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第三章 街と仕事
塔を出ると、街道が続いていた。やがて城壁に囲まれた街に辿り着く。門番は私を一瞥し、何も言わず通した。能力が、私の存在を自然なものとして織り込んだのだろう。
街は活気に満ちていた。露店、職人、冒険者。私は掲示板の前で足を止めた。依頼が貼られている。
「書記補助、急募」
私はそれに応募した。雇い主は、老齢の司書だった。彼は私の目を見て、頷いた。
「君は、行間が見える」
仕事は、記録の整理と写本。だが、私の能力は、誤った記述や隠された真実を浮かび上がらせた。街の歴史には、消された章があった。
城の地下文書庫で、私は見つけた。王の系譜が、途中で切れている。戦争の記録が、曖昧にぼかされている。
夜、夢に声が来た。
「直せ」
声は王だった。欠けた王。存在が削られ、物語から追放された王。私は理解した。この世界は、編集ミスを抱えている。
翌日、街に異変が起きた。市場で争いが起こり、冒険者が倒れ、空に亀裂が走る。
私は決断した。




