第70話 きらりとバスケ。
それからお茶をして外に出ると、既に夕方前だった。
きらりがこっちを向いて言った。
「そうくん。この近くに公園があるんだ。一緒に行かない?」
この日のきらりは、少し感じが違った。いつもよりハキハキしていたし、少し男の子っぽかった。本来のきらりは、こっちの属性なのだろう。
公園に行くと、バスケットゴールがあった。
たまたま誰かが忘れたボールがあったので、俺が手に取ると、きらりは言った。
「そうくん。ちょっと2人でバスケしない?」
気晴らしにバスケって……。
俺が笑うと、きらりはむくれた。
「むぅ。そうくん、ウチのこと子供みたいって思ったでしょ?」
「いや、そんなことはないよ?」
こういうやり取りをしていると、なんか子供に戻ったみたいだ。それにしても気晴らしにバスケか。俺はそんなきらりを好ましく思った。
バスケを始めると、きらりはニコニコしながら言った。
「あはは。そうくん。へたっぴー。パスはね。ボールを手のひらにつけないようにして、スピンを効かせて打つんだよ」
俺が下手すぎて、勝負にはならず、バスケ教室のようになってしまった。
「なぁ。きらり。シュートの打ち方を教えてくれよ。カッコいいシュート打てたらモテそうだし」
「シュートはね……。みてて」
きらりは、数回ボールをバウンドさせると、シュートモーションに入った。肘を肩ほどの高さにして、重心を落とす。そして、ジャンプの反動を利用して、ボールを放つ。
その姿は、指先から足先までピンとしていて、しなやかな弓のようだった。
きっと何万回も練習したであろう無駄がなく洗練されたフォーム。俺の感想は、すごいでも、カッコいいでもなくて『美しい』だった。
きらりは、こっちに来ると頬を膨らませた。
「そうくん。他の子にカッコいいところ見せてモテたいとか思ってるでしょ? ダメ!! モテてもダメ!!」
俺は、きらりの頭を撫でた。
「お前だけだから」
すると、きらりは俺の手を、自分の頬に当てた。
「そうくん。もう一つだけ我儘いいかな。今日は1人になりたくない。お泊まりしたい」
きらりに手を引かれて、ホテル街の方に向かう。
……なんか、ずっとリードされてて、これって違うよな。
俺はきらりの手を離した。
すると、きらりは心配そうな表情でこっちに振り返った。
「そうくん。もしかしたら、イヤかな……?」
俺は首を横に振ると、きらりの目を見た。
そして言った。
「おれ、ちゃんと好きだから。きらりのこと大好きだから」




