またの名を
A子 「ねぇねぇ。侍の違う言い方ってあるよね?」
B男 「武士か?」
A子 「そっちじゃない方」
B男 「そっちじゃない方って、何かあったっけ?」
A子 「もふもふ!」
B男 「もののふね!」
A子 「『の』多いわ!」
B男 「いや、そんなツッコミいらないから! 突っ込むところじゃないし!」
A子 「もふもふじゃないの?」
B男 「まず侍はもふもふしてないだろう!?」
A子 「でも、もふもふしてると可愛いよ?」
B男 「可愛さ求めてないだろう、侍!?」
A子 「いやいや、侍は当時のアイドルだったんだよ」
B男 「アイドルではないだろう!」
A子 「人気の職業だったんだよ?」
B男 「まぁ、武士になりたいって人は多かったのかもな」
A子 「キャーキャー言われたい」
B男 「キャーキャーは言われないよ! 言われたきゃ歌舞伎役者にでもなるしかないね!」
A子 「誰があんな白塗りチョンマゲになるか!」
B男 「侍もチョンマゲですけどね!」
A子 「歌舞伎役者ってモテたの?」
B男 「そりゃあもう! 歌舞伎者って言葉が生まれたくらいだからな。超モテモテだよ」
A子 「さぞニャーニャー言われたことでしょうね」
B男 「ネコか、周りにいるのは!? キャーキャー言われたんだよ!」
A子 「そういえば、浮世絵って歌舞伎役者多いよね」
B男 「今で言うアイドルみたいなもんだからな。飛ぶように売れたんだろうよ」
A子 「イメージビデオとかね」
B男 「その時代にビデオなんかねぇよ!」
A子 「じゃあDVDで」
B男 「もっとない!」
A子 「まさか、ブルーレイ!?」
B男 「どんどん進化しないで! 記録媒体とかなかったの!」
A子 「じゃあどうやってたの?」
B男 「絵に描いたり、口頭で伝聞していくしかなかったんじゃないか?」
A子 「『あの歌舞伎役者がさ、こんな水着着て、こんな格好しててさ』」
B男 「イメージビデオの内容を伝聞してんじゃねぇよ!」
A子 「『歌舞伎、萌え~』」
B男 「萌えないよ、歌舞伎は!? 売りは美しさとか格好よさだから!」
A子 「なんということでしょう」
B男 「もっさりした驚き方だな!?」
A子 「古来より日本に伝わる言葉を知らないと見えるな」
B男 「なんて言葉だ?」
A子 「可愛いは正義」
B男 「古来より伝わる言葉じゃないね、それ!?」
A子 「語尾に『歌舞伎』って付けるような可愛さが欲しいところだね」
B男 「可愛くないよね、語尾に『歌舞伎』!?」
A子 「そんなことない歌舞伎~」
B男 「可愛くないよ!?」
A子 「激おこプンプン歌舞伎」
B男 「なんかもう、色々混ざり過ぎてわけ分かんなくなっちゃってるよ!」
A子 「歌舞伎はどうやっても可愛くならないね」
B男 「そんなことないぞ。子供が舞台に上がったりもするし」
A子 「『歌舞伎ごっこする者この指とまれ~』」
B男 「よその子じゃない! 歌舞伎役者の息子さん! 3歳とかから舞台に立ったりするの!」
A子 「『見栄の切り方がなってないでちゅ』」
B男 「ダメ出しすんな、お子様!」
A子 「『申し訳ありま歌舞伎』」
B男 「素直に謝るなよ! で、語尾歌舞伎になってるよ!」
A子 「やっぱり侍の方が可愛くて人気があったと思うなぁ」
B男 「だから侍に可愛さなんてないから!」
A子 「もふもふだよ?」
B男 「もののふだってのに! もういいよ」




