肝試しの夏
A子 「ねぇねぇ。夏じみたことをしたい!」
B男 「例えばなんだ?」
A子 「肝試しとか?」
B男 「夏の定番だな。廃屋とかに行って、何か出そうだなぁとか言ってな」
A子 「いやいや、私は出る方だよ」
B男 「幽霊になっちゃってるじゃん!?」
A子 「夏だねぇ」
B男 「夏気分を味わうのは幽霊じゃない方だからね!」
A子 「肝試ししたことある?」
B男 「町内の児童会とかでならあるな」
A子 「お地蔵さまの集まり?」
B男 「地蔵会じゃねぇよ! 児童会! 小学生くらいの児童の集まりだよ!」
A子 「どんな肝試しだった?」
B男 「子供のやることだからな、危険のないように簡単なものだったよ」
A子 「お墓を、荒らしたり?」
B男 「引率者、こっぴどく叱られるな、それ!?」
A子 「住職に、なったり?」
B男 「修行しなきゃなれないからね!? そんなお手軽なもんじゃないんだよ!?」
A子 「木魚を、作ったり」
B男 「職人さんか!?」
A子 「肝試しの定番!」
B男 「どれもこれも定番からかけ離れ過ぎてるよ!」
A子 「どんなことするの?」
B男 「墓地の中を歩いて、本堂に目印を置いてくるんだよ」
A子 「目印?」
B男 「ちゃんとここまで来たよっていうあかしだな」
A子 「お地蔵さん的な?」
B男 「重いよね、持ち運ぶの!?」
A子 「最後の方はお地蔵さんがズラリ」
B男 「メッチャ怖くなってんじゃん!?」
A子 「ドキ! 地蔵だらけの肝試し大会!」
B男 「ドキ、の種類が違うな、それは!?」
A子 「ポロリもあるよ」
B男 「何がポロリするんだ、その状況で!?」
A子 「首?」
B男 「メッチャ怖い! きっと泣いちゃう!」
A子 「ズラリといるよ」
B男 「確かにズラリと並んじゃってるけども!」
A子 「にやりとするよ」
B男 「ほくそ笑むなよ!」
A子 「怖そうだね、肝試し」
B男 「怖くしてんのは子供達自身だけどな!?」
A子 「でも、墓地を歩くだけじゃ怖さもいまひとつだよね。明るいし」
B男 「なんで朝なんだよ!? 夜にやるの!」
A子 「半分寝ぼけつつ?」
B男 「そこは頑張って起きてて!」
A子 「夜でもたいしたことないよ、墓地くらい」
B男 「だから、最初に怖い話とかを聞かせておくんだよ」
A子 「このまま少子化が進むと、年金がもらえなくなる可能性が……」
B男 「そういう怖さじゃない! 怪談話!」
A子 「なんか、墓地的なとこ歩いてたら、なんかドローってしたのが、なんかバーンと出てきて、なんか、超怖かった」
B男 「怖くねぇわ! 話しベタか!? あと、『なんか』が多いわ!」
A子 「子供達ガクブル」
B男 「純粋な子供達でよかったな!」
A子 「生まれてこなければよかったと思うほどの恐怖」
B男 「そこまで怖くはないからね! 目印のろうそくを本堂に立てて、戻ってきたらお菓子もらえるから!」
A子 「けど、少子化の影響でリターンがもらえない子も出てくるんでしょ?」
B男 「年金の話を引きずってるのかな!? 大丈夫、ちゃんともらえるから!」
A子 「なんでこんな目に……」
B男 「どこまで悲観的になってんだ!? 夏の風物詩だから、軽いノリでやればいいんだよ!」
A子 「そうだね。じゃあ、ちょっと化けて出てくるよ」
B男 「だからそっちは風物詩じゃねぇってのに! もういいよ」




