第33話 その後のその日。
紫音から高校にいると連絡をうけて、俺は迎えに行った。
校門で待っていると、紫音はきらりに肩を抱えられて出てきた。足を怪我しているようだった。
「2人とも大丈夫か?」
きらりはぺこりとお辞儀をした。
「大丈夫。そうくん。さっきは、ごめんね?」
俺がバツ悪そうにしていると、紫音が空いた方の手で俺の肩をポンポンと叩いた。
「ちゃんと仲直りできたから」
そうか。
よかった。
寄り添う2人の姿は、心なしから、前よりも信頼しあっているように見えた。
2人で何かゴニョゴニョしている。
「なんだよ?」
「今日、きらりにウチに泊まってもらおうと思って」
「あ、大歓迎だよ。さっき、母さんに確認したらOKだって」
ところで、俺のプライベート図書館訪問の話は立ち消えになったのだろうか。気にはなるが、聞ける雰囲気ではなかった。
家に到着すると、紫音は念の為、夜間救急に連れて行くことになった。親父がまだ帰ってなかったので、俺が運転する。
きらりは、紫音の血で汚れてしまったので、先にお風呂に入ってもらうことにした。汚れた服は、母さんが明日までに洗ってくれるらしい。
きらりにパンツやブラも洗濯カゴに入れるように言うと「いいよ、わるいから」と言って手を左右に振っていたが、母さんが「紫音の友達なら、あなたも娘みたいなものよ」というと、きらりも観念した。
そんな訳で、いま、車には俺と紫音の2人だけだ。
ちょうどいい。さっきのことを聞こう。
「それで、あれからどうなったの?」
紫音はこっちを見た。
「あれから、わたしの本心を伝えて。そしたら、きらりも自分のことを色々話してくれて、仲直りできた……かな? たぶん」
「そっか。よかったな。紫音、きらり推しだったし」
「そそ。きらりたんマジ神。泣かしたら許さないから。んで、いまは、親友と同じ男子を好きになってしまった的な状況」
「ふうん」
紫音にお腹をつつかれた。
「おいおい。他人事かよ。お前のせいだろ。それにしても、病院なんて行かなくても大丈夫だと思うんだけど」
「いや、だめでしょ。紫音の足にキズが残ったら困るし」
「そっか……」
紫音は嬉しそうな顔をした。
俺の左手を握るといった。
「それって、将来の妻に傷がついたら困るってこと?」
紫音はニコニコしている。
「……いや、まあ。そうだな」
紫音は、おれの答えが予想外だったらしく、真っ赤になった。なにかゴニョゴニョと言っている。
「え。じゃあ、わたしがドレスで、きらりが和装? なんかわたし引き立て役になりそうなんだけど」
はぁ。
なにを考えてるんだか。
病院につくと「ご家族の方ですか?」と聞かれた。すると、紫音はすかさず「夫です!!」と言った。
やめて。
今後も通院するかも知れないし、そういうこと言うと、後々ややこしくなるから。
「いえ、妹です」
俺が普通にそう答えると、紫音はむくれた。
2人で待合室で待つ。
「看護師さんに笑われたじゃんかよ」
「いいじゃん。夫だって。妹と同じようなもんだし」
いやいや、全然ちがうでしょ……。
「そういえば、きらりの話って何だったの?」
紫音は歯切れが悪くなった。
「うーん。子供の頃の話? でも、そんなに思い出したい話じゃないと思う」
「そっか。そうだよな。俺も前に、きらりと一緒にラブ……いや、出かけた時に、何かあるんだろうなとは思ったんだよ。俺もきらりから話してくれるまで、詮索しないようにするわ」
すると、紫音は涙目で口を尖らせた。
「ラブ? ラブってなんだよ。お出かけに関係あるラブ……ってことば、わたし一つしか知らないんだけど?」
俺は鼻のあたりを掻いた。
「そ、そんなことないょ……」
「はぁ? どれ、検証してやる。ラブる、ラブれば、ラブるとき……どう考えてもラブホ以外ないだろっ。お、おまえ、まさかヤッたのか?」
仮にも、令嬢キャラしてるやつの言葉とは思えん。
「やってねーよ。裸のキラリに、ベッドでおいでって言われた……」
紫音は風船のように膨れた。
「いやだぁ、わたしと。わたしも連れてけっ!! ちょっとお前のスマホ貸せっ」
紫音は俺のスマホを取り上げた。
そして、何か操作した。
「お、おまえ、ふざけんなよ」
こいつ、勝手に俺のカレンダーに「紫音とラブホデートの日♡」なるものを入力しやがった。
紫音は俺にスマホを返す気はないらしい。
俺と紫音が揉み合っていると、スマホから無機的な音声がした。
「ファミリーカレンダーの新規イベント『紫音とラブホデートの日♡』が、ユーザー:母さん、ユーザー:父さん に承認されました」
えっ。
えーっ!!?
こいつ、まじ。
ファミリーカレンダーに入れやがった!!
これ、どーすんだよ!!
すると、紫音は、てへぺろっと舌を出した。
「ごめん、間違えちゃった♡。わたし診察室いくから、颯太さん、後のことはよしなに……」
紫音は淑やかにお辞儀をすると、診察室に入っていった。
なにいきなり令嬢に戻ってるんだよ。
それより、これ、どーにかしてから行けよ!!




