甥っ子の宿題
A子 「ねぇねぇ。小学生の甥っ子に頼まれて宿題を見てあげてるんだけどさ」
B男 「お前、小学生の甥っ子なんかいたのか?」
A子 「いや、いないけど。でね、ちょっと聞きたいことがあるんだ」
B男 「俺もたった今聞きたいことが出来たよ! いないの、甥っ子!?」
A子 「なんだ、甥っ子自慢か!? 『甥っ子がいる俺、どう?』みたいなことか!?」
B男 「違うわ! なんの自慢だよ、それ!? そうじゃなくて、お前、誰の宿題見てるって!?」
A子 「小学生の甥っ子」
B男 「で、お前に小学生の甥っ子はいないんだよな!?」
A子 「いた試しがない!」
B男 「じゃあその小学生の甥っ子って誰だ!?」
A子 「近所に住む小学生のお兄さんが結構な年上で、その息子も小学生なの!」
B男 「ややこしいし、紛らわしいわ! つまり、近所の子の甥っ子なんだな!?」
A子 「そうに決まってるじゃない。アメリカじゃ常識だよ?」
B男 「ここは日本だし、まぁ間違いなくアメリカでも常識じゃないな!」
A子 「でね、その甥っ子がね、宿題分からないからオジサンに見てもらおうって思ったらしいの」
B男 「まぁ、よくあることだな」
A子 「しかし、そのおじさんもまた小学生なわけで」
B男 「見てもらっても分からないよな、それじゃ!」
A子 「なんなら、オジサンの方が学年下なわけで」
B男 「なんで見てもらおうと思ったんだよ、その甥っ子!?」
A子 「奇跡を信じて」
B男 「信じるな、そんな奇跡!」
A子 「そこで、私の出番なわけですよ」
B男 「なるほど。ちゃんと分かってる大人が見てやろうってわけだな」
A子 「で、聞きたいことがあるんだけど」
B男 「分かってないんだな、お前も、結局のところ!」
A子 「多分だけどね、私の学校、算数とかなかった」
B男 「あったわ! ないわけがないだろう!」
A子 「あったかもしれないけど、ヒロシ君がリンゴを買いに行ったりしなかったと思うんだ」
B男 「文章問題な! そういうのあったよ」
A子 「『ヒロシ君が、リンゴをネットオークションで落札しました』」
B男 「買い方が今風だな!?」
A子 「問1『届く頃には何個腐っているでしょう?』」
B男 「一個たりとも腐ってちゃいけないはずなんだが!?」
A子 「問2『振込手数料はいくらでしょう?』」
B男 「知らん! 銀行によるんじゃねぇの!?」
A子 「問3『なぜ、リンゴを近所のスーパーではなく、わざわざネットオークションで買ってしまったのでしょう?』」
B男 「それはこっちが聞きたいわ!」
A子 「こんな問題、ウチの小学校でやらなかったよ」
B男 「俺んとこでもやってねぇわ! 問題がおかし過ぎるだろう!?」
A子 「じゃあ、算数の宿題は『先生が悪い』ということでパス!」
B男 「まぁ、この問題に関してはそう言わざるを得ないだろうな」
A子 「あと、写生なんだけど」
B男 「風景画とか描かされたな」
A子 「神社で大きな木を描いたんだって」
B男 「なかなか躍動感のある絵じゃないか」
A子 「この、木の下に佇んでるこの世に未練を残したまま旅立ってしまった自縛霊は何色で描けばいいと思う?」
B男 「描かなければいいと思う!」
A子 「でも、そこにあるものだし!」
B男 「見て見ないフリするのがベストかな!?」
A子 「困ってる人がいるのに見て見ないフリをしろなんて、小学生にはとても教えられない!」
B男 「そう言われると正論に聞こえるけども! 見ちゃいけないものは見ちゃダメなの!」
A子 「じゃあモザイクかけとく」
B男 「それはそれでおかしなことになるだろうが!」
A子 「あと、漢字の書き取りなんだけど」
B男 「あぁ、毎日やれればいいんだけど、溜めちゃうと地獄なんだよな」
A子 「パスしていい?」
B男 「いいわけないだろ! ちゃんとやれ! 言われた回数書き取れ!」
A子 「これでなんとかなりそうだよ、宿題」
B男 「ほとんど役に立ってなかった気がするけどな」
A子 「あとは中学生の姪っ子の宿題を見てあげないと」
B男 「お前、姪っ子なんかいたのか?」
A子 「いや、近所に住む中学生のお兄さんが結構な年上で……」
B男 「お前の近所はややこしい家庭ばっかりか!? もういいよ」




