慣用句を使おう
A子 「ねぇねぇ。慣用句って知ってる?」
B男 「『顔から火が出る』とか「穴があったら入りたい』とか?」
A子 「『顔から火が出る』? なに? なんて病気? 穴、入ったほうがいいよ、危ないから」
B男 「慣用句だっつってんだろ!?」
A子 「『穴から顔を出す』」
B男 「もぐら叩きか!? 」
A子 「『出るキウイは打たれる』」
B男 「潰れちゃう! じゃなくて、慣用句がなんだって?」
A子 「『手』が付く慣用句って沢山あるなと思って」
B男 「たとえば?」
A子 「『山手線』」
B男 「慣用句じゃねぇ!」
A子 「慣用句のくくりって曖昧だから」
B男 「んなこたねぇよ! 『手』がつくヤツなら『猫の手も借りたい』とか」
A子 「猫に手はございません! アレは足!」
B男 「知っとるわい! でも慣用句だろ!? 『猫の手も借りたいほど忙しい』とか言うだろう?」
A子 「『山の手を貸しきりたいほど忙しい』」
B男 「ムリ言うな! 山手線貸し切られたら東京都民が困り果てるわ!」
A子 「『奥の手を使いたいほど忙しい』」
B男 「使えよ! 奥の手があるなら!」
A子 「でも、悪の秘密結社は、奥の手を最後の最後まで使っちゃいけないという決まりがあって、正義の味方がちゃんと強く成長するまで待たなきゃいけないの。そんなジレンマを表した慣用句」
B男 「そんな悪の秘密結社寄りの慣用句なんかあるかい!」
A子 「『奥手な人は忙しい』」
B男 「人によるわ! 忙しい時に借りるのは猫の手!」
A子 「アレは前足!」
B男 「譲れよ、そこは!」
A子 「『猫の毛がかゆい』」
B男 「アレルギー!? 気を付けてね!」
A子 「おかしい。全然『手』が出てこない……」
B男 「慣用句も出てきてないけどね」
A子 「もしかして、『手』を使った慣用句なんかないのかも!?」
B男 「あるよ、いっぱい!」
A子 「例えば?」
B男 「『ノドから手が出る』」
A子 「気持ち悪っ!?」
B男 「慣用句!」
A子 「え、ちょっと待って。『喉から手が出る』ってことは、普段は手出てないの? 体内収納型!?」
B男 「そんな人間がいるか!」
A子 「それに似たような慣用句なら知ってるけど」
B男 「どんなの?」
A子 「『のどかな庭園』」
B男 「慣用句じゃねぇ!」
A子 「『ノドから手が出る』『のどかな庭園』似てるじゃない!」
B男 「いや、似てても関係ないし!」
A子 「じゃあ、『ノド仏が顔を出す』」
B男 「引っ込んでろ!」
A子 「ウチの仏になんて口の利き方を!」
B男 「気持ち悪いだろう、ノド仏が顔を出したら!」
A子 「じゃあ、『ノド仏が顔を出す、物凄い笑顔で』」
B男 「一緒だ!」
A子 「爽やかさが半端ないのよ!」
B男 「知ったことか!」
A子 「『ノド仏が手を振ってる』」
B男 「愛想を振りまくな!」
A子 「『ノド仏を借りたいほど忙しい』」
B男 「貸さないし、借りたとしても忙しさ全く変わらんだろう!?」
A子 「『手が焼ける』」
B男 「お前のことだ!」
A子 「『手が焼ける、こんがり』」
B男 「随分うまそうだな! えぇ!」
A子 「慣用句って果てしなく難しいわね」
B男 「『お手上げ』だよ」
A子 「え、『おったまげ』?」
B男 「『手に負えない』! もういいよ」