アイドル☆デビュー
A子 「ねぇねぇ。毎年毎年新しいアイドルが誕生するよね」
B男 「人気の職業だからな。いろんなところが売れそうな人材をどんどん投入してくるんだろうな」
A子 「ごめん、今は大豆の話はしてない」
B男 「投入は豆の乳じゃなくて、放りこむ方の投入だよ!」
A子 「アイドル放りこみ株式会社の方でしたか」
B男 「どんな会社だ!?」
A子 「ここに放り込まれないと芸能界には入れないという」
B男 「そんなしきたりねぇよ! アイドルを発掘して、育成して、デビューさせるの!」
A子 「で、その白骨化したアイドルがデビューするじゃない?」
B男 「白骨化しちゃってたらデビュー出来ないよね!?」
A子 「デビューすると、雑誌とかのインタビュー受けるでしょ? その記者をやりたい」
B男 「随分時間かかったけど、記者がしたいんだな」
A子 「それで、非常に遺憾ではあるんだけど、アイドルやってもらえないかな?」
B男 「なんで遺憾なんだよ!? やるよ! デビューしたてのフレッシュなアイドル!」
A子 「もう、フレッシュってワードがフレッシュじゃない!」
B男 「いいからお前は記者やれよ! 俺は会議室とかで待ってるから!」
A子 「ポッポー!」
B男 「そっちの記者が会議室に突っ込んできたら大事故じゃねぇか! 雑誌の記者な!」
A子 「非常に失礼極まりない質問とかしますが構わないかな?」
B男 「構うわ!」
A子 「あからさまに横柄な態度で」
B男 「記者っぽい態度で接してくれ!」
A子 「たまに蒸気を噴き出したり?」
B男 「その汽車のことはもう忘れてくれ! アイドルとは絡まないから!」
A子 「じゃあ、色々配慮して取材するね」
B男 「当然だよ!」
A子 「顔にはモザイク入れて、名前は伏せとくね」
B男 「取材に協力する元犯罪者か!? デビューしたてのアイドルだから! 顔も名前も大々的に載せといて!」
A子 「『眉毛!』『小鼻!』『吹き出物!』」
B男 「大々的過ぎる! ある程度は引きで撮ってくれ! あと吹き出物は撮るな!」
A子 「お忙しいでしょうから、留置所までお伺いしますね」
B男 「犯罪者じゃないから! そこにはいない! 事務所の会議室とかでいいかな!?」
A子 「じゃあ事務所の隔離室で」
B男 「ない! ウチの事務所には隔離室も隔離しなきゃいけないような人材も、そしてそんな習慣もない! 会議室!」
A子 「会議室なんて使っていいの? お茶飲んでダベるだけなのに?」
B男 「仕事しろよ! インタビューしてくれるかなぁ!?」
A子 「それでは、そろそろ帰りたくなってきたんで手短にやりますね」
B男 「帰りたくなってんじゃねぇよ! 仮にそうだとしても『お忙しいでしょうから』ってこっちを立てとけよ!」
A子 「デビューしたてのクセに忙しいでしょうから」
B男 「クセに言うな! いいからなんか質問しろよ!」
A子 「BCGとかハンコ注射の痕って残ってます?」
B男 「それ聞いてどうすんの!? 興味ある、俺の肩に注射の痕が残ってるかどうか!? 読者が知りたがるような情報を提供して!」
A子 「ワンコインで食べられる美味しいランチを知りませんか?」
B男 「読者が興味あるだろうけど! 今回は俺の話限定で!」
A子 「美味しいランチを食べさせてくれる予定は?」
B男 「ねぇよ! 料理人じゃないしね! アイドルだから! それらしい質問しろよ!」
A子 「なんでデビューしちゃったの?」
B男 「しちゃった言うな! 家族が勝手にオーディションに応募したんだよ」
A子 「遠回しな絶縁状ですね」
B男 「違うよ!? 応援してくれてるの! 『ウチの子ならアイドルでやっていけるだろう』って自信を持って送り出したの!」
A子 「じゃあお薬増やしておきますねぇ」
B男 「医者か!? 薬いらないから質問頂戴!」
A子 「それじゃあ、犯行の動機は?」
B男 「だから俺犯罪者じゃないから! もういいよ」