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天まで届く  作者: ラズリ
2/12

ミーア

城下街では人々が行き交い、買い物やデートをしている人々がいた。


「すっげー!初めて来たけど、クルス王国っていいな!」


大牙が海斗の隣から動き、人混みの中に紛れていく。


「大牙はほっとくとして、何か食べるかな」


大牙に見つからないように動き、近くのオープンカフェに入った。


ホットサンドとコーヒーを注文し、席に座った。


「海斗どこだぁぁぁ!!」


海斗の身体がびくっと震えた。大牙が人混みのど真ん中で名前を呼んでいた。


迷惑この上ない行動だった。この時、海斗は心の中で決めた。


(絶対に俺は返事しない)


恥ずかしかった。自分の名前を呼ばれることが。文句を言ってやりたかったが、我慢した。


「お待たせしましたぁ!」


女性の店員がホットサンドとコーヒーを海斗の前のテーブルに並べた。


「ありがとう」


微笑みかけ、海斗はホットサンドを食べ始めた。一口目を噛み終わり、コーヒーで流し込む。


コーヒーをテーブルに置くと向かいの席に知らない女の子が座っていた。


「君……誰?」


「ミーア=クルス。ちょっとここにいてもいい?疲れちゃって」


「いいけど」


海斗を見つめるミーアの視線が気になった。海斗は一枚のホットサンドを皿ごとミーアに渡した。


「どうぞ。俺はもう要らないから」


「そう?じゃあ遠慮なく」


もちろん嘘だ。二枚ではまだ食べ足りない。でも我慢できない程ではない。


大牙に街中で名前を叫ばれるより随分マシだ。比べるだけ無駄。


ミーアの食べる姿を凝視するのも悪いと思い、目を逸らす。


コーヒーを一口飲んでからミーアが食べ切るのを待った。


両手を合わせてごちそうさま、と小さく会釈。海斗はそれを見て黙って頷いた。


「じゃあ、俺はそろそろ行くよ」


コーヒーを飲み干して席を立った。ミーアも同時に立ち上がり、海斗の隣に立つ。


「少しついてってもいい?退屈で」


ミーアはブロンドの長い髪を自分の手で撫でる。ミーアのミニスカートがよく似合う女の子だな、と思った。


「途中までだよ。後で城に行かないといけないから」


「城に?何の用事?」


首を傾げてミーアは尋ねた。海斗は頭を手で掻いた。


「内緒」


隠す理由も無かったが、言わないといけない理由もない。


海斗は人の流れに合わせ、とりあえず城下街を見て回ることにした。


歩き始めると海斗の左腕にミーアが抱き着いてきた。


「こうしないとナンパされちゃうの。ほら、あたし可愛いから」


会って数分の男に抱き着くのはどうかと思ったが、言葉にしなかった。


代わりに溜め息をついた。


「えっと、名前何だっけ?」


「赤坂海斗。海斗でいいよ」


「海斗はいい人そうだから。あたしの勘は当たるんだ〜〜」


それが抱き着いた理由らしい。誰にでも抱き着くようならまず、親の顔が見てみたいと思った。


「それでどこ行くの?」


「決めてないけど、とりあえず動こうと思ってね」


海斗がそう言うとミーアは海斗の左腕を離し、手を掴んだ。


「案内するよ!お礼もしたいし」


「お礼?」


「ホットサンド!」


ああ、と理解する。少しお腹が空いた。

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