特別回 もうひとつの結末(紫音、大人の湯けむりバージョン)
紫音ルートです。
IFのお話なので、本来の結末ではありません。オマケストーリーです。(紫音と颯太が期間限定で付き合った第76話あたりからの分岐です)
俺と紫音は一週間の期間限定で付き合うことになった。そして、一週間はアッという間に過ぎて、最後の夜になった。
いつものように、一緒に帰って一緒に夕食をとって。最後の日は、そうやって過ごすのが良いと思った。
紫音の彼氏役も今日で終わりかぁ……。
そう思うと、名残惜しいと思った。
もし、家族としてではなく、もっと違うタイミングで出会っていたら、俺はきっと、紫音に一目惚れしたのだろう。
俺が自室にいると、ドアがノックされた。
「紫音です。今夜、最後の夜を一緒に過ごしたいの」
俺は時計を見た。
今から過ごしたら、タイムオーバーになっちゃいそうだ。でも、終わらせるのは、明日の朝でいいか。
(ガチャ)
俺はドアを開けた。
すると、お出かけのようにオシャレをした紫音が立っていた。ちゃんとメイクをしていて、黒に白い水玉のワンピースを着ていた。背中の大きなリボンが可愛らしい。
俺は思わず聞いてしまった。
「どうしたの? これから寝るんだろ?」
すると、紫音は恥ずかしそうに下を向いた。クマさんスリッパのつま先を合わせて、もじもじとしている。
「颯太の思い出の中で、わたしを可愛い彼女で残して欲しい……から」
その言い方は、今生の別れのようだった。
いや、紫音にとっては、ある意味、死別なのかもしれない。明日になってしまったら、彼女として紫音は、もうどこにもいなくなってしまうのだから。
それを考えると胸が痛い。
心臓のあたりにポッカリと穴が空いてしまったようだよ。
俺は……。
本当にこの子を好いているらしい。
紫音は毛布に隙間を作ると、そのまま布団に入ってきた。はにかむような顔で、俺を見つめている。
大きな目には、涙がたっぷり溜まっていて、今にもこぼれ落ちそうだった。
紫音は言った。
「今日で最後の日だね。また明日から、わたしは妹に戻るんだ。ねぇ。颯太」
「ん?」
「一週間、本当に本当にありがとう。わたしね。本心では、颯太と付き合えることはないって諦めてたんだ。でも、束の間だけれど、颯太の彼女になれて、毎日、楽しく過ごせて。夢が叶っちゃった。……嬉しいよ。それにね?」
「それに?」
紫音の頬は赤くなった。
「颯太に気変わりして欲しくて、スカートの中はパンツ履いてなかったりする……」
俺は紫音の頭を撫でた。
紫音はビックリしたような顔をした。
「あれっ。てっきりデコピンでもされるのかと……」
「そんなことしないよ。俺だって、最後の思い出は、優しい彼氏でいたいし」
「そっかぁ。えへへ……」
紫音は微笑んだ。
でも、これ以上は、俺が……好き過ぎて辛い。
「もう遅いし、そろそろ寝ようか」
部屋の電気を消すと、紫音は俺の腕に抱きついてきた。じんわりと紫音の体温が伝わってくる。
俺が眠くてまぶたを擦っていると、紫音が話しかけてきた。
「……、颯太起きてる?」
「起きてるよ」
「あのね。なんで今日を最後の日にしたか分かる?」
「……もちろん」
紫音にとって特別な日だ。
忘れるわけがない。
「覚えていてくれて嬉しい。あの日、わたしが泣いていたら、颯太が水色の飴玉をくれたよね。わたしの頭を撫でて「元気出せ」って言ってくれた」
俺の頭の中には、2人で見た夕焼けの土手が思い浮かんでいた。
「……あぁ。そうだったな」
「あの日にね、君は、わたしの中で、特別になったんだよ? ……だから、その日にまた兄妹に戻るのがいいかなって。それで最後の日を今日にしてもらったんだ」
「紫音。あの日の向日葵を覚えてる?」
「うん。忘れたくても忘れられないよ。2人にとって特別な向日葵だもん」
「あぁ。11月でも空を仰いで咲く、誇り高い向日葵。あれは、ビンセント・ネーブルって言うんだ」
「颯太……、物知りだし」
「はは。この季節に咲いていたから気になって、前に調べたんだよ。紫音にカッコつけられてよかった」
紫音は目を瞑った。
「秋の土手で、一輪だけ咲いてた。ちょっと普通から外れちゃってて、わたし達みたいだね」
「そうだな。あのネーブル……オレンジは希望の色らしい。他の向日葵とは違って、太陽ではなくて、空を見て育つんだ」
紫音は俺の腕にギュッと抱きつくと、ポロポロと涙を流した。
「わたしだけの思い出だと思ってたけれど、2人の思い出だった。嬉しくて……あれ。涙が止まらないよ」
俺は紫音を抱きしめた。
その肩は華奢で、女の子のそれだった。
……今日は子供の時に、2人で土手にいって夕焼けを眺めた日。あれから何年が経ったのかな。
「ヒック……」
「紫音、泣き過ぎ(笑)」
「だって……」
「美人が台無しだよ?」
俺は紫音の髪の毛を撫でた。
「……最後の日に口説くなんて…、反則だよ……」
紫音は俺にしがみついて泣き続けた。
「ねぇ。颯太……」
涙が落ち着くと、紫音はキスしてきた。
紫音の涙で、頬のあたりが濡れてしまった。
紫音の涙は、少し甘塩っぱかった。
紫音は何回か頷くと、俺のパンツを下げた。
そして、スカートをたくし上げると、横になって脚を開いた。紫音は甘えた声を出した。
「……ちょうだい」
俺に全部をさらけ出してくれたその姿は、美しかった。
俺は紫音を抱きしめた。
お互いの性器が、微かに触れ合っているのが分かった。
紫音のはトロトロになっていて、俺のも同じようになっている。
俺が数センチ腰を落とせば、あるいは、紫音が数センチ腰を持ち上げれば、紫音は俺の女になる。
そうしたら、きっと、明日も明後日も。
この先ずっと一緒にいれる。
紫音の中は、どんななんだろう。
きっと、気持ちいいんだろうな。
他の男に渡すのは……、イヤだな。
「そうた……」
紫音が不安そうに、俺の手を握ってきた。
……嫌だ!!
他の男に渡すなんて、絶対に嫌だ!!
紫音は両足を俺の腰に回して、羽交締めのようにしてくる。そして、俺に抱きつきながら言った。
「颯太ぁ。わたし、わたし、やっぱ諦められない……。一週間前より、もっともっと好きなの。世界中の誰よりも愛してる。こんなの諦められないよ……」
「俺も同じ気持ちだよ」
「颯太。颯太の悲しい気持ちも、嬉しい気持ちも、悔しかった気持ちも、わたしを思う気持ちも、全部全部、わたしの中に頂戴……」
くちゅ、という音がした。
「……あんっ。んっ、んっ……」
紫音の嬌声が響いた。
俺と紫音、どちらが動いたのかは分からない。
気づいたら、俺のモノは紫音の中に入っていた。
紫音の中は、温かくて優しくて。
動くたびに、俺の全部が肯定される気がした。
紫音は俺に抱きついて、下から巧みに腰を使ってくれる。
「颯太。気持ちいい。気持ちいいよぅ。……いく……イッちゃうっ!!」
そう言いながら、紫音はギューっと俺のを締め付けてくる。やがて、俺も絶頂に達して、紫音の中に想いをぶちまけた。
でも、紫音は許してくれない。
すぐに上になると、口で無理矢理にでも元気にしようとする。
俺は情けない声を出してしまった。
「な、もうイッちゃって、敏感すぎて辛いんだけど」
「だーめ♡ 許してあげないっ。わたしの気持ち、沢山受け取って……。ね、エッチの時はお兄ちゃんって呼んで欲しい?」
「それ、お前が呼びたいんじゃないの?」
すると、紫音は笑いながら俺の耳たぶを噛んだ。
「……お兄ちゃんの、すっごく気持ち良かった♡」
それからは、今まで抑えていた2人の気持ちを見せつけ合うように、これからの不安から目を背けるように、朝が来るで、お互いの肉体に没頭した。
…………。
いつのまにか寝てしまったらしい。
目を開けると、紫音が抱きついてきた。
「颯太。愛してるよ。あのね。わたし……明日も、明後日も。ずっと颯太の彼女でいたいよ」
俺は紫音の頭を撫でた。
「あぁ。わかってる。俺もそのつもりだ」
部屋から出ると、廊下の陰から母さんがこっちを覗いていた。
「颯太くん。昨日、一階まで紫音ちゃんの声が聞こえてたよ? 禁断の恋も成就かな? 紫音のこと、よろしくね。式はいつかしら♪」
そう言うと、母さんは鼻歌まじりに降りて行った。紫音とエッチしたことは、さっそく家族に筒抜けらしかった。
それから、紫音はますますベッタリになった。
家の中でも外でも、俺から離れない。
大学にも迎えにくる始末だ。
校門の前に、可愛い女子高生がいたら、否が応にも目立ってしまう。
紫音がところ構わずベタベタするもんだから、大学の友人には、すっかりロリコンのレッテルを貼られてしまった。
しかも、紫音は全く隠さない。
高校の友達にも従兄弟にも、彼氏ができて、それが兄の俺だと報告してしまった。
まぁ、いつまでも隠せるものではないし、紫音の態度が正解なのかもしれない。
それに……。
たとえ、紫音が皆んなに罵られても、俺が守る、そう心に決めている。
だが、皆の反応は、俺の予想とは違っていた。世間は思ったより優しかった。生物学上の血縁がないからかもしれないが、両親はもちろんのこと、親族も友人も普通に祝福してくれた。
そして、そんな俺には、まだやるべきことがあった。俺は、きらりに話があるとメッセージを送った。
待ち合わせ場所にいくと、きらりがいた。
たぶん、察しているのだろう。
きらりの手は震えていた。
「きらり。ごめん。おれ、紫音とずっと一緒にいるよ」
きらりは、俺と視線を合わせた。
きらりは笑顔で、泣いていた。
「……そっか。ウチ、分かってたよ。本当は、そうくんは、しーちゃんが一番だって知ってたも……ん」
「きらり……」
「でもね、ウチ。ほんきで好きだったもん。ウチ、また1人になっちゃう……」
そう言うと、きらりは帰って行った。
きらりを追いかけたかったが、それはしてはダメだ。
俺はただ、きらりを見送ることしかできなかった。
だけれど、きらりは、紫音とは連絡をとっているらしかった。たぶん、紫音を過去の好敵手だと認識しているのではないかと思う。
きらりは俺とは切れてしまったけれど、2人が繋がっていて良かったと思う。
それからしばらくして、きらりは櫻子と会社を立ち上げたと聞いた。おばあさんが、きらりには伏せていたことなのだが、きらりには、実は、お母さんから相続した財産があって、それを資金にあてたらしい。
女子高生と女子大生が2人で経営する会社は、話題性があるらしく、マスコミなどの取材も頻繁に受けているようだ。
俺は紫音と並んで、そのテレビを見ている。
テレビの中では、女性キャスターが興奮気味に2人を紹介していた。
俺は見入っていたのだろうか。
紫音が俺の顔を覗き込んだ。
「颯太。もしかして、きらりちゃんに未練があるんじゃないの〜? あのとき、きらりちゃんを選べば良かったとか思ってる?」
どうだろう。
自問自答してみるが、そんな気持ちはなかった。今のきらりは、本来の道を歩んでいると思う。
きっと、俺ときらりの縁は、一生の中の一瞬を交差するだけのものだったのだ。
突然、彗星のようにキラキラと輝きながら俺の前に現れた少女。だが、俺は、子供の頃から、いつもそばにいてくれた妹を選んだ。
だから、これでいい。
少しだけ不安そうにしている紫音に言った。
「そんなわけあるかよ。紫音が世界一だよ」
「まぁ、颯太はわたしに夢中だって、知ってるけどね?」
そういうと、紫音は目尻を下げた。
紫音が指先でちょんちょんと俺をつついてくる。
「ん?」
「あのね。報告があるの」
「なに?」
「わたし、颯太が好き。男の子としても、お兄ちゃんとしても。その2つは違うけれど、同じものなの」
「お前、恥ずかしいこと言うよな。でも、俺もだよ。紫音を、1人の女性としても、妹としても愛してる」
紫音は微笑んだ。
「それとね、……家族が出来た。赤ちゃんできたの」
「まじ? 超嬉しいんだけど。紫音ありがとう!! あ、ちょうど良いかな。ちょっと待ってて」
俺は部屋に戻って、紫音が卒業したら渡そうと思っていたプレゼントを持ってきた。
リビングに戻ると、紫音は首を傾げた。
俺はもってきた箱を紫音に渡した。
紫音はリボンを解いて箱を開けると、目を丸くした。目には涙をためている。
「……指輪だぁ」
「うん。紫音。俺と結婚して欲しい。紫音が18になったらすぐにでも」
紫音は俺に抱きついてきた。
そして、俺に優しく笑いかけると、俺の目を見つめて言った。
「……はい。颯太……ううん、お兄ちゃんのお嫁さんにしてください」
「あぁ。もちろん」
俺は頷いた。
紫音は少し俯くと、幸せを噛み締めるように微笑んで、俺を見た。
「ねっ、結婚した後は、何て呼んで欲しい? 旦那様? お兄ちゃん? ま、まさか。……ご主人様?」
(完)
ご愛読ありがとうございました。
紫音ルートを書いてみましたが、如何でしたでしょうか。正規ルートと対比して、懲罰的なバッドエンドにしようとも考えましたが、それなりのハッピーエンドにしてみました。
あの時、紫音がノックした扉を開けていたら?
あの日の2人の思い出を覚えていたら?
最後の時まで、良い彼氏であろうとしていたら?
こういう分岐って、実際にあると思います。あの時、ああしてたら今頃はどうだったのかな?、などなど。この場をお借りして、そんな想像をしながら書いてみました。
ありがとうございました。




