契約式は誇大ばかりで
ちなみに、後輩と俺を召喚したあの生徒。
実は王族の一人らしい。言葉遣いを正そうとしたら却下された。なぜだ。
文献によれば、その才能は異世界から勇者の素質のあるものをこの世界に連れてこれるほどのようだ。
で今日がその、召喚と契約の日。
「一人につき一回だけとかじゃねぇのか?」
「いいえ。ただ、回復するのが人より少し遅いだけです。二日三日もすれば全快するので」
「有事の際に何もできないんじゃ困る…んじゃねぇのか」
「いいえ、私はそのための予備の予備みたいなものなんです。そうでなければあんな無茶は通りません」
「そうかい」
「それよりも後輩さんについてなくてよろしいので?」
見ると後輩の周りには、えらい人だかりができていた。
後輩は・・・顔に表情がない。そろそろ死ぬかもしれんな。そろそろ魔法薬でも手にしないとまずいか?
「資金ぐらいなら私がだしますが?」
「あぁ、助かる…って、言ってたか?」
「召喚者と被召喚者には、お互いのステータスを知ることができるんです。普通にステータスで見るよりも多くの情報が」
「じゃあ、俺と後輩の過去も?」
そう聞くと彼女はうつむきながら、
「好奇心で見て後悔しました。決して私のような、中途半端なものが見ていいものではありませんね」
「見て、後悔したんならあいつに同情はするな。その手の同情は後輩にとっても俺にとっても反吐が出る裏と一緒くただった。素直にされてもそうは思えないからな」
「わかりました。ところでいつ、魔法薬を買いに行くのでしょうか」
「放課後だな」
「なら急いだほうがいいですよ。その手の魔法薬を買う人は貴族ばかりですから」
「ヤなのにかち合うってことか?」
「そうですね言い方は悪いですが、貴族は平民の上だから搾取されるのは平民の義務とまで言った方もいます」
「おいおい、後輩まで連れて行くつもりか?」
「そうなったら、自殺以外の何者でもありませんね」
「正直異世界補正がなきゃ、死ねるからな。後輩に手加減されていたんだと身にしみてわかった」
「お疲れ様です」
「それ以上に」
?と疑問符を浮かべるこの王女様を見ながら、
「後輩にいいところを見せようとしている。あいつらは後輩の何を見ているんだろうね」
「能力と外見だけじゃないでしょうか?」
かもしれんと思いながら、授業を見学していた。
俺は自分から辞退したし、後輩は俺に遠慮したように見せて面倒事を避けたものと思われる。
こういうイベントごとに参加するとなにかしら巻き込まれるからな。
そうして始まった儀式は、厳かながらも穏やかに過ぎていった。
「…皆さん、身の丈にあった契約獣ばかりで良かったです」
「それはフラグってやつだな」
「ふらぐですか?」
「言霊なんて言ってな、そらみろ最後に契約する奴らあれ中級とかじゃないよな」
「・・・な、あれはみんな上級契約のものです!!」
「十人くらいなんか宣ってたから、こういうことになるだろうとは思ってたけどな」
「今すぐ止めないと。大変な」
「その役目の教師が止めないんだ。でかいリスクしょって、それ込みでも後輩になびいてもらうっていう。でかいリターンに目がくらんだんだろ」
「その後輩さんは、あきれ果てた目で見てますが」
「実力がないのに冒険したからだろ。裸一貫でドラゴンのブレス受けて無傷で立っていられるか何て掛けするくらいの難易度だな」
「それはそれは、どんな名誉なんでしょうね」
「馬鹿って言われる英雄だな」
そう言っているあいだに、魔法陣が輝いた。
だが二つだけだ、それ以外はウンともスンとも言わない。
「なぁ、普通には起動できないんだろ?」
「魔法石を持ってくれば、起動くらいはできますが契約は・・・」
「あいつらの実力は?」
「中級の下から数えたほうが早い契約獣に、お手をしたらその手首を噛まれるくらいです」
「絶望的だな、おい」
その輝きがやんだ頃に出てきたのは、
「三首の犬に九尾の美女ときた。なんだかわかるか?」
「ケルベロスにあっちは狐族のしかも九尾・・・契約どころの話じゃありません。何とかして返さないと」
「俺が動く、でいいか?」
「構いません、どっちみち教師ではどうこうできる方じゃないです」
「了解」
そう言って、腰につけていた剣を鞘から抜いて、とりあえずケルベロスの方に向かっていった。
既に獲物となっていた召喚者を今にも食おうとしていたケルベロスは、俺に気づき。
即座に振り向いた、一番手前側の左の首が、その首に土刀を噛ませ、その勢いのまま胴体を蹴り飛ばした。
吹っ飛ばされた勢いで後輩と対峙していた九尾の人にぶち当たった。
一人と一匹は見事に気絶した。
「どうするよこれ」
「その前に先輩?」
振り向くと青筋立てて笑顔の後輩が、
「私はこのやるせない気持ちをど・こ・に・そしてだ・れ・に・ぶつけたらいいのでしょうか」
俺生きて帰れるのかなぁ
あともう一話投稿します。