第15話 紫音の来訪。
「じゃあ、俺は先に帰るよ」
きらりのバスケの邪魔はしたくなかったので、先に帰ることにした。
きらりが体育館に戻ると、自然に皆んなが集まってきた。すぐに、キュッキュというバッシュが床を蹴る小気味いい音がしてきて、また練習が始まった。
俺は家に帰って、晩飯の前に風呂に入ることにした。今日は慎重に浴室のドアをあけたが、紫音はいなかった。
湯に浸かりながら、今朝の事を考えていた。
紫音の身体……綺麗だったな。
血が繋がっていないと分かった今なら、どんな風に見えるのだろうか。前みたいに馬乗りで腰を振られたら、我慢できない気がする。
風呂のあとは夕食だった。
うちは基本、家族が揃って一緒に食べる。
そして、おれと紫音は、両親のイチャイチャを見せ続けられるのだ。まぁ、きっと、良いことなんだろうけど。
ところで、家族の配置は、普段は両親が横並びなのだが、なぜか今日は俺と紫音が向かい合って座っている。
なんとなく、紫音応援団の暗躍を感じるのは俺だけだろうか。
今日の夕食は、鍋だった。
グツグツと沸騰する鍋の蓋を開けると、カニやシャケがふんだんに入っていた。
美味そうだ。
「すげー豪華。母さん、今日って何かの記念日だったっけ?」
すると、母さんは視線を逸らした。
「別に……、そうくん大事な時期だから精をつけてもらおうと思って」
え。
別に俺は何も大切な時期じゃないぞ。
受験生って訳でもないし。
あ、セイをつけるのセイって。
精力のセイだよな。
……紫音応援団の暗躍を感じるのは、やはり俺だけなのだろうか。
すると、スッと親父が母さんの手を握った。
まぁ、セイについては、あっちのチームの話なのかも知れないが。
食事中、紫音と目が何回もあって、少し気まずい。
俺がシャケを取ろうとしたら、紫音と被った。すると、紫音はスッと箸をひいた。
「……いいよ。食べて」
うーん。
昨日までと明らかに反応が違う。
めっちゃ意識されてる気がするぞ。
ふとした表情が女子になってる。
晩飯が終わって部屋にいると、トントンとドアをノックされた。
「わたしだけど、入って良い?」
まさか全裸じゃないよな。
俺が身構えていると、意外にもモコモコのうさぎのジャージだった。暖かそうでよく似合っている。
俺は机の椅子に座っていたので、紫音はベッドに腰掛けた。
「それでね。今朝のことなんだけど」
「今朝って?」
「その。私達の血が繋がってないって」
「あぁ。母さんに聞いたよ。俺だけ知らなくてめっちゃ疎外感」
紫音は小さくなった。
「ごめん……。わたしが口止めしたんだ。その。血が繋がってないの寂しく感じたの」
「あぁ、そういうのは分かってるつもり。それで、話って?」
紫音は柄にもなく、しばらくモジモジしていたが、しばらくすると口を開いた。
「その。これからは、女の子として見て欲しい……です」
「兄妹関係はやめるの?」
「それは、イヤ!! わたしのお兄ちゃんでもいて欲しい」
「なにそれ。すっごい自信。どっちのコースでも一番とれる的な?」
「なっ……、だって。わたし、結構モテるんだよ? 頻繁に告白もされるし」
それは知ってる。
高校にいったとき、男どもの視線が痛かったし。
なんだか胸の中がゾワッとした。
あ。
この感じ。おれ、嫉妬してるのかな。
なんだか悔しい。
ささやかな反抗で、例の大味基準をぶつけてみることにした。
「ふーん。お前さ、俺とセックスできるの?」
「なっ」
紫音は真っ赤になったが、言葉を続けた。
「できる。っていうか、したい。そうしたら、わたしのこと否が応にも女の子って見てくれるだろうし。それに初めては、颯太以外は絶対ヤダ」




