第44話 颯太と5通のメール。
それは突然起きた。
午前11:29分、俺は自宅にいた。
今日は土曜だが、紫音はいない。
俺は、たまにの1人時間を、エロ本を読んで有意義に過ごしていた。すると、11:30にそれは起きた。
突然、俺のスマホがけたたましく鳴った。
一瞬、地震速報かと本気で思った。
しかし違った。
ジャスト 11:30
連続でメッセージが届いた。
①「颯太 明日デートしない? 紫音」
②「そうくん、明日、デートしたいです。 きらり」
③「颯太くん、明日、デートしませんか? 櫻子」
④「先輩っ、明日、空いてますか? めぐる」
⑤「山西センパーイ♡ 例の買い物、明日いきませんか?」
5つのメッセージをほぼ同時に受信した。
年明けでもないのに同時に5人からメッセージが届くことなんてあるのだろうか。
それも、5通とも内容がバッティングしている。この偶然を確率ではじきだせば、きっと天文学的な確率だろう。
本気で、どう対応していいか分からない。そして、どう考えても、俺は今、薄氷の上にいる。
はぁ……。
考え過ぎて吐きそう。
無難な葉月にしとくってのもアリな気がする。
(紫音の視点)
わたしは今日は、きらりの家に遊びに来ている。そろそろ試験も近いし、一緒に勉強会をしているのだ。
まぁ……。きらりと話してても、ほとんどが颯太の話題。なんとなく、颯太が赤ちゃんの時の話題になった。
きらりに聞かれた。
「そうくんの誕生日はいつ?」
わたしは愕然とした。すっかり忘れていた。やばい。好き好き言ってて、まさか誕生日を忘れているとは。
颯太の誕生日が、単なる家族行事と認識されていたみたいだ。
しかも、颯太の誕生日は明日だ。
連絡しないと。
でも、少しでもロマンチックにアプローチしたい。
いまさら数十分かそこら早く送ったって、印象は良くならない。
きらりも突然のことに、あたふたしている。
「きらり、どうせなら、颯太が生まれた11:30にメッセージ送らない?」
きらり相手に不意打ちや抜け駆けはしたくないし、これなら条件は平等だ。きらりとどっちが颯太の誕生日をお祝いできるか、聡太に決めてもらえばいい。
勝負だ。
わたしときらりは、同時にメッセージを送った。
(櫻子の視点)
偶然、街でバイト先の葉月さんに会った。
「山西さんの誕生日って、もうすぐでしたね。神楽坂さんは何かプレゼントするんですか?」
えっ……。
た、た、た、誕生日〜?!
知り合ってから日が浅すぎて、そこまで気がまわっていなかった。
どうしよう。
わたしはすぐに芹沢に連絡した。
「芹沢。いまから言う人物の誕生日を調べて」
芹沢からはすぐに返事がきた。
さすが当家の執事だ。この短時間で出生時刻や家族構成まで調べ上げてくれた。
わたしは送られてきたファイルに目を通す。
すると、颯太の妹の欄に見おぼえのある顔があった。
「ほう……」
わたしは時計を見た。
すると、あと10分程で、颯太くんが生まれた11時30分だった。
プレゼントの事など、まったく考えていない。
しかし、もしかしたら、葉月先輩も颯太くんの誕生日に何かしようとしているのかも知れない。
それに、きらりとあの子も何かしかけてくるかも知れない。
まずは、颯太くんのスケジュールを押さえてしまわねば。全てはそれからだ。さらに言えば、少しくらいサプライズも欲しい。わたしは、11時30分ぴったりにメッセージを送ることにした。
この時間の意味に気づいてくれれば、きっと、颯太くんは喜んでくれるだろう。




