第66話 束の間の安息。
チュンチュン……。
もう朝か。
身体を起こすと、腕の中に櫻子がいた。
よかった。
今度は居なくならなかった。
櫻子の浴衣ははだけ……。
っていうか、櫻子は全裸だった。
そして、俺も全裸だった。
「……ん」
櫻子が目を開けた。
「……おにいちゃん。おはよぅ」
え。おに?
昨日、何があったんだ。
確か、あの後……。
「仲直り記念で、飲み明かそっ」と櫻子に言われ、2人で泥酔して、そのまま寝たんだった。
そして、いま現在、2人は裸。
櫻子は両手を伸ばして、俺を抱きしめるようにした。
「おにーちゃん。大好き……。愛してる。ね、帰ったら結婚しよ?」
「帰ったら結婚しようって、典型的なフラグなんですけれど(笑)」
帰ったら、きらりと紫苑に追求されて、酷いことになるってことだろうか。櫻子は大きな目で俺を覗き込む。
「……わたしと一緒になったら、毎晩、わたしのこと好きにしていいよ? わたしの身体……きらい?」
こんなフェロモンの塊のような身体を嫌いな男なんているはずがない。櫻子は続ける。
「一緒に会社をついで仕事に邁進するもよし、仕事は他人に任せて、2人でエッチ三昧もよし♡」
本気で流されてしまいそうな提案だ。
この人、現代のサキュバスか?
「おま、何言って……。昨日は、めっちゃヘビーな話したばかりだろ……?」
「だからだよ。わたし、とうとう、ありのままのわたしを受け入れてくれる人に巡り会えたんだもん。それに……」
「それに?」
「颯太くんの話を聞いて、もっともっと君とことが愛おしくなった。わたし、お母さまに勘当されても、あなたを守りたい。ちゃんと順番は守るよ? 子作りは結婚の後ねっ♡ でも、フライングして、もう一回しちゃう?♡」
もう一回……?
本気で覚えていないんですが。
「な? ほんとはしてないよな?」
櫻子はペロッと舌を出した。
「どうかなぁ……。内緒♡」
真偽の方は不明だし、俺は全く覚えていない。うん。疑わしきは罰せずというし……。うん。うん。
このことは、忘れることにしよう。
すると、櫻子が真っ赤になった。
「颯太くん……、その。アレが当たってる」
櫻子の裸に反応してしまったらしく、俺の息子は朝立ち絶好調だった。
「触ってみる?」
「……えっ? ……恥ずかしくて無理……」
俺は確信した。
この反応は、昨日は何もしていない。
当方のサキュバスは、大口の割には、思いの外、初心者らしかった。
そうだよ。
もし、してたら、少しくらいは覚えているはずだし、スッキリ感もあるはず。
「なぁ。お前って性格わるいの?」
「そうだよ。いまだって、何とかして君を手に入れたいと思ってる」
俺は櫻子の頭を撫でた。
「そんな悪い子のフリしなくたって、俺は居なくならないから」
「うん……」
櫻子は少しだけ、寂しそうな顔をした。
すると。
「そういうのは外でやって欲しいんですけれど……」
陽菜の声だった。
陽菜がジト目でこっちを見ている。いつの間にか目覚めて見られていたらしい。
櫻子に張り合って、陽菜まで甘えん坊になってしまった。
チェックアウトしてから、皆で何ヶ所か観光したのだが、終始、両腕に櫻子と陽菜がぶら下がっていて、他のバイトからは『山西ハーレム』と名付けられたのだった。




