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告白したら違う子でした。いまさら憧れ女子が絡んでくるんですが。〜ショートカットのスポーツ少女ヒロインが勝つための物語  作者: 白井 緒望


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第28話 甘々でーと。

 

 俺は紫音と電車に乗った。

 吊り革を掴んで並ぶと、紫音が言った。


 「颯太、ちょっとくらい時間あるだろ?」


 「ま、あるけど?」


 「ちょっと付き合え」


 紫音は俺の手を強引に引いて、いつもと違う駅で降りた。改札を出ると、紫音は、革カバンをうしろ手にもち、こっちを向いて言った。


 「デートしよっ」


 「いや、お前のせいで疲労コンパイなんで、普通に帰りたいんですが?」


 「よし、決まりっ」


 「……」


 もはや、そこに俺の意思は全く介在していなかった。いつもながら、自動音声相手に会話してる気分だよ……。


 もう、メンドイ。

 とりあえず、こいつが満足するまで付き合おう。


 駅前の広場にいくと、紫音と同じ制服の少女が立っていた。


 少女は、軽装の紫音とは違い、肩掛けの大きなバッグを持っている。少女はこっちに気づくと手を振った。  


 「そうくん、しーちゃん!!」


 そこにいたのは、きらりだった。


 さっき、神楽坂さんに敵意全開だった紫音のことだ。これみよがしに俺にひっついてキラリを牽制するのかも知れない。


 俺が身構えると、紫音は俺など無視して、きらりのところに行くと抱きついた。


 その姿はすごく自然で。

 2人は、俺が思ってる以上に仲が良いらしかった。


 紫音は俺の左、きらりが右で、両腕に抱きつかれて歩く。両手に花とはまさにこのことで、歩いていると、周りの男たちが、何人も俺を振り向いた。


 さっき神楽坂さんと歩いた時は、自分がイヤになったが、2人と歩くのはとても気分が良かった。


 それは、2人が神楽坂さんに劣るということではない。むしろ、両手にもった桜と梅の美しさを俺自身が喜ばしいと思っているからなのだろう。


 『どっちが桜でどっちが梅かな』


 そんなことを考えていると、キラリが俺に話しかけてきた。


 「さっき、しーちゃんに誘われてびっくりしたけれど、ウチ、嬉しい」


 え。しーちゃんってだれ?

 初めて聞いた固有名詞なんだけど。


 もしかして、俺の左側にいるこの猛禽類のことですか?


 「こっちこそ、試合の後なのに、急にごめんな。紫音が無理に誘ったんじゃ?」


 「ううん、ウチ。ちょっと寂しい気分だったから嬉しい。2人とも好きだし」


 あぁ、ここにも天使いたわ。

 しかも、大天使。神々しくて直視できんよ。


 肝心のしーちゃんはというと、何やら物思いに耽っているようだ。


 紫音は俺に耳打ちしてきた。


 「あのさ。わたし良い事思いついたんだけどさ……」


 俺の経験上、良い事思い付かれて、マトモなアイディアだった試しはない。大概はロクでもないことだ。


 「なに?」


 俺は惰性で聞き返した。


 「きらりちゃん……きらりと、わたしで二股しない?」


 「は?」


 その良い事は、俺の予想の遥か斜め上をいくロクでもなさだった。紫音は小声で続ける。


 「いやさ、二股って、行き着く先は不毛な展開じゃん? なんか女同士で髪の毛引っ張りあって喧嘩したりとか」


 ……たしかに。

 男としては、決して当事者になりたくない光景だ。


 それにしても、いつにも増して、紫音が意味不明すぎる。


 紫音は真剣な顔で続ける。


 「でもさ。わたしキラリのこと好きだから、たぶん、我慢できる」


 「それで?」


 「颯太はキラリと結婚する。そして、わたしは今まで通り妹ポジ。でも、恋愛、エッチはする。……子作りも。颯太の子供欲しいし」


 紫音はなぜか恥ずかしそうな顔をしている。


 「は?」


 「鈍いヤツだな。だから20歳にもなって童貞なんだよ」


 「お前がぶっ飛びすぎなんだよ」


 「颯太、合法的に重婚できるってことだよ」


 「あぁ、なるほど。って、ええっ?」


 「これって、生物学的な血縁がない法律上の妹がいることで実現可能なスーパープレイだぞ? 使わない手はないだろ」


 生物学的とか言われると、なんだかすごい感じはする。


 いや、でも、さすがにそれは。


 紫音は続けた。


 「お前の夢の中のヘビロテが、リアルでできるんだよ? しかも、こんな美少女2人を交互に。いや、たまには3人でしてみたりも……」


 紫音はペロッと舌なめずりした。

 いや、たしかにかなり。っていうか、とてつもなく魅力的な提案ではある。


 俺は想像してしまった。

 大きな家を買って、仕事を終えて帰ると、きらりと紫音がお出迎えしてくれるのだ。


 妄想の中の紫音(エプロン姿)は言う。


 『今日はどっちにする? わたし? きらり? 今日はシャワーしないで待ってたから、わたしの方が美味しいよ……?」


 いやぁ、たまらん。

 想像しただけで鼻血がでそうだ。


 だが、この計画には大きな穴がある。

 俺は言った。


 「きらりの同意はあるの?」


 紫音は俺の肩をポンと叩いた。


 「……その同意をとるのが、営業マンのチミの仕事だろう?」


 一番難易度高い部分を丸投げされても……。

 俺はきらりの方を見た。


 すると、きらりは仔犬が飼い主を見つけた時のような、キラキラした眼差しで俺を見る。


 いやいや。

 こんな天使タン相手に、無理っしょ。


 俺は紫音にいった。


 「お前、あの純粋無垢な瞳をみても、そんなこと言えるのか? 俺は無理」


 「へたれめ。まぁ、お前には第3の選択肢があるってことだよ。それに、きらりが颯太を独り占めするつもりなら、わたしも全力で戦うし」


 まぁ、話半分に聞いとこう。

 だが、こんなことを言うために、今日は連れてこられたのではないだろう。


 「んで、今日のほんとの目的は?」


 紫音は小声で言った。


 「きらり、試合で大失敗しちゃったみたい。元気付けてあげたいなーと」


 やっぱ、お前って良いやつだな。

 知ってたけど。



 さっきの話。

 どっちが桜でどっちが梅かと思ったけれど、2人とも梅なのだろう。


 梅は厳しい冬を乗り越え、春がくる少し前に咲いて「あと少しで春だぞ。がんばれっ」と告げてくれる。


 桜のような可憐な派手さはないけれど、不器用に美しい花を付ける。


 まるで2人みたいだなって思う。


 2人は桜が良いって言いそうだけどね。

 ……おれはそんな梅の方が好きだ。

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