第24話 椎名がヤバい。
「ご、ごめん」
俺は手を離した。
でも、あの顔……。
もしかしたら、電車で人違いしなければ、いけたのでは? と期待させる表情だった。
「いえ……、あの。わたし、この後、購買にいきたくて。この辺で失礼します」
「あ、こちらこそ。引き止めちゃってすみません」
「入部のこと、少し考えますね」
そう言い残すと、神楽坂さんは出て行った。
いやぁ、ほんと綺麗だったなぁ。
「先輩……。鼻の下のびてますよ」
椎名がジト目で俺を見ている。
「つか、お前、部室にコンドーム持ち込むな。今後、禁止な」
椎名は本気で残念そうな顔をした。
「ところで、先輩。神楽坂先輩のこと好きなんですか?」
俺はテレビをつけた。
「お前には関係ないだろ」
「関係ありますよ。わたしも先輩のこと、わりかし好きなので」
え。
椎名の方をみると、まだジト目をしている。
どこまで本気か分からない。
顔だけみたら、純情そうなのに。
俺は椎名の顔を覗き込んだ。
「お前さ。わりかし可愛い顔してるんだから、少し色々とオブラートに包んだ方がいいぜ?」
ふっ。
不意に褒められて、怯んでいるようだ。
「先輩っ。それ本気ですか?」
「え、わりかし本心」
「先輩っ。わたしも、わりかし本気な提案です」
「なに?」
「そろそろ、ぬいぐるみと自宅のおもちゃ以外でも装着を試してみたいんです」
ってか、こいつ。
さらりとすごいこと言ったよ。
「んで?」
「実地で試させてくれませんか?」
椎名はゴムの袋を出した。
Sサイズって書いてある。
「いや、そんな小さいのじゃ入らんから。却下」
すると、椎名の目がキラキラした。
「先輩っ。それ興味津々です。入らなかったら、生……、こほん。ゴムナシでもいいです」
いやいや、あなた。
さっき自分で装着の実地訓練って言ってたじゃない。
椎名は続けた。
「わたしじゃ、どうせ神楽坂さんには勝てないし、先輩につけてみたいです。わたしじゃ興奮できませんか?」
椎名はシャツのボタンをいくつかあけた。
すると、Eはありそうなバストの谷間が露わになった。
ぶっちゃけ、椎名はなかなかいい身体をしている。
俺は生唾を飲み込んだ。
「いや、そういうわけじゃ」
「先輩っ。いま、つばを飲み込みましたね? それって興奮するってことですよね」
椎名はテーブルの下に潜り込んだ。
そして、俺の股の間から顔を出す。
「先輩。つける前に、どうするかしってますか? こうやって、擦って元気にするんですよ。わたしでいいなら、毎日、気持ちよくしてあげてもいいですよ?」
「ゴムだけつけられて放置されても困るでしょ」
「そんなわけないじゃないですか。ちゃんと最後までお世話してあげますよ」
「最後って……。そういうのは、好きな男とやれよ。つか、いつまで股間にいるんだよ」
椎名は寂しそうな顔をした。
「好きな男とって……。先輩のこと好きだからに決まってるじゃないですか。他の男だったら、こんなこと言う訳ない」
「いや、とにかく、そこからでろ」
「いやです。先輩っ。女子大生と、タダで毎日、セックス三昧ですよ? これって、世の男性がみんな羨む提案ですよ? それとも、わたしには、その価値すらないんですか?」
椎名は俺の返事などまたずに、股間に手を添えて擦りはじめた。
やば、反応しちゃう。
椎名は、そのままチャックを開けようとする。
「先輩。……♡。元気じゃないですか♡」
やばい。
このままでは、オートモードで勝手に進む恋愛シュミレーションゲームみたいな展開で、オート初体験しちゃいそうだ。
「おま、いい加減にしろ!!」
俺は椎名を、テーブルの下から引っ張り出して立たせた。そして、いった。
そうだ。
先輩として、ガツンと言ってやるのだ。
「もっと自分を大切にしろ。お前は可愛いんだから、自信をもてよ。そんなに安売りしたら、自分が可哀想だろ」
すると、椎名は下を向いてしまった。
「だって。そんな安売りしないと、先輩こっち向いてくれないじゃないですか。それとも、正面からいったら、受け止めてくれるんですか……?」
椎名、泣いてる……。
「先輩、ズルいです。わたしの気持ち知ってて。いつも優しくして。こっちは無理ってちゃんと分をわきまえてて、我慢してるんです。ほんとは、こんなに急ぐつもりなかった……、ちゃんと時間をかけて仲良くなりたかった」
椎名は肩をすくめると、願うように手を握り合わせた。
「……でも、でもっ!! 神楽坂さんなんて出てきたらアセっちゃうじゃないですか」
椎名……。
あの追い詰められた顔を俺は知っている。
俺が電車で神楽坂さんに告白した時も、きっと同じ顔をしていた。




