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転校生の女の子にぐちゃぐちゃに抱かれた挙句、体を買われるハメになったけど!心だけは絶対に屈しない!!  作者: 中毒のRemi


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第22話 友達とは何か?

 放課後の余熱を帯びた空気のなか、玄関のチャイムが鳴る。

 予想はしていた。

 今日はあの日。

 九条さんの食事の日。


「……入ってください」


 ドアを開けると、九条さんがいた。

 制服のまま、だがどこか緊張をまとっている。

 私は小さく会釈をして彼女を部屋に招き入れる。


 いつものようにソファの上に座り、簡単な会話を交わすこともなく、私たちは静かに儀式を始めた。


 今日は吸精ではなく、稀にある吸血の日。

 

 九条さんの指がそっと首筋に触れ、呼吸がひとつ、浅くなる。

 次いで、肌に口づける感触――そして吸われる血の温かさ。


 痛みはほとんどない。ただ微かに肌の奥が引っ張られるような違和感。

 それよりも、彼女が私の喉元に顔を埋めるたび、息がくすぐったい。心臓が無駄に反応する。

 だけどいつからだろう、この時間を平然と受け入れている自分がいる。


 やがて、彼女はそっと口を離した。

 微かに目を伏せて、唇をぬぐうしぐさ。

 終わりの合図。

 

 そして九条さんは、ソファの背に寄りかかり、じっと目を閉じた。

 その姿は眠っているようにも見えるし、ただ何かを耐えているようにも見えた。

 襟元の白がやけに際立って見えたのは、血色のなさのせいかもしれない。


 何か言おうとして、口をつぐむ。

 こうして二人きりの時間は何度かあったのに、最近の空気は少しおかしい。

 彼女の中に、沈んでいくものの気配がある。

 どこか、触れてはいけないような影。


 正直、この雰囲気をこれ以上味わっていたくない。

 もう一ヶ月はこれだ。

 別に私にとって何でもない相手だからと、あまり深く踏み込まなかったけど、そろそろうんざりである。

 いい加減、元に戻ってほしい。

 というわけで、私から一歩踏み込むことにした。


「九条さん」


 声をかけると、彼女はゆっくり目を開ける。

 

「……なに?」

「最近、調子が悪そうに見えますけど、何かあったんですか?」

「別になんでもない」


 いつもの返事。

 それに、少しだけ間を置いて、私は続ける。

 

「もし……悩みがあるなら、聞いてあげなくもないですよ」

「…………」


 九条さんは、再び黙る。

 その沈黙がもう、本当に面倒で。


 ……いや、悩みがないならその出してるオーラをなんとかしてほしい――って文句を言いたかった。

 ここは私の家だというのに、こんなのに居座られては、全然リラックスできない。

 なんなら今すぐお帰り願いたいけど、それをいま実行に移してしまうと、私達の関係で決定的な何かが欠けてしまう気がするし……

 

 あぁ、めんどくさい。

 本当にめんどくさい。

 もう無理矢理吐かせてしまおう。

 それでその悩みやら何やらの解決策を、九条さんに叩きつけて終わりだ。

 

 私は立ち上がり、彼女の前に立つ。

 ソファに腰掛けた九条さんの肩に、そっと手を置いた。


 一瞬、彼女の瞳がわずかに揺れる。

 驚いている。けれど私は、構わず前へ踏み出す。


「い、いきなりなに!?」

「すごく言いたい事があるんですけど」

「う、うん……」

「その態度、もうやめてくれませんか? 見てるだけで息苦しいんです。同じ空気を吸ってるこっちまで、具合が悪くなります」

 

 ぴたりと、場の空気が凍る。

 九条さんは置いていた私の手を乱暴に払った。


「急に変なこと言わないでよ! 別に私はいつもと変わらないって! 急に変なことを言いだした、今日の一花の方がおかしいよ!」


 声が上ずっている。

 明らかに、何かがあると訴えかけるような声色だった。


 ……私はこの九条さんの“変化”に、ある程度の見当をつけていた。

 家族か、健康か、それとも何か別の事情か――

 けれど、私たちは学生だ。

 最も大きく人生を左右する環境といえば、当然、学校だろう。


「……何言ってるんですか。私こそ、いつもと同じですよ」


 だから、その範疇で少し鎌を掛けてみるとする。


 私は立ったまま、彼女を見下ろしながら言った。

 

「…………最近よく貴女の事を見てて思います。いい加減、自分に合わない人達と関わりを持つのをやめたらどうですか?」

「は?意味分かんない」

「九条さんのその態度は、人間関係のストレスから来てるんじゃないかって言ってるんですよ。一から全部説明しないと分かりませんか?」


 反射的に、九条さんは立ち上がる。

 この件に触れられてほしくないのか、目を逸らしながら、声を張り上げた。

 

「あんまりふざけたこと言わないで!今日の一花は本当におかしいよ」

「いいえ、いつも通りです。私が思うに、あの屑……村上さんとソリが合わなかったんですね。見ていれば分かりますよ」

「違うっ……! 綾香達とは凄く仲良いし、最近は一緒にいる時間も多いし……綾香の紹介で他にもいっぱい友達できて……!」


 言いながら、九条さんの声に焦りが混じっていく。


「……そうやって、友達が増えて嬉しいって言ってるけど。本当に、それが楽しいんですか?」

「……!」

「私は、貴女が楽しそうにしてるところ、見たことありませんよ。むしろ、いつも気を遣って、気を削って――自分をすり減らしてばかりに見えます」


 九条さんの瞳がわずかに揺れた。

 その揺れは、抑えきれず口をついて出た言葉となって跳ね返ってくる。


「……友達のいない一花には、分かんないよ」

「えぇ、分かりません」


 心の奥に溜まっていたものが、言葉になってこぼれ落ちる。

 柔らかく伝えるつもりだったのに、気づけば私も熱くなっていた。

 

「だったら黙ってて」

「無理です」

「じゃあ……」


 お互い譲れない場所が、今、はっきりと重なっている。

 私はそれを見逃さず、重なる声の中で先手を打った。

 

「貴女の言う友達が――ソリが合わず、立場が上のように振る舞う相手に対し、媚び諂うようにぺこぺこする……と言うものなら、これっぽっちも分からないですし、なんなら理解する必要すらないように感じます」


 言い切った瞬間、空気が変わった。


 風のように速く、九条さんの手が振り上げられる。

 私は避けることもしなかった。


「……っ!」


 頬に、鋭い衝撃が走る。

 乾いた音と共に、平手打ちの感触が肌に残った。


 目を見開いたままの私に向かって、九条さんが叫ぶ。

 

「私の友達を悪く言わないで!!!!」


 涙混じりの叫びだった。

 ぐしゃりと歪んだ表情で、九条さんは震えていた。

 

「…………どうして、そんな酷いこと言えるの?」


 声が途切れ途切れだ。

 涙を堪えるように……いや、よく見ると堪えきれていなかった。


 私は、しばし何も言えなくて。

 でも、それでも、自分の中の熱は彼女からの暴力で更に燃え上がり……ゆっくりと、火を絶やさないまま口を開く。


「……確かに。九条さんの言う通りです。友達を悪く言って、ごめんなさい」


 静かに頭を下げると、すぐその直後、九条さんのスマートフォンが鳴った。

 彼女は無言のまま画面を確認し、短く通話を終える。


「……ごめん。綾香に呼ばれたから、もう行くね」

「そうですか」


 九条さんが立ち上がり、リビングの扉に手をかけたとき、私は小さく息を吸って、最後の言葉を投げかけた。


「ひとつだけ、言わせてください」

「……」


 彼女が振り返る気配はなかった。

 それでも、私は続ける。


「もし本当に“友達関係”を大事にしたいと思ってるなら――私のことなんて気にせず、もっと徹底的に、村上さんと一緒になって私を虐めるべきだったと思います」


 言葉は静かだったが、内側からゆっくりと滲み出るような皮肉と苦さがそこにあった。

 あまりに不快で、もう自分の中にあるものを全部彼女にぶつける気持ちで。


「欲のままに、猿みたいに。答案用紙を破ったり、水をぶっかけたり……そういうの、必要だと思うんです。やっぱり、ミラーリングって大事ですから」


 返事はなかった。

 ただ、九条さんはそのまま扉を開け――


 ――バタンッ。


 無言のまま、勢いよくそれを閉めて、去っていった。

あとがきです。


一応残酷描写有りタグを付けているんですが、この後の展開は耐性が無い人だと不快に感じるかもしれないとだけお知らせしておきます。

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