第30話 紫音の思いやり。
クレームばかりの傑作プリクラだが、きらりと紫音にもあげた。
紫音は「こんなの……」といいながらも、学生手帳のカバーを外して裏表紙に貼った。
「紫音、それ落としたらヤバくない?」
「いいの。スマホに貼ったら、学校で自由に見れないじゃん……。それにただの兄貴との写真だし」
いやいや、ただの兄貴だからこそ、胸を揉まれてる写真はマズイでしょ。
きらりの方をみると、スマホに貼っていた。
普通に表面に貼って、両手でスマホを天にかざして「えへへ」と満足そうな顔をしている。
うん。堂々としている。
男前だ。
きらりと紫音が俺の方を向いて笑顔になる。
すごく幸せだなぁと思った。
こんな時間がずっと続くと良いな。
一通り遊び尽くして、そろそろ帰ろうということになった。
オレンジの空の色が、雲に反射して、更に空全体を茜色に染め上げていく。だが、空から取り残された僅かな青は、上へ上へと逃れて、より深い海の色になっていった。
駅前の広場につくと、きらりが寂しそうな顔をした。バッグのベルトを握っている。
なんだか後ろ髪を引かれてしまう。
俺は声をかけた。
「どうした?」
きらりは首を横に振った。
「ううん。なんでもない」
すると、紫音がきらりに抱きついた。
「しーちゃん?」
「きらり、ウチに遊びにおいで」
「で、でも……」
「ウチに来たら、颯太のエロ本コレクション見せてあげる。颯太の女の好みとか、興味あるでしょ? こいつの好みね、ゴニョゴニョ……」
きらりは手を口に当てた。
「ひ、紐っ?! M字っ?! え、ウチ、うまくできるか分からない……」
おーい。
何を吹き込んでるんだよ。
しかも、きらりもチャレンジする気らしい。
紫音の頭にチョップした。
「きらりも真に受けなくていいから」
っていうか、当然のように俺のコレクションを披露しないでくれ。あれから隠し場所を変えたのだが、もしかして、もうセキュリティ突破されたのか?
きらりは、結局は紫音の提案に頷いた。
「おばーちゃんに聞いてくる」
そう言って、柱の向こうに行こうとするキラリの顔は笑顔だった。
紫音はそんなキラリの姿を見ながら、微笑んでいた。こいつ、たまにすごく優しくて、愛らしいんだよ。これが紫音の本質なのかもな。
紫音がこっちを向いた。
すると、風になびいた黒髪が、時々黄昏色に煌めいた。
綺麗だった。
俺は、妹にドキドキしていた。
「紫音。どうした?」
紫音は髪をかきあげながら言った。
「わたし、わたし。ちゃんと貴方の事、好きだから」
その顔がすごく可愛くて。
俺の口からも、自然に言葉が出ていた。
「俺も……。俺も、お前に負けないくらい、お前を好きだよ」
ドサっと何かが落ちる音がした。
きらりだった。
ニコニコしていた顔は、すぐさま深い海の色になった。
「え? ……いま、なんて。2人とも兄妹なんでしょ?」




