第74話 紫音の結論。
次の日、ドアがノックされた。
紫音が入ってきた。
紫音は部屋に入ると、無断でベッドに腰掛けた。そして、俯いて言った。
「昨日の話……いいよ」
「本当に?」
「うん。でも、約束して。期限は1週間がいい。その間は、わたしのことを妹扱いしないこと。わたしのことだけを見て、きらりのことを考えないこと。……その後のことは文句言わないから。いい?」
1週間か。
2、3日かと思った。
「あぁ。分かった」
紫音はニコッとした。
「じゃあ、早くデートしよっ。今日からカウントでしょ? 時間がもったいないし。着替えてくるね」
紫音も分かっているのだ。
両親が認めてくれたとしても、血が繋がっていなかったとしても、俺らは兄妹。
付き合ったり結婚したりを、気持ち悪いと感じる人は少なからずいる。
親戚は?
友人は?
社会は?
……困難が多い。
俺は良くても、紫音は?
こんなに可愛くて良い子を、そんな目に遭わせられない。どんなに俺が強がったって、社会という怪物から、紫音を守れるとは思えなかった。
だから、俺らは、お互いを守るために、束の間の恋を楽しむことにした。
紫音の希望で、最寄駅で待つ。
すると、右手を振って紫音が駆けてきた。
「颯太ぁ! 待った?」
紫音は俺のそばに来るなり、腕にぶら下がった。
見たことがない服だ。
黒くてフリフリがついている。
それにコートとロングブーツ。
……可愛い。
「それ、見たことない服だな」
「かわいい? 颯太とデートする時のために買っておいたんだ」
今回のことは、イレギュラーなことだ。
もしかして紫音は、叶わないデートのための準備を、いつもしていてくれていたのかな。
こうして見ると、女子モードの紫音は、とてつもなく可愛い。可愛くて可愛くて仕方ない。
俺は、紫音への気持ちの大きさに自分で驚いていた。無意識の間に、妹への気持ちを抑えていたらしい。
俺が見つめていると、紫音が覗き込んできた。
「顔に、わたしが好きって書いてあるよ? このシスコンっ」
「おま、お前、自分で妹扱いするなって言ったんだろ!!」
紫音はニヤニヤした。
「わたしはいいのーっ」
紫音は手を広げながらキャハハと走って逃げた。俺は大人げなく全力で走って紫音の手首を掴んだ。
「紫音。俺はシスコンでもいい。お前を好きだぁぁ」
紫音はモジモジした。
「……知ってるけど。恥ずかしいから叫ばないで……」
「いいじゃん。正直な気持ちだし」
「わたしも大好き。……いけない。1週間後のことを考えると悲しくなっちゃうよ。楽しまないとね」
それからボーリングをして、カラオケをして、遊び尽くした。
「まだ1日目なのに、色々しちゃったね」
紫音は嬉しそうな顔をして、俺の手を握った。
駅前までいくと、露店が出ていた。レジャーシートの上にシルバーのアクセサリーが並んでいる。
すると、店主であろうロングヘアのおにーちゃんに声をかけられた。
「ね。そこのお二人さん。カップル? これ見て行ってよ。どれも手作り。世界に二つとないデザインだよ」
紫音は足を止めてみている。
そのうち、ネックレスで視線をとめた。
「ほしいの?」
紫音は首を横に振った。
「ううん。ただ、かわいいなーって」
「おにーさん、これください」
俺が買おうとしたら、紫音に止められた。
「いいよ。悪いし」
「悪くないよ。彼氏なんだから、これくらいさせてよ」
店主のおにーさんからネックレスを受け取ると、紫音は大切そうに抱きしめた。
「……ありがとう。大切にするから」
家に帰って、風呂に入ってベッドでゴロゴロしていた。すると、ドアがノックされた。
「こんな夜中になんだよ」
俺が出ると、そこにはパジャマ姿の紫音が、抱き枕を抱えて立っていた。
「颯太。……一緒に寝よ?」




