表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/63

第十一話・異世界パラダイムの栄光の七柱神

シチューとパンを平らげかけたときミルクが口を開いた。

「そういえばさ、二人ってどの神を信仰してるの?」

「ええ?うーん……」

突然そんなことを聞かれても困る。

日本人は宗教観が薄いのだ。

クリスマスを祝ったり神社や寺に詣でたりもする。

確か家では仏壇があったから仏教?

浄土真宗だっけなんだっけ……

「宗派の名前が出てこねえ……」

「ええー!!……まさか邪神信仰ってわけじゃないよね」

ミルクに盛大に驚かれた後嫌な顔をされる。

「忘れたのかミルク……雪平は記憶喪失なんだ。

宗派の名前が出てこない、という事は……

以前何かを信仰していたけど忘れてしまったということだろう」

ヴァイスのフォローが本当にありがたい。

どうやらこの世界は非常に宗教の権威が強い世界らしい。

「あ、そういうことね……

でも神の名まで忘れてしまうというのはほんとに酷いわね。

邪神に呪いでも掛けられたんじゃないと思うくらい。

でも良く良く考えて見れば怪物を進んで倒している

普通のバスターが教義に反する背信者や邪教徒であるはずもないか……」

本当に俺が邪神に呼ばれてこの世界に来たとするなら……

正直言って殴りたい。

絶対に殴ってやる。

「バスターって言っても俺はまだ見習いだし」

「ちょっとまって……神の名前を忘れてるって

じゃあ雪平は神の加護も無しに怪物に挑んでたの?見習いで?」

ミルクが驚愕したように呟いた。

「そういうことになるな」

「怪物を倒さなきゃ見習いから脱出できないじゃん」

ヴァイスと俺が答える。

「じゃあ何か人間族の魔法で体を強化してたとか……」

「いや、俺魔法自体がよくわからん」

「嘘でしょ……見習い加護なし魔法なし

それで怪物、しかも地上をうろつく怪物の中でも

結構強めなマリウスとの戦いに参加してたなんて……

自殺志願と変わらないというか無知って怖いっていうか……」

ミルクが頭を抱えていたが俺にはいまいちピンと来ない。

「まあ、こいつは色々と変わったバスター見習いだな。

良ければ雪平に神の説明をしてやってくれないか?

ヒーラーは神官でもあるしな」

ヴァイスがそう頼むとミルクは心良く頷いた。

「了解、あんたの為に色々と教えてあげるわ。

この世界の栄光の七柱の善き神について」

「よろしく頼むよ。

邪神が怪物を作り出して

邪神が善き神に封印されたって話はヴァイスから聞いたんだけど

詳しい内訳は教えてもらえなかったから……」

「知ってたならもうちょっと詳しく教えてあげなさいよ」

ミルクがヴァイスをにらんだが相変わらずヴァイスのほうは涼しい顔。

「そのうちやろうとは思っていたが

剣の振り方や怪物を倒す具体的手段やら何やらを教え込むので

忙しかったからな……それに一辺に詰め込んだ所で雪平には多分覚えられん」

「はあ……ヴァイスさん以外と酷い人ね」

「大本を外さなければ問題なかろう」

「いや問題あるから。細かい不信心はこの際寛容に見逃すわ……コホン」

いったん咳払いをしてからミルクが切り出した。

「善き神、栄光の七柱神は邪神とその軍勢から全ての種族を守護し

戦う力を貸してくれるありがた~い神様よ」

彼女の説明によると……

人間族を守護する火と勇気の英雄神ファジーン

鬼人族を守護する雷と歓喜の鬼神サドヴァル

獣人族を守護する土と純粋の獣神アステルトリィ

鳥人族を守護する風と自由の鳥神フィアルヴェトレ

妖精族を守護する木と慈愛の精霊神リャプラフィロト

竜人族を守護する水と知恵の竜神シェウォースタ 

そして全ての神族を統べる光と正義の主神セイルミラシャ

この七柱の神が居るらしい。

「彼らが私達パラダイムに住む全ての種族を見守ってくれてるの」

というかこの世界の名前を初めて聞いた気がするな。

パラダイム、か……

それにここタジンの町じゃ人間族……

多種多様な眼や髪の色をした人を見たことは有っても

他の種族を見たのはミルクが初めてだった気がする。

まあ、背中に羽の生えた鳥人族ってのが居るのなら

他にも異種族が居てもおかしくはないとは思っていたけど。

「具体的には加護ってのはどういうものなんだ?」

俺はミルクに尋ねてみた。

「神様たちに信仰と魔力を捧げることで

主に種族それぞれが持つ特性を高めてくれる奇跡をお授けになるわ」

「永続の能力上昇魔法のようなものだ」

そういったヴァイスをじろりとミルクがにらんだ

「ヴァイスさん、神都でそれ言ったら異端審問官か神殿騎士団がすっ飛んでくるわよ

神の奇跡を人間の使う魔法と一緒くたにすることは何事か、ってね」

「……以後気をつけよう」

ヴァイスは動じた様子も無くそういった。

「ヴァイスさんはどんな神を信仰してるの?

私は鳥神フィアルヴェトレの信者だけど」

「……シェウォースタだ。一番性に合う」

「あー。確かに、知性と冷静さを統べるシェウォースタ信者っぽいなあ……

他の種族の神を信奉してるのは珍しいけど

人間族が竜神族の神を信仰しちゃいけないなんて決まりはないし」

基本的には種族に付いた神を信仰するのが一般的というわけか。

「なるほどなあ……」

「雪平君もバスターを続けるつもりなら神の加護を受けたほうが絶対いいって!!

悪いこと言わないからさ。

教会の神像に魔力を捧げて祈るだけで簡単だし。

大体必須みたいなものだから」

ミルクはそう勧めた。

「そろそろ使えるべきものを使ってもいいか……

基本的な動きは身についた頃だし

神の加護で底上げされた能力を自らの実力と思って慢心することもあるまい

雪平、神を信仰するかどうかは任せる、好きにしろ」

「わかった、その内行って見ることにするよ

そういえばヴァイス、このさっき倒したスラの核を

登録所みたいな所に持ってけばバスターに成れるんだよな。

小さすぎてダメとか無いよな?」

「登録所ではなくバスターズギルドだな、問題はないはずだ」

「魔法抜き加護抜きで連携してマリウスと戦える実力なら十分よ……

落ちたら誰がバスターになれるんだか……」

「じゃあ、速く行こうぜ!!」

随分と掛かった気がするがようやくバスターになれそうだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ