第45話 紫音と櫻子。
(紫音視点)
颯太から反応がない。
そういえば、あいつ。
最近、神楽坂神楽坂って連呼してないな。
あんなに夢中だったのに、静かすぎる。
なんだか怪しい。
颯太に、追いメッセージしてみる。
「颯太。おまえ、最近、神楽坂って連呼してないけど、何かあるの?」
……反応がない。
わたしは、きらりがシャワーに行ったので、颯太に電話してみた。ふざけたことに、30コール目くらいで出た。
「ちょっと。わたしだけじゃなく、きらりもメッセージしてるんだから、返事くらいしてよ!!」
すると、颯太はバツが悪そうに答えた。
「いや、ちょっと……。明日は他の人にも声かけてもらってさ……」
「他の人って……?」
「櫻……、いや。お前には関係ない人」
たしか、神楽坂って櫻子っていう名前だったよね。
「おい。颯太。櫻……ってなんだよ。続き言ってみろよ」
「さ、さ、……さくらのすけさん?」
「はっ? 誰だよ、そのオッサン。声かけられたの神楽坂だよな?」
「……」
わたしは泣きそうになる。
あの女っ、許せない。
ちょっと可愛いからって、横から割り込んできてっ。この泥棒猫めっ!!
「颯太。そんな態度をとって、覚悟はできてるだろうな……? お前が毎晩、妹をオカズにしてることを、あの女に密告してやるっ。ばかぁぁー!!」
「ちょ、やめ…」
わたしは、泣きながら電話を切った。
すると、ちょうど、きらりが戻ってきたので抱きついた。
「しーちゃん、どうした?」
きらりが心配そうに抱きしめてくれた。
わたしだけならともかく、こんな良い子を後回しにするなんて許せない。
それに「君もオカズの1人なのだよ?」なんて、口が裂けても言えない。
颯太のことについては、神楽坂と直接に交渉して身を引かせるしかないか。
自己分析してみる。
……現状、わたしが有利なのは、同じ家に住んでいることくらい。
いっそのこと、今晩、既成事実を作ってしまうか? いや、それは。きらりへの裏切り行為だ。
顔も負け、身体も負け。
颯太からの憧れ度でも完敗し、強いて言うなら、向こうにないのは、禁断の「妹」要素くらい?
正直、1人では勝てる気がしない。
でも、きらりは、神楽坂 櫻子の存在を知らない。あんな泥棒猫が颯太の周りになると分かれば、心中、穏やかではないだろう。
だから、きらりは巻き込めない。
さて、どうやって。
仮に、わたしが刺し違えたとしても、きらりが残れば、まだ望みはある。
私達は、わたしかきらりのどちらかが選ばれればいいのだ。
ふふっ。ふふふふっ。
(神楽坂 櫻子の視点)
颯太くんにメッセージは送った。
お返事くれるかな。
しかし、しばらく待っても颯太くんから返事はなかった。
そこで、颯太くんに連絡してみることにした。
「颯太くん。お返事くれないんですか?」
すると、颯太のくんから困っている顔のスタンプが一つ送られてきた。また本文がない……。
わたしが泣いているスタンプを10個くらい送ると、颯太くんから電話があった。
「その。妹からも声をかけられて迷ってるというか………」
妹って、この前、キスしていたあの子か。
この泥棒猫めっ。
って、……この場合は、わたしが泥棒か?
いや、そもそもっ。
妹は恋愛の埒外なのだ。
それがわたしの邪魔をしている。
やはり泥棒猫はあの子だっ。
颯太くんと泥棒猫を牽制せねば。
颯太くんが最も弱そうな相手。
きっと、電車で告白してから親密だと思われる相手。
……きらり。
「わたし、この前の子が妹って知ってるんですっ。そんなこと言ってると、妹とキスしてるの、きらりさんにバラしてやるんだからっ」
「ち、ちょ、やめ」
颯太くん、動揺してる。
そんなにあの子のことが大切なのかな。
わたしは泣きながら電話を切った。
これは、直接交渉して、あの子……、紫音ちゃんに自分の立場を分からせるしかない。
わたし、勝てるのかな。
紫音ちゃん、可愛い顔してたな。
スタイルも、わたしみたいに無駄にバストが大きいだけじゃなく、あれくらいの中肉中背が男性には好まれそう。
私が勝ってるのは、お金くらいのものだ。
わたしは芹沢を呼んだ。
「芹沢。このファイルにある山西 紫音の電話番号を調べなさい。至急ね!! 多少の実弾は使っても構わないわ」
わたしは、あの子に連絡をとることにした




