作家になる
A子 「ねぇねぇ。私作家になるね」
B男 「簡単に言うけど、なかなかなれるもんじゃないんだよ」
A子 「そ~ぉ?」
B男 「そうだよ。何もないところからお話作るって大変なんだから」
A子 「それは、オリジナルにこだわるからでしょ」
B男 「こだわってるんじゃなくて、オリジナル限定なの! パクりはダメ!」
A子 「パクりとは失礼な。参考にするだけよ」
B男 「まぁ、参考くらいならいいけどさ」
A子 「『トンネルを抜けると、そこは雪国だった』」
B男 「パクりじゃん!?」
A子 「違う町なんですぅ~!」
B男 「それでもダメ! 同じ文章になったら即アウトなの!」
A子 「じゃあ、『トンネルを抜けると、そこはトンネルだった』」
B男 「抜けろよ!」
A子 「新幹線とか乗ってると、トンネル抜けたと思ったのにまたすぐトンネルになるとこあるでしょ!」
B男 「あるけど! それがどうした!」
A子 「で、抜けると、今度こそ雪国」
B男 「ダメだってのに!」
A子 「じゃあいいよ、もう! 違う話にするから」
B男 「今度はどんな話?」
A子 「東京から四国に赴任してきた教師のお話」
B男 「なんか聞いたことあるけど? タイトルは?」
A子 「『お坊ちゃん』」
B男 「はいダメェー!」
A子 「『ボクちゃん』」
B男 「随分可愛くなったな」
A子 「『ボク、ジョン』」
B男 「アメリカの方!?」
A子 「東京から四国に赴任してきた教師のお話」
B男 「ジョン関係ないよな!?」
A子 「あ、じゃあじゃあ、『我が肺は2個である』!」
B男 「はぁ!?」
A子 「私の肺は2つあるってお話」
B男 「みんなそうだろうが!」
A子 「やっぱ漱石ダメだな」
B男 「お前だ、ダメなのは!」
A子 「じゃあ、『銀河鉄道に寄る』」
B男 「字が違う!」
A子 「ちょっと顔出してく話」
B男 「気軽に立ち寄ってんじゃねぇよ!」
A子 「やっぱ小説からヒントを得るから似ちゃうのね」
B男 「そういう問題じゃないと思うけど?」
A子 「ジャンルを変えよう! 映画をヒントに小説を書けば似ないハズよ」
B男 「例えばどんなの?」
A子 「どうせ参考にするなら人気のあったものにしたいよね」
B男 「まぁ、人気があったってことは、評価されたものなわけだしね」
A子 「あ、こんなのどう? 『インドタニック』!」
B男 「タイのお話じゃないからね、アレ!」
A子 「え、違うの!?」
B男 「『タイ』で切っちゃったら『タニック』ってなんだよ!?」
A子 「谷君のあだ名。「たにっち」みたいな」
B男 「なんでタイ在住の谷君のお話が全世界で何億円もの興行収入をあげるんだよ!? で、誰だ谷君って!?」
A子 「『我輩は谷である』」
B男 「知らねぇよ!」
A子 「『トンネルを抜けると、そこはタイだった』」
B男 「トンネル抜けてタイなんだったら、トンネル入る前もタイだったんじゃねぇの!?」
A子 「よし、デビュー作のタイトルは『タイ・谷君』に決定!」
B男 「もういいよ!」




