第11話 大学もシビアコンディションなんだが。
結局、昼から大学に行くことになった。
今日は部活連の会議にでないといけないので、部室に寄ってから行くことにした。
電車に揺られながら、今朝の出来事を回想する。色々とヘビーな話もあったが、あの状況で戻ってきての「クッ、コロ」はウケた。
「クッ、コロ」は、俺と紫音が昔はまっていたラノベが元ネタで、誇り高き女騎士が敵に捕まったときに言うお決まりのセリフ「クッ、(虜囚となり情けをかけられるくらいなら、いっそ)、コロ(せ)」がルーツだ。
数年前の俺と紫音は、このセリフにドハマりして、陵辱に屈服した時に頻繁に使っていた。
……懐かしい。
わざわざ戻ってきての懐かしフレーズはアイツなりの気遣いなのだろう。
部室に入ると、2年の後輩がいた。
彼はテレビゲームをしている手を止めてこっちを見た。
「副部長。おはようっす」
おれは、ここ古美術鑑賞部で副部長をしている。一年の時、この部活は女子だらけだった。
それでデート商法みたいに勧誘されて入ったのだが、今となっては女子部員は数名を残すのみで、むさい男達の巣窟になっている。
「村田か。最近、顔出せなくて悪い」
「いや、いいっすよ。副部長に可愛い女子高生の彼女が出来たって知ってますし。いいなぁ。女子高生とセックス。あやかりてー」
男ばっかりになると、どうして会話のIQが低下するのかね。っていうか、なんでこいつそんな事知ってるの?
「お前、それどこで聞いたの?」
「みんな知ってますよ?」
誰だよ。
面白半分で言いふらしてるやつ。
ってことは、もしかすると。
神楽坂さんの耳にも入ってるのかな。
はぁ。
日に日に神楽坂さんが遠ざかっていくぜ。
そういえば、村田は法学部だったな。
今朝のこと、聞いてみよう。
「あのな。脈略ないんだけど、義兄妹って、結婚できるの? モラルじゃなくて、法律的な意味で」
すると、村田はニヤニヤした。
「あーっ。先輩、そーいうラノベみたんでしょ? 俺もあれ読んでるっす。それで、前に気になって調べたんですよ。結論から言うとOK」
村田はゲームをしながら、こちらを時々、値踏みをするように見る。
「普通、同じ戸籍だとダメなんですけど、養子の場合には、なんか例外規定があって、できるみたいっす。あ、一般的な連れ子の義兄妹は、同じ戸籍ですらないから、余裕っす!!」
「ふーん。お前、物知りだな」
「こういうのはスラスラ入ってくるんすけどね。テストはからっきしっす」
なるほど。
母さんが言ってたのは、概ね事実なのか。
とりあえず、今教えてもらったことは、紫音には黙っておこう。さらにややこしい事になりそうだし。
その後は、部活連の会議に出て、ウチの部の予算削減に抗議を申し立て、今は1人で学生カフェに来ている。
紫音……。
時間があると、妹の事ばかり考えてしまう。
紫音のことどうしよ。
同世代の女の子だけど、きらりには相談できないし。
大事な話ってなんだろう。
告白でもされるのかな。
今の関係が濃密なだけに、知らない人に告白されるのとは訳が違う。対応次第では、家族としても終わってしまうかも知れない。
うーん。
家族関係を離れて、彼女を1人の女の子として見た場合はどうなんだろ。
顔は、妹補正を除去すると、かなり美人の部類だと思う。黒髪ロングに、白い肌。まつ毛が長く、二重で目も大きい。こころなしか、神楽坂さんに似ているかも。
身体は、神楽坂さんとキラリの間くらい?
たぶん、一般的に無難な、男性に好まれる体型だと思う。
性格は、うん。
粗暴なところはあるが、概ね善良だし、気心も知れている。
実は、かなり好みのタイプなんだと思う。いや、今にして思えば、俺の好みに合わせてくれていたのか。
……前に付き合えるかは、理屈ではなく、その相手とセックスできるかで判断できるって聞いた事がある。
まぁ、ずいぶんと大味な基準だとは思うが、その基準で判断したとしても、……無理だよぁ。立たないし。
テーブルに突っ伏していると、フワッといい香りがした。大人っぽい柑橘系の香り。
「ここ、いいかな?」
見上げると、神楽坂さんだった。




