もう少し
何かがクルスタワータワーの壁に身体がめり込んだ。
「かはっ!!」
海斗だ。壁から身体を剥がし、地面まで落ちていく。
持っていたはずの大剣はどこかに弾かれたままで拾う暇がない。
「お前、人間のくせにしぶといな」
「褒め言葉として受け取っとくよ」
「褒めてねぇよ!」
空中から見下していたアインが海斗に向かって降下を開始した。海斗の指輪が双銃に変化し、一撃目を防いだ。
アインの鳩尾に右手の銃の銃口を突きつけた。
「アイスバレット」
銃が青い光を放つと同時に、青い弾丸がアインの身体に風穴を開けた。
「つっ!!ってぇなぁ!」
アインは一歩も足を引かず、海斗の首を掴み、身体を浮かせた。海斗は苦しそうにあがくこともせず、銃口をアインの額に突きつけた。
「……アイシスキャノン」
さっきの青い弾丸とは違った。青いレーザーが銃口から発射され、アインの頭を打ち抜いた。
「えっ……」
淡い声が海斗の耳に届く。首を掴んでいたアインの腕から力が一瞬で抜かれ、海斗は開放された。
「ごほっ!!ごほっ!……ふぅ」
海斗も身体から力を抜き、深呼吸。見下すようにアインを上から眺める。
すでに息絶えていた。安心し、海斗はアインの胸に手を当てた。
「風砕」
アインの体内を衝撃波が駆け巡る。アインの身体がぼこぼこと体内から攻撃を受け、粉砕した。
「海斗!」
戦闘を終えた樹里が海斗を発見した。城に向かう最中に通りがかったのがわかる。
「樹里。無事だね。あ、頼みがあるんだ」
「海斗の頼みならどんなことでも!」
「じゃあ、ミーアを探して城に連れてって。先に言うと、城にいる人間は全員死んでる」
「えっ!?」
はきはきしていた樹里の身体が一瞬で止まった。海斗は樹里の肩に手を置いた。
「頼んだよ。この戦いはもう終わる」
そう言い残して海斗はクルスタワーの中に突入した。
「クルス王も死んだってこと……だよね?」
戦いが終わっても混乱はおさまるのか、樹里は気がかりだった。