証明する写真
A子 「ねぇねぇ。証明写真ってあるじゃない?」
B男 「たまに目にするな」
A子 「ここに犯人と思しき人物が写りこんでいます」
B男 「それは証拠写真だな!?」
A子 「えっ、別物!?」
B男 「かなりの別物だな!」
A子 「どうしよう。パスポート申請するのに証拠写真出しちゃった!」
B男 「絶対通らねぇよ、申請!」
A子 「いや、何事もなく通って、ここにパスポートが」
B男 「なんで通っちゃってんの!?」
A子 「写真にはバッチリ犯人の姿が!」
B男 「お前じゃないじゃん!? 赤の他人じゃん!?」
A子 「でも、動かぬ証拠だよ?」
B男 「だからどうした!? 関係ねぇよ、海外行くのに!」
A子 「証明写真の機械ってあるじゃない?」
B男 「駅前とか商店街で見かけるな」
A子 「撮ったことある?」
B男 「あぁ。バイトの面接の時とかに利用してたな」
A子 「あの中で面接?」
B男 「狭いわ! 何処で面接してんだ!?」
A子 「より、親密な関係になれるかと思って」
B男 「ならなくていいから! そこで写真撮って履歴書に貼って面接に行くんだよ!」
A子 「あれ、撮るの難しいよね」
B男 「そうか?」
A子 「なんか色々言ってくるじゃない? 機械風情が」
B男 「機械風情言うな! 分かりやすく説明してくれてんじゃねぇか」
A子 「『コインを投入して、椅子の高さを合わせてください』」
B男 「最初に高さを調整するんだよな」
A子 「『コインを投入して、カメラを見てください』」
B男 「なんでもう一回コイン入れさせた!? さっき入れたよね!?」
A子 「チップ!」
B男 「必要ねぇわ!」
A子 「そっちが必要なくても、こっちは必要なんですぅ!」
B男 「機械が要求すんな、そんなもん!」
A子 「『じゃあ、カメラを見てください』」
B男 「これが緊張するんだよな」
A子 「『変な顔をしないでください』」
B男 「してねぇわ! 真面目な顔をしてんだよ!」
A子 「『顔が変です』」
B男 「いいから写真撮れよ!」
A子 「いい顔で撮らないと面接落とされるよ?」
B男 「そんなことないだろう?」
A子 「書類審査は写真が全て!」
B男 「オーディションか!? バイトの面接だから適当でいいの!」
A子 「『じゃあ、はい、撮ったよ~』」
B男 「お前が適当になるなよ! お前はきちんとしっかり撮影しろ!」
A子 「『写真の種類を選んでください」」
B男 「パスポート用とか、サイズが違うんだよな。俺は証明写真用っと」
A子 「『カシャ』」
B男 「なんでサイズ選んでる時に撮影するんだよ!?」
A子 「いや、もういいかなぁって思って」
B男 「思うな! ちゃんとカメラを見てる時に撮るの!」
A子 「『では、カメラを見てください』」
B男 「よし、準備万端だ」
A子 「『フラッシュの後、5分後に撮影します』」
B男 「なんでそんなに時間差あるんだよ!? なんのためにフラッシュ焚いたんだ!?」
A子 「まぶしいかと思って」
B男 「まぶしいよ、無駄にね!」
A子 「『隠し撮りが完了しました』」
B男 「なんで隠し撮るんだよ!? ちゃんと撮影しろよ!」
A子 「でも、ばっちり写ってるよ」
B男 「本当かよ?」
A子 「ほら、ここに犯人の手がかりが」
B男 「だからそれ証拠写真だから! もういいよ」




