第19話 きらりとのひととき。
きらりの手を引いてホテルに入った。
俺も初めてなのですっごく緊張したが、きらりのことが心配で必死だった。
適当に部屋を選び、中に入る。
すると、空元気なアナウンスが流れて、館内施設の簡単な説明があった。
部屋の壁には大きなテレビがかかっており、ここから映画などを自由に観れるとのことだった。
取り敢えず、きらりをシャワールームに送り出して、俺はソファーに座った。
辺りをみると、AVのカタログや大人のおもちゃの自販機があった。ドラマで見るラブホと変わらなかった。
……めっちゃ落ち着かない。
10分程すると、きらりが出てきた。
顔色は少しは回復したようだったが、まだ心配なので横にならせた。
落ち着かないし、体調が悪い人相手に変な期待をしてしまっている自分もいる。
俺もシャワーを浴びることにした。頭の上からザァーとお湯をかけて、しばらく流れ落ちる水滴を眺めていると、気分が落ち着くのを感じた。
……大丈夫かな。
備え付けのルームウェアをきて、部屋に戻った。
すると、きらりは反対側に向いて毛布をかぶっていた。
俺に気づくと、きらりはこっちを見た。
俺は声をかけた。
「まだ気持ち悪い?」
すると、きらりは弱々しく笑った。
「ううん。落ち着いたよ。ありがとう。ね、そうくん。ここって……」
俺は頭を掻いた。
「うん。ラブホ。ここしかなくて、ごめん」
「そっかあ。ね。そうくん」
すると、きらりが毛布をめくった。
ちらりと見えたキラリは、裸だった。
きらりは続けた。
「そうくん。こっちにきて」
「それって、どういう」
「そうくんは彼氏さんだし。わたし、そうくんとなら、イヤじゃない……よ」
「きらり」
俺はベッドに入ってキラリを抱き寄せた。
きらりの目は潤んでた。
下まつ毛が曖昧になるほど涙がたまっていて、いつこぼれ落ちてしまうのだろうと思った。
「これで、わたし、……貴方と会えなくなっても、きっと大丈夫」
会えなくなる?
大丈夫?
どういうことだよ。
それに、きらりの一人称が変わってる。わたしって。でも、自分を「わたし」と呼ぶきらりに違和感はなかった。
何故だか分からない。
でも、今日、エッチしてしまったら、きらりの束の間の幸福を充足させてしまったら、きらりとの時間が終わってしまう気がした。
これは、きっと、きらりにとっては、ここで何かを終わらせるための儀式なのだ。
って、俺は、きらりからフェードアウトしたかったんじゃないのか?
おれは自分の矛盾に辟易した。
でも、そんなことは無視して俺は言った。
「きらり。今じゃないよ。俺はちゃんと、きらりと手を繋いで、キスをして、恋をして、もっともっとキラリのことを好きになることを楽しみたい。だから、なりふり構わずゴールを急ぐショートカットみたいなこと、したくない」
何でこんなことを言ったのだろう。
でも、自分に嘘をついたとは感じなかった。
それにしても、これを聞かれたら紫音に変態キザ野郎って爆笑されそうだ。またしても、俺の黒歴史が更新されてしまった。
すると、きらりは少し黙ってから微笑んだ。
「そっか。君は本当に勘がいいね。でも、君なら、きっと」
きらりは声のトーンを丸くした。
「……そうくんなら、ウチもずっと仲良くしたいです」
そういうと、きらりは俺に抱きついてきた。俺の顔を両手で挟むと、小鳥が挨拶するように、チュッチュと何度もキスをした。
あれ。
これって、俺のファーストキス……?
俺のファーストキスは、人違いで告白した彼女に奪われてしまったらしい。




