第47話 プレゼントは何かしら。
(引き続き紫音視点)
櫻子は言った。
「それで、貴女は何を……?」
どうしよう。
わたしも処女なのだが、あんな話をしてしまった手前、同じプレゼントは無理だ。
ええい。仕方ない。
「お、おしりです……。颯太、いつもこっちでもしてみたいって」
すまん。颯太。
今この瞬間、お前はア◯ル好きの、変態尻野郎になったぞ。
それに、わたしもお尻の女子高生……。
なんか凹むわぁ。
神楽坂は、気まずそうに言った。
「ま、まぁ。お盛んね……」
……真にうけてるし。
ところで、わたしは気づいてしまった。
「神楽坂さん。ほんとは、他にもプレゼントがあるんじゃ?」
わたしは無い。
どこかで買わないとヤバい。
こんなところで時間を使っていたら、買うタイミングがなくなるぞ。
神楽坂は言った。
「実は……、なにか準備したいのだけれど、颯太くんの趣味が分からなくて……」
わたしは、神楽坂が首にリボンつけて抱きつけば、十分喜ばれると本当は知っている。だが、神楽坂との勝負は、まだ終わっていない。
開放したら、何をしでかすか分からない。
だから、ここでリリースはできない。
仕方ない。
買い物につき合わせるか。
それに、適当なプレゼントを薦めて、足を引っ張ることもできる。
「神楽坂さん。わたしも本当はプレゼントまだ準備していなくて。アドバイスしますんで、よければ、付き合ってもらえませんか?」
神楽坂と買い物に行くことになった。
ふと、わたしは気づいたしまった。
神楽坂の予算で連れて行かれたら、きっととんでもない高級店だよ。
わたし、自分の買い物ができないんじゃ……?
すると、神楽坂がわたしに聞いてきた。
「ご予算は……?」
「5,000円くらいかな」
高校生のお小遣いじゃこれくらいが限界。
きっと、馬鹿にされる。
悔しいし、恥ずかしい。
わたしは居たたまれない気持ちになった。
すると、神楽坂は口調を変えずに答えた。
「じゃあ、それくらいの予算で探しましょう」
「え? なんで?」
「だって。わたしの予算もそれくらいですし」
え?
意味、わかんない。
この人、資産数百億とも言われている神楽坂家のご令嬢だよ?
だが、神楽坂の答えは、わたしの思いもよらないものだった。
「わたし、最近、バイトはじめまして。そのお給料でプレゼントしたいんです」
連れて行かれたのは、そこから車で15分ほどの場所にある、多種多様なアイテムを扱うファストファッションブランドだった。
だが、ここのお店は人気殺到のため、完全予約制だったハズ。
わたしも少し前にテレビの特集でこのお店を見て、問い合わせたけれど、数ヶ月先まで予約がいっぱいと断られたのだ。
「神楽坂さん。ここ、予約してないと……」
すると、タイヤを鳴かせながら、すごい勢いでスポーツカーが走ってきた。その車は私達の少し手前で止まり、中から40代半ばの男性が降りてきた。
彼は息を切らしていた。
わたしはその男性を見たことがあった。
このブランドの創始者だ。
自分でデザインもしているらしい。
「ハァハァ……、神楽坂さん。ご来店いただけるなら、教えてくださいよ。スタッフから聞いて急いできましたよ」
「あら。ごめんなさい。こちら、予約制らしいけれど、入れてもらえるかしら?」
「そ、それはもう。こちらにどうぞ……」
わたしは、恐ろしき大人の世界を目の当たりにしてしまった。
そういえば、飛行機やホテルもVIPのために、常に席や部屋を残してあるって聞いたことがある。
あれって、本当だったのか。
人混みをかき分けて、入り口に向かう。
皆んなが見ている。皆んな、きっと何時間も待ってるんだよ?
わたしはオマケなので、なおさら肩身が狭い。ズルをしている気持ちになる。
「神楽坂さん。皆んな待ってるので、こういうのはズルくありませんか?」
「そうですね。ズルですね」
やっぱコイツは。
神楽坂家を笠にきて、いけすかない女なのだ。
神楽坂は続けた。
「ですが、そうであっても、わたしは颯太くんに喜んでもらえるプレゼントを探したいのです。あなたは違うんですか?」
「そりゃあ、そうですが」
「で、あれば、可能な限り早く買い物を済ませて、お店に長居しないのも思いやりだと思います」
神楽坂は少しだけ笑ったように見えた。
「……早く済ませちゃって他の人に入ってもらいましょう」
案内の男性が少し先にいくと、神楽坂は続けた。
「それに、ここ。うちの傘下の会社なんです。わたしを待たせたとなると、彼の立場が悪くなるかもしれません」
なるほど。
金持ちは金持ちならではの悩みがあるのね。
素直に甘えるのが、思いやりというときもあるのか。
中に入ると、まずは別行動になった。
すると、すぐに良い感じの鞄を見つけた。
たしか颯太。小さめのバッグ欲しいっていってた。まさにそのままの鞄だ。
わたしは周囲を見た。
よし、神楽坂には気づかれてない。
先にこれを押さえてしまおう。
だが、値札をみると6,000円だった。
はぁ。
予算オーバーか。
残念だが、どうしようもない。
すると、私の様子に気づいた神楽坂が近づいてきた。
「颯太くん。こういうの好きなの?」
「は、……はい」
やばい。
バッグを神楽坂にとられちゃう。
絶対に、取られちゃう。
颯太、喜んでくれそうなのに。
悔しいな。
「これ」
すると、神楽坂は千円札を出した。
「貸してあげます。わたしのバイト代少し余りそうなので」
「え? なんで? わたしはライバルでしょ?」
「颯太くんのためですよ。せっかくのバースデー。妹さんからのプレゼントでも喜んで欲しいですし。……、それに、あなたも好きな人には、気に入ったものあげたいでしょ」
わたしは思ってしまった。
もし、わたしにお姉さんがいたら、こんな感じなのかなぁ?




