学び舎は混乱で
一気に三話出来たので投稿しときます
そうして俺は、異世界の学び舎に学生として生活することになった。
この学園の学長に話を付け、俺と後輩は主従の関係になった。
俺が主で後輩が従者、従者に食わせてもらう主ってなんだか、甲斐性なしなんじゃないのかと思う。
前の世界でも後輩の世話になりっぱなしだったのだが、後輩のほうが有能であるため仕方がない。
生活能力皆無なのが主ではなく従者だということには、この際目をつむろう。
「先輩、準備できましたか?」
そう言って入ってきたの後輩だった。
「ああ、今終わったところだ」
「少し期を逸しましたか」
「何呟いてんだ、それよりもお前の方は発作起きないのか?」
「ええ、心配してくれてありがとうございます。でも、大丈夫です。昨日あんなにしてくれたんですから」
「そうかい、なら俺もあくびが出そうになるほど頑張った甲斐があるってもんだ」
でそうになる欠伸を噛み殺しつつ、最後に洗面台の鏡で自分の姿と後輩の姿を確認する。
そこには冴えない青年と直視できないような美少女がいた。
無論俺と後輩だ。
一体全体どうしたら、こんな将来が確定しているような美少女と一歩間違えばホームレス一直線な青年が一緒の部屋に暮らしているのやらである。
知られたまずいとは思うので、一応部屋は二つとっているのだが片方の空間をつないで、こちらと相互通行可能な魔法陣を勝手に作ったこいつは筋金入りである。
まぁ発作が起きないように定期的にケアしている身としてはこの勝手なことはありがたいが。
「バレないようにしてくれよ」
「先輩、私にはどうやってバレるのかさえわからないんですけど。どうして・・・」
「そうだったな、普段のお前見てるとなんだか変態ってゆう言葉しか思い浮かばなくてな」
「そんな、先輩褒めなくても」
「褒めてないんだけどなぁ」
ため息を吐くが、あんまり意味はない。
そういうふうに、開花したのは俺がそういう本を見せたからじゃないからだ。
見つけられるような位置に隠したわけじゃない。しかも捨てる気だった。
後輩の隙をつこうかと思っていたらこっちの隙を突かれただけだ。
あとはもうわかってくれ。
朝の準備を終えて、寮の出口で後輩と会い、昨日の女子生徒の案内で職員室へ行っって、
金髪の大人な人が対応してきた、後輩と比べてもそこそこ見劣りするくらいだ。
つまりは美人、ただ後輩が基準だと、大きい胸がなんとなく邪魔じゃないのかと思えてくるから不思議だ。
「はじめまして、私が担任のレミア=アンテルトです。これから一年宜しくね」
と事務的なことと、俺と後輩に関することを話し合った。
教室の前に立ち、担任の紹介のあと入った。
俺と後輩が入った瞬間、教室内の空気が変わった。
後輩を見た男(とはっきり分かる奴ら)は、その美しさにまるで彫像になったかのように固まった。
女子も大きく目を見開いて、後輩の方を見ている。
その際、俺は無視されている。視界に入っているはずなのに透明人間のように扱われる。
まぁ、後輩と歩くといつものことなので気にしない。
ナンパにすら、コブ付きだった見られなかったときはのはため息が出そうだったがな。
その時は後輩が、言葉で沈めていたが。
とりあえず、一応チョークで黒板に俺の名前(適当)と後輩(適当)を書いておく。
担任を肘で小突き、正気に戻す。
「あーさっき気がついた奴もいると思うが、転入生は二人だからな。女子は残念だったな」
そう言って、後輩を見て固まっていた奴らが初めて俺に気がついた。
なんでこんな男がと文句を言いたげな様子だが、後輩が偉く睨んでるのに気がつき無言を貫いている。
もう、これ以上めんどくさいことになっては欲しくないんだが、
「一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
ツインドリルの金髪なんて初めて見た、じゃなくて余計なことは言わないでくれよ?
「そちらの冴えない方が従者ではないのですか?」
は?と後ろ見るといつの間にやら、黒板に字が追加されていた。
俺の名前の下に主、後輩の名前の下に従と書かれている。
後輩ぃ?!何付け加えてらっしゃるんですかぁ?!
言葉がおかしくなった。何を考えているんだよ。
「あぁ、ただ単に私は先輩以外の誰にも仕える気も婚約する気もありませんという意志を示してみただけですよ。精霊さんたちも祝福してるみたですし」
見れば、後輩の周りを踊るように回っている光の玉が。
これ一つ一つが精霊らしい。
漏れた魔力で可視化してしまうほど、魔力の高い後輩は意思一つで魔法が使えるのだ。
それどころか、意思疎通まで出来てしまう。
こんな好条件、貴族なら狙わないはずがない。
つまり、先手を切って牽制したわけだ。
俺闇討ちされそうなんだけど。
「無論のこと、先輩のことを亡きものにした場合もそれ相応の対処はさせてもらいます」
光の玉が家作って壊したんだけど、家族もろとも潰すってことか?
さっと青ざめる、貴族とおぼしき男たち。
これ以降後輩は、精霊姫とか呼ばれるようになった。
俺の方は先輩と呼べばいいと言っておいた。
言ってくれそうなのが後輩だけってのも寂しいことだな。何か精霊姫の主って呼ばれそうだし。
帰り際、後輩に精霊の一体を実体化させてもらった。
『はじめまして、姫の善き人よ』
「ほんとにあいつ姫なのかよ」
『姫は彼女の名ではないのか?』
「あぁ、そういやそうだった。でもあいつの前で本名は言うなよ。嫌ってるって、ほかのやつらにも言っとけ」
『承知した』
それ以降黙る。
紳士みたいな格好してるからようわからんが、地の中位精霊だそうだ。
実体化した時に妖精サイズなら下位、この紳士のように人型のみなら中位、人型で妖精みたいな羽がつくのが上位、最上位は見ればわかるそうだ。
龍型とかいないのかと聞くと実体化する際に与えられた魔力を使い実体化するため人型になるそうだ。
最上位に関しては別らしいが、そんなことを話していると教えられた通りの訓練場が見えた。
『では、お相手しましょう』
「よろしくお願いします」
互いに礼をして、そこそこの距離を保ち模造刀を構える。
これは後輩に作ってもらった、いやはや後輩様様である。
軽くお互いに切りかかる。
一合二合と打ち合ううちに、気がついた。
「身体能力が上がってやがる」
『そうでしょうな、姫と同じく異世界から来たあなた様は、その身に異世界の洗礼を受けたはずですから』
「んなもんが、あんのかよ」
『一概にどういうものか説明することはできませんがね』
「いや、教えてくれて感謝する。さて日も暮れてきたし、そろそろ終わりにしよう」
そう言って模擬刀を下げた、直後だった。
火の玉が俺に向かってきた。
『・・・・様!!』
精霊が叫ぶが届かない。
その火の玉に俺は模造刀を向けて、
「らァ!!」
大上段の構えからその火の玉を叩き切った。まっぷたつに割れた火の玉はその痕跡を残さずに消えた。
『まさか下級とは言え、魔法を切れるとは・・・私も切れるのでは?』
「さぁな、試す気はねぇ」
そう言って俺は、寮へと行って自分の部屋に帰った。
めちゃくちゃ不機嫌であろう後輩の機嫌をどうやってとろうかと考えながら。