第21話 神楽坂さんに紫音を会わせたくない。
最近、神楽坂さんと電車で会っていない。きらりと早い時間に登校するようになったからだ。
今日はきらりはバスケの練習試合ということで、俺は、遅い時間の電車に乗っている。
しかも、今日は木曜日。
だから、神楽坂さんに会える日なのだ。
しかし、俺は神楽坂さんに会いたくなかった。それはヤツが引っ付いているからだ。
「紫音、お前、1人で学校いけよ」
「いやだ。颯太は美人に弱いから、1人にできない」
どんだけ信用ないんだよ。
「いや、お前より可愛い子、そうそういないから大丈夫」
紫音は嬉しそうだ。
「そ、そ、そっか。颯太も分かってきたじゃん」
ふっ。所詮、高校生。
チョロいぜ。
まぁ、さっきから普通に呼び捨てされているのが、若干気にはなるが。
「と、言うことで、お前、降りる駅だろ?」
電車のドアが閉る直前を狙って、紫音を押し出した。
「ち、ちょっとぉ」
よし、なにか外で叫んでるヤツはいるが、邪魔者は消えた。
俺は1人になった。
電車がジョイントを超えるたびに、その時が近づいていく。
おれはイヤフォンで音楽を聴いているフリをしながら彼女を待つ。もちろん、索敵能力優先で、実は何も聴いてない。
すると、美女の気配が近づいてきた。
ふふっ。
きたきた。
「山西くん」
神楽坂さんだ。
俺は爽やかに返事をする。
「神楽坂さん。どうしたの?」
神楽坂さんはちょっと頬を膨らませた。
これは……、ついに告られる瞬間がやってきたか。
「山西くん」
2度目の呼びかけにも、俺は人生最高の笑顔で答える。
「ん? なに?」
「わたしの番号を渡したっきり、部活のとき教えてくれるって言ってたのに、連絡くれないので……」
あ、やばい。
あれから1週間以上経つのに、テストスタンプすら送ってない。
完全に忘れてたわ
「……すんません」
俺はいま、普通に怒られてる。
彼女は苦情を入れにきただけみたいだ。




