第22話 部活の後輩はマイペース。
あ、素で忘れてたわ。
神楽坂さんを、部活見学に案内するんだっけ。
今月は特別な活動はないが、過去の活動アルバムとかでも説明はできるし、今日なら部員も少ないし大丈夫かな……。
講義のあと、神楽坂さんを案内することにして、食堂前で待ち合わせをした。
しかし、俺には、その前にやらなければならないことがある。あのむっさい男部屋(部室)のコンディションチェックだ。
食べかけのお菓子とかエロ本くらいならともかく、ゲロとか使用後の男性用玩具が落ちている可能性もゼロとは言えないのだ。
うちのような弱小部なぞ、神楽坂家の意向で、本気で廃部になりかねない。
だから、事前に現地入りして、入念にチェックする。机の下、家具の裏側……。
「よし、大丈夫そうだ」
その時、おれは視界に違和感を感じた。
部屋の真ん中にあるクマのぬいぐるみ……、その手にコンドームが被さっているではないか!!
「おーい。ほんとお願いしますよ。こういうことすんの、どこのバカだ。なんの嫌がらせだよ」
俺がブツブツ言っていると、後輩が入ってきた。
「先輩っ!! 遅くなりました!!」
そう。彼女はウチの貴重な女性部員(しかも、まとも)なのだ。女性もいた方がいいかと思って、事前に声をかけておいた。
その名を、椎名 めぐるという。天然茶髪のふんわり系女子だ。まん丸の目で、太ってはいないのだが、全体的に丸い。背は小さめで、美人というより、愛らしい顔をしている。
まぁ、彼女も悪くはない。
もし、彼女と無人島に2人きりになったら、全然イケる(上から目線)。
それにしても、あぶなかったぜ。
どこぞのアホのせいで、まず目の前の貴重な女子部員が減ってしまうところだった。
おれがクマの手からゴムを外そうとすると、椎名が前に出た。
「先輩っ、わたしやります」
椎名が慣れた手つきで、クマからゴムを外した。ゴムを外すと、慣れた手つきで片結びにし、ポイっとゴミ箱に捨てた。
「お前、手慣れてるな」
「えへへ。毎日やってますから。あう、被す方が得意なんですよ?」
前言撤回だ。
この部活に、まともなヤツはいない。
なんで毎日かは、あえて聞かないでおこうと思う。
しかし、そんな俺の意に反し、椎名は笑顔で続けた。
「先輩にもつけてあげましょーか。えへへ。わたし、先輩のこと、わりかし好きですし……癖になりますよ?」
「椎名よ……」
「はい、先輩っ」
「お前、神楽坂さんがきても、絶対に口を開くな。マホトーンにでもかかったと思って、しばらく黙っとけ!!」
すると、部室がノックされた。
「すみません。山西くんいますか?」
神楽坂さんだ。
食堂で待ち合わせしたのだが……、おやおや、意外にせっかちさんだな。
あっ、そうか。
俺に1秒でも早く会いたかったってことか。
すると、神楽坂さんが言った。
「あの、待ち合わせに10分過ぎても来ないので、また忘れられちゃったのかなと……」
俺は時計を見る。
すると、そもそも腕時計を家に忘れていた。
「椎名、いま何時?」
「15時40分です」
おいおい、ハニー。
すでに待ち合わせ時間を過ぎてるじゃねーか。
俺は言った。
「神楽坂さん、すんません……」




