第13話 紫音の呼び出し。
大学のあと、俺は1人で、紫音とキラリが通う高校に向かった。2人が通うのは、私立桜心学園。
それなりにお嬢様学校と言われていたが、最近、共学に変わった。
でも、まだまだ女子の比率が圧倒的に高い。
校門の前には紫音がいて、俺に気づくと手を振った。
俺が知ってる紫音とは違う、凛とした雰囲気。たしかに知らないヤツがみたら、お嬢様だと思ってしまいそうだ。
あるいは、こっちが紫音のホントなのだろうか。
「わりぃ。遅くなった。んで、何の用? 俺、部外様なのに入って問題ないの?」
「今日は3年生の保護者面談日で、颯太さんがいるくらい問題ありません。さぁ、こちらへ……」
なにこいつ。
めっちゃ猫被ってるんだけど。
俺は腹を抱えて笑いたかった。
後が怖いからせんけど。
周りの生徒がみんなこっちを見ている。
こんなのでも憧れのご令嬢だもんな。無理ないか。
俺は紫音に耳打ちした。
「なに、おまえ、ここだとお嬢様ロープレしてるの? ププッ。超ウケるんだけど」
紫音は俺を睨んだ。
「うるさい。お前はモブのくせに人種の言葉を話すな。シネ!! 大人しくついてこい」
そういうと俺の手を取った。
その手は、汗ばんでいた。
あんなことの後だから、こいつの本心は毒を吐いていないことが分かってしまう。こまった。
そのまま引っ張られていくと、体育館だった。
「え? なにここ。中になんかあるの?」
紫音は眉をひそめた。
「いいから中を見ろ」
すると、きらりだった。
部活なのだろう。バッシュにユニフォームを着て、シュートの練習をしていた。
小さな身体でボールを両手で持って、真剣な眼差しでゴールを見つめていた。
前のめりになると膝を曲げ、お尻を突き出す。そして、ポンッと手を一直線に上にあげて、跳ねると同時にボールを放った。
ボールは高い軌道を描いて、綺麗にリングに落ちた。
その姿は、足先から指先までが、鶴が舞い上がるときに翼を広げる姿のようで、とても美しかった。
俺の前だと、きらりは、いつもモジモジしていたりアタフタしてるので、とても新鮮だった。
「綺麗だな」
思わず口から言葉が出てしまった。
隣に紫音がいることを思い出して、ハッとしたが、もう紫音は居なくなっていた。
どこに行ったのかな。
紫音のことは気になったが、俺はその後もきらりに釘付けだった。
ここは彼女のフィールド。
そこでの彼女は、名前に相応しく燦々《さんさん》としていて、美しかった。
気づけば、俺は、口の中が乾きドキドキしていた。
紫音は、これを見せてくれたのかな。
すると、紫苑からメッセージがきた。
「今朝は、嫌な思いさせてごめん。敵に塩を送るのは不本意だけど、これはその埋め合わせってことで」
律儀なヤツだな。
それにしても、敵とは、きらりのことなのだろうか。
「いや、十分だよ。ありがと」
「いや、まだ、わたしの気がすまない。今夜、全裸に猫耳エプロンでいこうか?」
「それむしろ嫌がらせなんだけど。つか、お前、裸見られて平気なの?」
「ごめん。恥ずかしくて死ぬ。無理」
あいつ、そんな格好で廊下を歩いてて、親父に見つかったらどうするつもりなんだよ。
俺は気づけば口角が上がっていた。
もしかすると、このままギクシャクしちゃうのかと思っていたから、こうしてまた軽口を叩けるようになったのなら、嬉しい。




