまで考えて写真撮んじゃねぇよ!」
A子 「それが新聞部として受け継がれてきた伝統!」
B男 「普通に新聞作ってろよ!」
A子 「数学教師Pの不倫現場をスクープ!」
B男 「プライベートなことは書くな! で、数学教師Pって!? 物凄く特定されやすい名前だな!?」
A子 「文化祭注目の出し物について突撃インタビュー!」
B男 「そういうのならいいんじゃないか」
A子 「どのクラスも、まだ考えてないそうです、丸、っと」
B男 「そりゃこの時期ならね! その前にクラス替えあるだろうし!」
A子 「じゃあ、今年度のMVPをとったクラスに色々聞いてくるよ」
B男 「それなら問題ないな。ちなみに、どんな出し物がMVPとったんだ?」
A子 「人間の神秘についての興味深い研究成果を発表した3‐Bです」
B男 「内容は?」
A子 「決してイケメンではないJ君が自分をイケメンだと信じて疑わない謎に迫る!」
B男 「全然人間の神秘じゃねぇじゃん!?」
A子 「勘違いが起こるメカニズム!」
B男 「放っておいてやれよ!」
A子 「J君の勘違い行動と、それに伴う周囲の人の不快感を一覧にして展示!」
B男 「いいじゃん、本人がそう思ってるんだから、そっとしておいてやれば!」
A子 「周りに被害が出てるの!」
B男 「言うほどの被害でもなかろう!?」
A子 「多くの共感を呼び、今年度のMVPを獲得」
B男 「多くの共感得られちゃったか!? J君、ちょっと行き過ぎてたのかな!?」
A子 「本当なら実名を出したいくらいだよ」
B男 「そのクラスのJ君っていやぁ大体分かっちゃうだろ!? 純二君とか次郎君とかだろ?」
A子 「いや、吉田君だけど?」
B男 「Jから始まって『よ』って読むのは『ヨハネス』とかヨーロッパの人間だけだよ!」
A子 「じょしだ」
B男 「発音にJを入れ込むな!」
A子 「新聞は正確に表記しないといけないの!」
B男 「漢字で書きゃあいいだろ!?」
A子 「吉田君(46)」
B男 「生徒じゃねぇのか!?」
A子 「担任」
B男 「君付けで呼ぶなよ、じゃあ!」
A子 「そうこれは、君=同級生だという思い込みを利用したトリック!つまり犯人はあなたです!」
B男 「だから推理ものに参加しなくていいから! もういいよ」




