アンインストール
A子 「ねぇねぇ。身体にアンインストール機能が付いてたらいいと思わない?」
B男 「アンインストールって、パソコンの?」
A子 「そう。いらない機能や能力を消せるの」
B男 「いらない機能ってなんだよ?」
A子 「瞬きの風圧で空を飛ぶとか」
B男 「出来るかそんなこと!」
A子 「私は標準装備だったの!」
B男 「生まれた時から出来たのか!?」
A子 「血筋なんだろうね」
B男 「身動き出来ない赤ん坊は瞬きのたびにどこ行くか不安で仕方ないな!?」
A子 「アンインストール」
B男 「まぁ、そんな奇妙な力はなくていいよな」
A子 「あぁ、脳がスッキリした」
B男 「あ、アンインストールすると脳の中身が整理出来るのか」
A子 「今ので2メガ減った」
B男 「大した容量じゃないな」
A子 「私の記憶媒体の半分」
B男 「お前の記憶は4メガしかないのか!? MP3一曲分くらいだな!?」
A子 「大好きな歌のサビが思い出せない。いや、覚えられない」
B男 「Bメロまでで使い切ってんじゃねぇよ、記憶力!」
A子 「だから要らない物はアンインストールして脳の中を軽くするの」
B男 「まぁ、そういう機能が付いてたら便利かもしれないけどな」
A子 「何か必要ない特技とかない?」
B男 「いや、別にないなぁ」
A子 「二足歩行とか必要なくない?」
B男 「必要だわ! 俺が四足歩行し始めたら引くだろ!?」
A子 「っていうか、完全無視」
B男 「だったら消すんじゃねぇよ! 必要な機能だよ、二足歩行は!」
A子 「じゃあ、学校の先生のモノマネとかは?」
B男 「あぁ、学生時代はよくやったけど、もう必要ない技術だよな」
A子 「『数学の先生が誰もいない自宅で寛いでいる時によくやるポーズのマネ!』」
B男 「なんでそれをお前が知ってんだ!?」
A子 「私、真横にいても気付かれないくらいまで気配を消せるから」
B男 「その力をアンインストールしろ! 世の中のために!」
A子 「こうやって考えてみると、特殊な能力って意外とあるものよね」
B男 「普通の人間には備わってないけどな!」
A子 「アレ出来る? ゆで卵を生タマゴに戻すの」
B男 「出来るか! どうやってやるんだよ!?」
A子 「不思議なパワーを使って」
B男 「ムリだから! そのパワーないから!」
A子 「もしかして、アンインストールしちゃった?」
B男 「最初から備わってないんだそんな力!」
A子 「じゃあ、もしかしてソバをうどんに変える力もないの!?」
B男 「ありません! 今度はどんな不思議なパワーを使うんだ!?」
A子 「お店行って、ソバが出てきた時、急にうどんが食べたくなったら店員さんに『すいませ~ん』って」
B男 「それなら俺にも出来るわ!」
A子 「見事、ソバをうどんに変えてみました!」
B男 「変えたの店員さんじゃん!」
A子 「じゃあアレは? 両手を前に伸ばして、右手で三角形描きながら左手でモナリザ描くの」
B男 「ムリ! 左手だけメッチャ頑張ってんじゃん! 左手は四角!」
A子 「アレやってるとさ脳が混乱してパニックになるよね」
B男 「両手で三角形描いてたり、ごっちゃになるよな」
A子 「気付いたら両手でモナリザ描いてて」
B男 「器用だね、あんた!?」
A子 「この能力も必要ないなぁ……」
B男 「ホント、アンインストールしたい力ばっかり身に付けてんだな、お前は」
A子 「あと、もう絶対行かない国の言葉とかも覚えておく必要ないよね」
B男 「例えばどこだ?」
A子 「土星」
B男 「言葉あるの!? っていうか誰かいるの!?」
A子 「まぁ、さして特徴もない普通の一般人が何人か」
B男 「土星にいる時点で普通じゃないから!」
A子 「私たちと何にも変わんなかったよ。瞬きの時の風圧で空を飛んでたし」
B男 「それ間違いなくお前の血筋の人じゃねぇか! もういいよ」




